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第3話


 訓練場の空気が張り詰める。


 騎士団長ガルディアは、木剣を握ったまま俺を睨んでいた。


ガルディア「もう一度聞く。今、何をした」


湊「だから、わからないって」


ガルディア「ふざけているのか?」


 怒気が混じる。


 周囲の騎士たちもざわついていた。


騎士A「団長の威圧を消した……?」

騎士B「あり得ん……」


 クラスメイトたちも動揺している。


桐谷「おいおい、なんかヤバくね?」

女子生徒「神代くん、本当に何したの……?」


 俺だって聞きたい。


 だが、感覚としては理解できていた。


 『解析』した瞬間、構造が見えた。


 スキルの流れ。

 魔力の循環。

 発動の仕組み。


 そして、“壊せる”と思った。


 まるで機械の欠陥を見つけるみたいに。


大臣「陛下へ報告が必要ですな……」


 大臣が険しい顔で呟く。


 完全に危険人物扱いだった。


 その時。


リリアナ「少しよろしいでしょうか?」


 凛とした声。


 銀髪の王女――リリアナが訓練場へ入ってきた。


 騎士たちが一斉に頭を下げる。


騎士「リリアナ殿下!」


リリアナ「訓練の視察に来ました」


 そう言いながら、彼女は真っ直ぐこちらへ歩いてくる。


 そして。


 俺の前で立ち止まった。


リリアナ「神代 湊」


湊「……何?」


リリアナ「あなた、本当に面白い力を持っていますね」


 周囲がざわつく。


 王女自ら話しかけるなんて、相当特別らしい。


ガルディア「殿下、その者には近づかぬ方が――」


リリアナ「危険だから、ですか?」


 リリアナが静かに笑う。


リリアナ「ですが、危険かどうかもまだわかっていないのでしょう?」


ガルディア「それは……」


 騎士団長が言葉に詰まる。


 リリアナは俺を見つめた。


リリアナ「少しお話ししませんか?」



 案内されたのは城の中庭だった。


 噴水。

 花畑。

 白い石畳。


 やたら綺麗だ。


 護衛騎士はいるが、少し距離を取っている。


リリアナ「まず謝罪を」


湊「?」


リリアナ「父が失礼な態度を取りました」


湊「別に気にしてない」


 半分嘘だ。


 だが怒っても仕方ない。


 この世界じゃ、得体の知れない能力なんて恐怖でしかない。


リリアナ「あなたは冷静ですね」


湊「パニックになっても意味ないし」


リリアナ「普通の方は、もっと感情的になりますよ」


 彼女は噴水の水面を見ながら言う。


リリアナ「突然異世界へ連れて来られ、危険視され、それでも落ち着いている」


湊「……そう見えるだけかも」


 正直、不安はある。


 帰れるのか。

 この国は安全なのか。

 俺たちはどうなるのか。


 わからないことだらけだ。


 ただ。


 感情を爆発させても、状況は悪くなるだけ。


リリアナ「あなたは頭がいいのですね」


湊「買い被りだよ」


 すると彼女は小さく笑った。


 その笑顔は年相応だった。


 昨日まで『王女』としてしか見えていなかったが、こうして見ると普通の少女にも見える。


 ……いや、普通ではないか。


【リリアナ・フォン・アルセリア】

Lv41

状態:呪術汚染(微弱)

感情:興味/警戒/孤独


 ――呪術汚染?


 視界に表示された文字に、俺は眉をひそめた。


湊「……」


リリアナ「どうしました?」


 解析を深める。


 すると、彼女の体に黒い糸のような魔力が絡みついているのが見えた。


 かなり薄い。


 普通なら気づかないレベル。


 だが確実に存在している。


湊「……あんた、体調悪い?」


リリアナ「え?」


湊「たまに頭痛とか、倦怠感とかない?」


 リリアナの目が見開かれる。


リリアナ「なぜ、それを……」


 当たりか。


 しかも反応的に、長期間続いている。


リリアナ「……誰にも話していないのですが」


湊「勘」


 さすがに解析スキルとは言えない。


 まだ情報は隠すべきだ。


 すると、リリアナが少し真剣な顔になる。


リリアナ「神代 湊」


湊「何?」


リリアナ「あなた、本当に何者なのですか?」


 その問いに、俺は苦笑した。


湊「ただの高校生」


リリアナ「そんな方が、騎士団長の威圧を無効化しますか?」


 まあ、そうなるよな。


 だがその時。


《警告》

《周囲に敵意を感知》


 視界に赤い文字。


 瞬間。


 背筋が冷えた。


湊「っ!」


 反射的にリリアナを引き寄せる。


リリアナ「きゃっ――」


 次の瞬間。


 ズガァンッ!!


 さっきまで彼女がいた場所に、黒い槍が突き刺さった。


 石畳が砕け散る。


 護衛騎士たちが叫ぶ。


騎士「敵襲!!」

騎士「殿下をお守りしろ!!」


 空気が一変した。


 屋根の上。


 黒装束の影が立っていた。


【???】

Lv52

種族:魔人族

スキル:

・隠密

・魔槍術

・毒呪


 魔族。


 しかもかなり強い。


魔人「へぇ……避けるか」


 低い声。


 男とも女ともつかない声だった。


リリアナ「な、ぜ……ここに魔族が……!」


 護衛騎士たちが前へ出る。


 だが。


《警告》

《護衛騎士の生存率:23%》


 低すぎる。


 つまり。


 こいつ、強い。


 魔人が槍を構える。


魔人「姫だけ殺せばいい。邪魔するなよ」


 殺気。


 空気が震える。


 騎士たちが動けない。


 その時。


 俺の視界に文字が浮かんだ。


《対象解析完了》

《スキル構造を一部把握》

《干渉可能》


 ――またか。


 頭に流れ込む情報。


 魔力の流れ。

 槍の構造。

 呪術式。


 見える。


 全部。


 そして理解してしまう。


 壊せる、と。

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