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第19話


 “管理権限継承候補”。


 その文字を見た瞬間、脳が一瞬だけ空白になる。


湊「……何だよそれ」


 声が出るまでにワンテンポ遅れた。


 少女が振り向く。


 その顔には、初めて明確な“焦り”が浮かんでいた。


???「それ、見ちゃダメなやつ」


湊「遅いわ!!」


 空の裂け目。


 “外側の王”と呼ばれた巨大な目が、ゆっくりとこちらを見下ろしている。


外側の王「候補……確かに存在する」


 空間が歪む。


 一言喋るたびに、世界の構造が軋む。


外側の王「欠落した管理者の代替として……」


 少女が一歩前に出る。


???「やめて」


 短い一言。


 だが、世界が一瞬だけ従うように揺れた。


 ――止まる。


 ほんの一瞬。


 それでも異常だ。


ゼクト「……おいおい」


 ゼクトが低く呟く。


ゼクト「“王”相手に押し返してるのかよ」


 少女は振り返らずに言う。


???「今のうちに」


湊「今のうちにって何だよ」


???「決めて」


 空気が変わる。


 少女の声が、少しだけ真剣になる。


???「あなた、継ぐのか」


湊「は?」


???「管理者」


 その単語で、背筋が冷えた。


 王。

 世界。

 外側。

 全部繋がる。


湊「ふざけるな」


 即答だった。


 管理?


 こんなものを?


 世界を?


 冗談じゃない。


外側の王「否定するか」


 巨大な目が細くなる。


外側の王「ならば、排除」


 次の瞬間。


 空間が“沈んだ”。


 圧力じゃない。


 概念ごと押し潰すような重さ。


ガルディア「ぐっ……!!」


 騎士たちが一斉に膝をつく。


 リリアナも息を詰まらせる。


リリアナ「っ……これ……!」


 俺も同じだ。


 呼吸が重い。


 思考が鈍る。


《精神負荷:臨界》

《認識維持困難》


 視界がブレる。


 その時。


 リリアナが俺の腕を強く掴んだ。


リリアナ「神代……!」


 その瞬間。


 また“戻る”。


 世界が安定する。


 この感覚。


 やっぱり彼女が“鍵”だ。


ゼクト「やっぱりアンカーだな、それ」


 ゼクトが舌打ちする。


ゼクト「観測者の暴走を止める錨」


湊「錨ってなんだよ……」


 だが説明されている余裕はない。


 空の圧力がさらに強くなる。


外側の王「拒絶は想定内」


外側の王「ならば直接移行する」


 その瞬間。


 空の裂け目から“手”が伸びてきた。


 黒い。

 巨大な。

 世界のスケールに合っていない。


 空間そのものを掴む手。


 そして――こちらへ引き寄せる。


ガルディア「防げぇぇ!!」


 騎士たちが魔法を放つ。


 だが。


 魔法が“意味を持つ前に”消える。


 ゼクトが低く笑った。


ゼクト「無理だな」


ゼクト「ルールが違う」


 その時。


 少女が静かに言った。


???「断界、二重展開」


 空気が変わる。


 金色の線が、さらに重なる。


 今度は“外側の手”に直接絡みつく。


外側の王「……管理者権限?」


 初めて、声に揺らぎが出た。


 少女は淡々と続ける。


???「まだ有効」


 ギリギリの均衡。


 だが、押し返せている。


 その時だった。


 俺の視界に再び表示。


《候補選択プロセス開始》


 視界が強制的に切り替わる。


 何かの“画面”。


 選択肢。


 逃げる。

 拒否する。

 継承する。


 どれも、意味が重すぎる。


湊「……なんだこれ」


 その瞬間。


 外側の王の声が響いた。


外側の王「選べ」


外側の王「世界の外へ出るか」


外側の王「ここで終わるか」


 シンプルな二択。


 だが、どちらも死に等しい。


 少女が小さく呟く。


???「湊」


 初めて名前で呼んだ。


???「決めて」


 空が割れる音がする。


 限界が近い。


 その瞬間。


 リリアナが強く言った。


リリアナ「神代!!」


 彼女の手が、強く握られる。


 温度。


 現実。


 人間。


 その全部が一気に戻ってくる。


湊「……っ」


 息を吸う。


 そして。


 俺は選択肢を見たまま、ゆっくり口を開いた。


湊「全部拒否だ」


 その瞬間。


 世界が、静かに“跳ねた”。

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