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第18話


 空が“見られていた”。


 無数の目。


 巨大なもの。

 小さなもの。

 人間の目に近いもの。

 まったく形を成していないもの。


 それら全てが、この世界を覗き込んでいる。


 気持ち悪い。


 見られているだけで、脳がざわつく。


騎士「う、うわぁ……」

騎士「なんだよアレぇぇっ!!」


 騎士の一人が剣を落とした。


 無理もない。


 あれは“生物”として認識してはいけない類だ。


《精神汚染発生》

《低位個体に影響拡大》


 騎士たちの呼吸が乱れる。


 中には膝をつく者もいた。


 ガルディアが叫ぶ。


ガルディア「目を合わせるな!!」


 だが遅い。


 一人の騎士が、空を見上げたまま固まった。


騎士「……きれい……」


 次の瞬間。


 その騎士の身体が“崩れた”。


 肉体じゃない。


 存在そのものが砂みたいに分解される。


リリアナ「っ……!!」


騎士たち「うわぁぁぁ!!」


 悲鳴。


 混乱。


 空気が一気に崩壊する。


 その時。


 少女が小さくため息をついた。


???「あーあ」


???「だから直視ダメって言ったのに」


湊「言ってねぇだろ……!」


 俺が叫ぶと、少女は少し驚いた顔をした。


???「あ、そっか」


 軽い。


 この状況で軽い。


 だが、彼女自身はまるで焦っていなかった。


 むしろ――


 “よくあること”みたいな顔。


ゼクト「おい、世界」


 ゼクトが低い声を出す。


ゼクト「ふざけてる場合じゃねぇぞ」


???「わかってるよ」


 少女は空を見上げる。


 その瞬間。


 彼女の雰囲気が変わった。


 空気が静まる。


 世界そのものが、彼女に合わせるように。


???「……境界固定」


 小さな呟き。


 次の瞬間。


 世界全体に“光の線”が走った。


 空。

 地面。

 城壁。

 空間。


 全てに金色の線が広がっていく。


 そして。


 空の亀裂が、一時的に止まった。


騎士「と、止まった……?」

ガルディア「何をした……」


 少女は平然と答える。


???「応急処置」


 規模がおかしい。


 世界規模を“応急処置”で済ませるな。


 だが。


 空の目たちはまだ消えていない。


 亀裂の向こうで、こちらを見続けている。


???「観測者」


 無数の声が重なる。


???「見つけた」

???「境界破壊因子」

???「未成熟個体」


 頭に直接響く。


 吐き気がする。


《外側存在による認識接触》

《危険度上昇》


 その瞬間。


 少女が俺の前へ立った。


 小さな背中。


 でも、その一歩だけで空気が変わる。


???「ダメ」


 優しい声。


 なのに。


 空の目たちが、一斉に沈黙した。


 圧が消える。


 世界側の“拒絶”。


 それだけで、外側の存在たちが押し返されている。


ゼクト「……相変わらず無茶苦茶だな」


 ゼクトが苦笑する。


 少女は振り返らないまま言った。


???「だってここ、私の世界だもん」


 当然みたいに。


 その時。


 一つの目が、ゆっくり開いた。


 他とは違う。


 巨大。


 そして――深い。


《最上位観測反応》


 その瞬間。


 少女の表情が初めて変わった。


???「……え」


 空気が凍る。


 ゼクトも顔色を変えた。


ゼクト「おい、冗談だろ」


湊「何だよ、あれ」


 誰もすぐには答えなかった。


 数秒後。


 少女が、静かに呟く。


???「“外側の王”……」


 瞬間。


 巨大な目が、細く笑った。


 ありえない。


 “目だけ”なのに。


 確かに笑った。


外側の王「久しいな、世界」


 声が響く。


 その一言だけで、金色の境界線にヒビが入る。


 少女の顔が険しくなる。


外側の王「そして――」


 目が、ゆっくり俺を見た。


外側の王「やっと現れたか」


 背筋が凍る。


 その時。


 俺の視界に、見たことのない表示が現れた。


《管理権限継承候補を確認》


湊「……は?」

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