第18話
◇
空が“見られていた”。
無数の目。
巨大なもの。
小さなもの。
人間の目に近いもの。
まったく形を成していないもの。
それら全てが、この世界を覗き込んでいる。
気持ち悪い。
見られているだけで、脳がざわつく。
騎士「う、うわぁ……」
騎士「なんだよアレぇぇっ!!」
騎士の一人が剣を落とした。
無理もない。
あれは“生物”として認識してはいけない類だ。
《精神汚染発生》
《低位個体に影響拡大》
騎士たちの呼吸が乱れる。
中には膝をつく者もいた。
ガルディアが叫ぶ。
ガルディア「目を合わせるな!!」
だが遅い。
一人の騎士が、空を見上げたまま固まった。
騎士「……きれい……」
次の瞬間。
その騎士の身体が“崩れた”。
肉体じゃない。
存在そのものが砂みたいに分解される。
リリアナ「っ……!!」
騎士たち「うわぁぁぁ!!」
悲鳴。
混乱。
空気が一気に崩壊する。
その時。
少女が小さくため息をついた。
???「あーあ」
???「だから直視ダメって言ったのに」
湊「言ってねぇだろ……!」
俺が叫ぶと、少女は少し驚いた顔をした。
???「あ、そっか」
軽い。
この状況で軽い。
だが、彼女自身はまるで焦っていなかった。
むしろ――
“よくあること”みたいな顔。
ゼクト「おい、世界」
ゼクトが低い声を出す。
ゼクト「ふざけてる場合じゃねぇぞ」
???「わかってるよ」
少女は空を見上げる。
その瞬間。
彼女の雰囲気が変わった。
空気が静まる。
世界そのものが、彼女に合わせるように。
???「……境界固定」
小さな呟き。
次の瞬間。
世界全体に“光の線”が走った。
空。
地面。
城壁。
空間。
全てに金色の線が広がっていく。
そして。
空の亀裂が、一時的に止まった。
騎士「と、止まった……?」
ガルディア「何をした……」
少女は平然と答える。
???「応急処置」
規模がおかしい。
世界規模を“応急処置”で済ませるな。
だが。
空の目たちはまだ消えていない。
亀裂の向こうで、こちらを見続けている。
???「観測者」
無数の声が重なる。
???「見つけた」
???「境界破壊因子」
???「未成熟個体」
頭に直接響く。
吐き気がする。
《外側存在による認識接触》
《危険度上昇》
その瞬間。
少女が俺の前へ立った。
小さな背中。
でも、その一歩だけで空気が変わる。
???「ダメ」
優しい声。
なのに。
空の目たちが、一斉に沈黙した。
圧が消える。
世界側の“拒絶”。
それだけで、外側の存在たちが押し返されている。
ゼクト「……相変わらず無茶苦茶だな」
ゼクトが苦笑する。
少女は振り返らないまま言った。
???「だってここ、私の世界だもん」
当然みたいに。
その時。
一つの目が、ゆっくり開いた。
他とは違う。
巨大。
そして――深い。
《最上位観測反応》
その瞬間。
少女の表情が初めて変わった。
???「……え」
空気が凍る。
ゼクトも顔色を変えた。
ゼクト「おい、冗談だろ」
湊「何だよ、あれ」
誰もすぐには答えなかった。
数秒後。
少女が、静かに呟く。
???「“外側の王”……」
瞬間。
巨大な目が、細く笑った。
ありえない。
“目だけ”なのに。
確かに笑った。
外側の王「久しいな、世界」
声が響く。
その一言だけで、金色の境界線にヒビが入る。
少女の顔が険しくなる。
外側の王「そして――」
目が、ゆっくり俺を見た。
外側の王「やっと現れたか」
背筋が凍る。
その時。
俺の視界に、見たことのない表示が現れた。
《管理権限継承候補を確認》
湊「……は?」
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