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第17話


 沈黙。


 本当に、誰一人声を出せなかった。


 騎士たちも。

 ガルディアも。

 王ですら。


 全員が、目の前の少女を理解できずにいる。


 だが。


 俺だけは、本能的にわかってしまった。


 ――嘘じゃない。


 この存在は、本当に“世界側”だ。


《解析不能》

《観測限界超過》

《直接接触注意》


 警告が並ぶ。


 なのに、不思議と恐怖は薄かった。


 さっきの“外側”とは違う。


 あれは純粋な異物。


 だが、この少女は――


 “この世界の内側”だ。


???「ふふ」


 少女が小さく笑う。


???「ちゃんと理解できるんだね」


 その視線が俺へ向く。


 透明な瞳。


 底が見えない。


湊「……お前、何者だ」


???「さっき言ったよ?」


 少女は首を傾げる。


???「この世界そのもの」


ゼクト「いやいや」


 ゼクトが引きつった顔で笑う。


ゼクト「それ本人が出てくるの反則だろ……」


 軽口のようで、本気で困惑していた。


 つまりゼクトでも想定外。


 少女はそんな周囲を気にせず、ゆっくり歩いてくる。


 足音がない。


 いや、空間が彼女を“拒否していない”。


 存在そのものが自然すぎる。


 その時。


 リリアナの紋章が反応した。


 金色の光。


 少女はそれを見ると、少し嬉しそうに目を細める。


???「あ、やっぱり鍵だ」


リリアナ「……鍵って、何なんですか」


 少女は少し考える仕草をする。


???「封印装置?」


リリアナ「装置!?」


 王女への説明じゃない。


 軽すぎる。


 だが少女は平然としている。


???「昔ね、外側のものが入り込みすぎたから、境界を固定するために作ったの」


 作った。


 つまり。


 リリアナの力は“人工的”?


 王が険しい顔になる。


王「……王家の秘術か」


???「ううん、もっと前」


 少女が笑う。


???「あなたたちの文明が始まる前」


 空気が凍る。


 規模が違う。


 その時。


 俺の視界に新しい表示。


《世界管理者個体を確認》

《接触許可状態》


 管理者。


 マジで世界運営側じゃねぇか。


湊「……なんで今出てきた」


???「君が“断界”を使ったから」


 少女は当然みたいに言う。


???「あれ、世界の管理権限に近い力なんだよ?」


湊「は?」


ゼクト「は?」


 俺とゼクトの声が重なる。


 少女はきょとんとした。


???「知らなかったの?」


湊「知らねぇよ!!」


 思わず叫ぶ。


 少女は少し困った顔をする。


???「でも適合率高いし……」


ゼクト「待て待て待て」


 ゼクトが額を押さえる。


ゼクト「適合率って何%だ」


 少女はサラッと言った。


???「今はまだ18%くらい?」


ゼクト「……終わった」


 頭を抱えた。


 その反応、やめろ。


 怖い。


湊「何なんだよ、その反応」


ゼクト「普通、1%でも化け物なんだよ」


 真顔だった。


ゼクト「観測者ってのは、本来“世界を理解する側”で終わる」


ゼクト「でも権能持ちは違う」


 ゆっくり俺を見る。


ゼクト「“世界に干渉する側”になる」


 嫌な汗が流れる。


 その時。


 少女が俺の前でしゃがみこんだ。


 視線が近い。


???「でも安心して」


湊「何を」


???「まだ人間だから」


 にこっと笑う。


 その言葉が、逆に怖い。


湊「……人間じゃなくなるみたいに言うな」


???「実際そうだし」


 即答。


 空気が止まる。


 リリアナが不安そうに俺を見る。


リリアナ「神代……?」


 少女は続ける。


???「観測者はね、理解し続けると、だんだん“世界側”になるの」


???「個人じゃなくて、概念に近づく」


 頭が痛い。


 つまり。


 最後には“人”じゃなくなる?


ゼクト「俺は途中で止めた」


 ゼクトが静かに言う。


ゼクト「だからまだ自我がある」


 その顔には、少しだけ影があった。


 つまり、完全に止められたわけじゃない。


 その時。


 少女が突然、空を見上げた。


???「あー」


???「もう来た」


 次の瞬間。


《超高密度観測反応》

《世界境界震動》


 空間が揺れる。


 さっき閉じたはずの空に、“亀裂”が走った。


 今度は一つじゃない。


 何十本も。


 そして。


 その向こうから、“目”が覗いていた。


 無数の。


 世界の外側から。

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