第14話
◇
“目”が合った。
その瞬間、全身の血が凍りつく。
見てはいけないものを見た。
理解してはいけないものを理解しかけた。
《警告》
《上位観測存在との接触を確認》
《認識汚染進行》
湊「っ……!!」
視界が歪む。
塔が消える。
騎士も、リリアナも、ゼクトも。
全部が“線”になって崩れていく。
代わりに見えたのは――
“海”。
黒い海だった。
果てのない闇。
そこに、巨大な何かが沈んでいる。
いや、違う。
世界そのものが、その存在の“影”だった。
???「――見つけた」
声。
頭の中じゃない。
世界全体から響いてくる。
圧倒的。
存在の格が違いすぎる。
理解した瞬間、人間として壊れるレベル。
《精神崩壊危険域》
だが、その時。
リリアナ「神代!!!」
金色の光。
瞬間、視界が現実へ戻った。
湊「……はぁっ!!」
息を荒げる。
床に膝をついていた。
塔は半壊している。
黒い腕は消えかけ、王は倒れていた。
リリアナが俺を支えている。
リリアナ「大丈夫ですか!?」
湊「……今の、何だ」
声が震える。
初めてだった。
本気で恐怖を感じた。
ゼクトが苦い顔でこちらを見る。
ゼクト「見ちまったか」
湊「お前……知ってたのか」
ゼクト「ある程度な」
珍しく軽口がない。
それだけで異常さがわかる。
ゼクト「“深層”を見るなって言ったろ」
湊「聞いてねぇよ……!」
ゼクト「言ったところで無理か」
頭を掻きながらため息。
その時。
王の身体から黒い霧が抜け始めた。
寄生存在が、剥がされている。
???「観測者ァァァ……」
憎悪に満ちた声。
黒い核が宙へ浮かび上がる。
球体。
いや、“目”だ。
巨大な黒い目。
それだけで空間が歪む。
騎士「化け物……」
ガルディア「総員、結界を張れ!!」
騎士たちが慌てて魔法陣を展開する。
だが。
《結界強度:突破予測》
意味がない。
格が違いすぎる。
黒い目がゆっくり俺を見る。
???「お前は、こちら側へ来る」
湊「断る」
???「拒否は無意味」
その瞬間。
大量の“情報”が流れ込んできた。
観測者。
深層。
世界の裏側。
そして――
“外”。
この世界の外側に、さらに別の“層”が存在している。
《世界構造理解率:12%》
湊「っ……!」
頭痛。
脳が耐えきれない。
なのに理解してしまう。
理解した瞬間、世界の見え方が変わる。
壁が壁に見えない。
人が人に見えない。
全部“情報の塊”になる。
リリアナ「神代!!」
彼女が強く俺の手を握る。
その瞬間。
崩れかけた認識が戻る。
人の温度。
柔らかさ。
感情。
《精神安定》
……助けられてる。
本当に。
ゼクトがその様子を見て笑った。
ゼクト「完全にアンカーだな」
湊「だから何なんだよ、それ」
ゼクト「簡単に言えば」
ゼクトが黒い目を睨む。
ゼクト「お前を“人間側”に引っ張ってる存在」
その時。
黒い目がリリアナを見る。
???「鍵……」
空気が変わる。
次の瞬間。
黒い目から無数の線が伸びた。
全部、リリアナへ向かう。
ゼクト「チッ!!」
湊「リリアナ!!」
反射的に前へ出る。
《自動防御展開》
世界が再び遅くなる。
線が見える。
黒い糸。
認識侵食。
魂への接続。
理解した瞬間、俺は無意識に手を伸ばしていた。
湊「――切れ」
パキンッ。
乾いた音。
黒い線が一斉に断裂する。
???「……!?」
初めて、“それ”が驚愕した。
同時に。
俺の視界に、新しい表示が浮かぶ。
《権能取得条件を一部達成》
《名称未設定機能:解放可能》
湊「……権能?」
その瞬間。
黒い目が、はっきりと“敵意”を向けてきた。
???「危険」
???「やはり、消すべきだ」
空間が軋む。
塔全体が崩れ始める。
そして。
空の黒い輪が、さらに開いた。
向こう側から――
“何か”が降りてこようとしていた。
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