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第13話


 金色の紋章が、リリアナの胸元からゆっくり広がっていく。


 暖かい光。


 なのに、その場にいる全員が本能的な“格の違い”を感じていた。


 騎士たちですら、言葉を失っている。


騎士「なんだ……あの光……」

騎士「魔力じゃない……?」


 違う。


 これはもっと根源的な何かだ。


《解析開始》

《高次封印術式》

《世界基盤接続型》


 また意味不明な単語。


 だが一つだけわかる。


 リリアナはただの王女じゃない。


???「……鍵が、目覚めるとは」


 王の身体を使う“それ”が低く唸る。


 黒い腕がざわつくように蠢いた。


 まるで警戒している。


 いや、恐れている。


ゼクト「ははっ」


 ゼクトが笑う。


ゼクト「なるほどなァ」


ゼクト「だから王家が代々囲ってたのか」


リリアナ「な、何を言って……」


ゼクト「姫さん、自覚ゼロかよ」


 呆れたように肩をすくめる。


 その時。


 リリアナの紋章がさらに強く輝いた。


 すると――


 王の身体から伸びていた黒い腕が、“焼ける”ように崩れ始める。


???「チッ――」


 初めて、“それ”が明確に苛立った。


王「がっ……あぁぁっ!!」


 王本人の意識が少し戻る。


 苦しげに喘ぎながら、リリアナへ手を伸ばした。


王「……リア……ナ……」


リリアナ「お父様!!」


 彼女が泣きそうな顔で駆け寄ろうとする。


 だが俺は咄嗟に腕を掴んだ。


湊「待て」


リリアナ「でも!!」


湊「まだ中にいる」


 俺には見えている。


 王の中。


 黒い“核”。


 寄生というより、“侵食”。


 あれはまだ消えていない。


《深層解析進行》

《寄生存在一時弱体化》


 完全には無理だ。


 今のリリアナでも、抑えているだけ。


 その時。


 “それ”が俺を見た。


???「観測者」


 声が直接頭に響く。


???「なぜ人間側にいる」


湊「……知らねぇよ」


???「お前は我々と同質だ」


 同質。


 その言葉に、妙な嫌悪感が湧いた。


 俺はこいつらみたいになりたくない。


 なのに。


 理解できてしまう。


 “構造”として。


ゼクト「やめとけ」


 ゼクトが割って入る。


ゼクト「そいつ、今まだ人間寄りだ」


???「だから脆い」


 黒い魔力が膨れ上がる。


 空気が震える。


 次の瞬間。


 王の身体が浮いた。


リリアナ「お父様!?」


 黒い腕が王を包み込んでいく。


 まずい。


 完全に乗っ取る気だ。


《推奨行動》

《核の切断》


湊(簡単に言うな……!)


 だが、見えてしまっている。


 核の位置。


 魔力の接続。


 切れば、止まる。


 でも。


 それをやったら――


 王ごと壊れる可能性が高い。


 迷った、その瞬間。


 ゼクトが舌打ちした。


ゼクト「チッ、しゃーねぇな」


 空間が歪む。


 ゼクトの槍が現れる。


 黒い、禍々しい槍。


《構造兵装》

《危険度:極大》


 ゼクトがそれを構える。


ゼクト「姫さん」


リリアナ「え……?」


ゼクト「今だけ、力貸せ」


 リリアナが目を見開く。


 だがゼクトは真剣だった。


 初めて見る顔。


ゼクト「王様死なせたくねぇなら、封印を合わせろ」


リリアナ「……っ」


 彼女は迷う。


 当然だ。


 相手は魔族。


 敵。


 そのはず。


 でも――


 今、この場で一番冷静なのはゼクトだった。


湊「リリアナ」


リリアナ「神代……」


湊「今は協力しろ」


 数秒の沈黙。


 そして。


 リリアナは小さく頷いた。


リリアナ「……わかった」


 その瞬間。


 ゼクトが笑う。


ゼクト「よし」


 黒い槍が唸る。


 同時に、リリアナの金色の光が槍へ流れ込んだ。


 黒と金。


 本来相反する力が、混ざる。


 その光景に、“それ”が初めて動揺した。


???「馬鹿な」


???「なぜ混ざる!?」


ゼクト「時代が違ぇんだよ」


 次の瞬間。


 ゼクトが槍を投げた。


 轟音。


 黒金の光が王へ突き刺さる。


 いや――


 王の中の“核”へ。


???「ァァァァアアアア!!」


 絶叫。


 塔全体が揺れる。


 黒い腕が暴走し、空間が裂け始める。


騎士「崩れる!!」

ガルディア「全員退避!!」


 だが。


 俺は動かなかった。


 視界に見えていた。


《深層核露出》

《解析可能》


 今なら見える。


 “それ”の本体。


 世界の奥にいる、巨大な影。


 そして。


 その向こう側。


 もっと深い場所。


《上位観測反応を確認》


湊「……は?」


 その瞬間。


 “向こう側”から、何かがこちらを見返した。

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