第13話
◇
金色の紋章が、リリアナの胸元からゆっくり広がっていく。
暖かい光。
なのに、その場にいる全員が本能的な“格の違い”を感じていた。
騎士たちですら、言葉を失っている。
騎士「なんだ……あの光……」
騎士「魔力じゃない……?」
違う。
これはもっと根源的な何かだ。
《解析開始》
《高次封印術式》
《世界基盤接続型》
また意味不明な単語。
だが一つだけわかる。
リリアナはただの王女じゃない。
???「……鍵が、目覚めるとは」
王の身体を使う“それ”が低く唸る。
黒い腕がざわつくように蠢いた。
まるで警戒している。
いや、恐れている。
ゼクト「ははっ」
ゼクトが笑う。
ゼクト「なるほどなァ」
ゼクト「だから王家が代々囲ってたのか」
リリアナ「な、何を言って……」
ゼクト「姫さん、自覚ゼロかよ」
呆れたように肩をすくめる。
その時。
リリアナの紋章がさらに強く輝いた。
すると――
王の身体から伸びていた黒い腕が、“焼ける”ように崩れ始める。
???「チッ――」
初めて、“それ”が明確に苛立った。
王「がっ……あぁぁっ!!」
王本人の意識が少し戻る。
苦しげに喘ぎながら、リリアナへ手を伸ばした。
王「……リア……ナ……」
リリアナ「お父様!!」
彼女が泣きそうな顔で駆け寄ろうとする。
だが俺は咄嗟に腕を掴んだ。
湊「待て」
リリアナ「でも!!」
湊「まだ中にいる」
俺には見えている。
王の中。
黒い“核”。
寄生というより、“侵食”。
あれはまだ消えていない。
《深層解析進行》
《寄生存在一時弱体化》
完全には無理だ。
今のリリアナでも、抑えているだけ。
その時。
“それ”が俺を見た。
???「観測者」
声が直接頭に響く。
???「なぜ人間側にいる」
湊「……知らねぇよ」
???「お前は我々と同質だ」
同質。
その言葉に、妙な嫌悪感が湧いた。
俺はこいつらみたいになりたくない。
なのに。
理解できてしまう。
“構造”として。
ゼクト「やめとけ」
ゼクトが割って入る。
ゼクト「そいつ、今まだ人間寄りだ」
???「だから脆い」
黒い魔力が膨れ上がる。
空気が震える。
次の瞬間。
王の身体が浮いた。
リリアナ「お父様!?」
黒い腕が王を包み込んでいく。
まずい。
完全に乗っ取る気だ。
《推奨行動》
《核の切断》
湊(簡単に言うな……!)
だが、見えてしまっている。
核の位置。
魔力の接続。
切れば、止まる。
でも。
それをやったら――
王ごと壊れる可能性が高い。
迷った、その瞬間。
ゼクトが舌打ちした。
ゼクト「チッ、しゃーねぇな」
空間が歪む。
ゼクトの槍が現れる。
黒い、禍々しい槍。
《構造兵装》
《危険度:極大》
ゼクトがそれを構える。
ゼクト「姫さん」
リリアナ「え……?」
ゼクト「今だけ、力貸せ」
リリアナが目を見開く。
だがゼクトは真剣だった。
初めて見る顔。
ゼクト「王様死なせたくねぇなら、封印を合わせろ」
リリアナ「……っ」
彼女は迷う。
当然だ。
相手は魔族。
敵。
そのはず。
でも――
今、この場で一番冷静なのはゼクトだった。
湊「リリアナ」
リリアナ「神代……」
湊「今は協力しろ」
数秒の沈黙。
そして。
リリアナは小さく頷いた。
リリアナ「……わかった」
その瞬間。
ゼクトが笑う。
ゼクト「よし」
黒い槍が唸る。
同時に、リリアナの金色の光が槍へ流れ込んだ。
黒と金。
本来相反する力が、混ざる。
その光景に、“それ”が初めて動揺した。
???「馬鹿な」
???「なぜ混ざる!?」
ゼクト「時代が違ぇんだよ」
次の瞬間。
ゼクトが槍を投げた。
轟音。
黒金の光が王へ突き刺さる。
いや――
王の中の“核”へ。
???「ァァァァアアアア!!」
絶叫。
塔全体が揺れる。
黒い腕が暴走し、空間が裂け始める。
騎士「崩れる!!」
ガルディア「全員退避!!」
だが。
俺は動かなかった。
視界に見えていた。
《深層核露出》
《解析可能》
今なら見える。
“それ”の本体。
世界の奥にいる、巨大な影。
そして。
その向こう側。
もっと深い場所。
《上位観測反応を確認》
湊「……は?」
その瞬間。
“向こう側”から、何かがこちらを見返した。
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