第12話
◇
黒い魔力が王の身体から噴き出す。
騎士たちが一斉にざわめいた。
騎士「陛下!?」
騎士「何が起きている!!」
王は胸を押さえ、苦しそうに膝をつく。
その姿を見て、リリアナの顔が青ざめた。
リリアナ「お父様!!」
駆け寄ろうとする。
だが。
《警告》
《接触危険度:極大》
反射的に俺は彼女の腕を掴んだ。
湊「行くな!」
リリアナ「でも!!」
次の瞬間。
王の背後の空間が“裂けた”。
黒い亀裂。
その中から、何本もの黒い腕が這い出してくる。
騎士たちが息を呑む。
騎士「な、なんだアレは……!」
ガルディア「陛下から……出ている……?」
王が苦しげに叫ぶ。
王「ぐ……あぁぁっ!!」
その声は、途中から“別の声”へ変わった。
???「――ようやく、開いたか」
低い声。
男とも女ともつかない。
空気そのものが冷える。
黒い腕が王の身体へ絡みつき、ゆっくりと持ち上げる。
リリアナ「いや……」
震える声。
ゼクトは静かにそれを見ていた。
ゼクト「遅かったな」
湊「お前、知ってたのか」
ゼクト「当然」
軽く答える。
ゼクト「王様はずっと“器”だった」
器。
その単語に嫌な寒気が走る。
《深層解析》
《寄生存在名:未確認》
《危険度:測定不能》
測定不能。
初めて見るレベル。
俺の解析ですら、完全には見えない。
その時。
王の口がゆっくり開いた。
だが動いているのは王じゃない。
???「観測者」
声が響く。
直接頭に流れ込むような声。
???「やっと会えた」
黒い瞳。
いや、違う。
王の目が“塗り潰されている”。
闇で。
ガルディア「陛下から離れろ!!」
騎士団長が飛び出す。
だが。
黒い腕が軽く振られただけで――
ガルディアの身体が吹き飛んだ。
轟音。
石壁に叩きつけられる。
リリアナ「団長!!」
強すぎる。
レベルの問題じゃない。
“存在そのもの”が違う。
俺の視界にエラー表示が増えていく。
《解析不能》
《情報汚染発生》
《深層干渉警告》
頭が痛い。
見るだけで危険。
なのに、理解が進む。
勝手に。
???「なぜ拒絶する」
王の身体を使って“それ”が喋る。
???「お前は我々に近い」
湊「……我々?」
ゼクト「おいおい」
ゼクトが笑う。
ゼクト「そいつの言葉、真面目に聞くなよ」
???「裏切り者が」
空気が歪む。
黒い圧力がゼクトへ向かう。
だがゼクトは動じない。
ゼクト「お前らと一緒にすんな」
瞬間。
ゼクトの周囲の空間が割れる。
“構造操作”。
黒い圧力を強引に分断した。
衝撃で塔全体が揺れる。
騎士「うわぁぁぁ!!」
天井が崩れ始める。
最悪だ。
戦闘規模がデカすぎる。
その時。
“それ”が俺を見た。
???「観測者」
???「こちらへ来い」
瞬間。
頭の中に映像が流れ込む。
宇宙みたいな暗闇。
無数の光。
崩壊する世界。
そして。
“巨大な目”。
湊「っ……!!」
膝が揺れる。
脳が焼けそうだ。
《精神侵食》
《異常接続を確認》
リリアナ「神代!!」
彼女の声で、意識が少し戻る。
その瞬間。
“それ”がわずかに反応した。
???「……光?」
空気が止まる。
黒い瞳がリリアナを見る。
???「なぜここに“鍵”がいる」
鍵?
リリアナ本人も意味がわからない顔をしている。
ゼクト「……あー」
ゼクトが面倒そうに頭を掻く。
ゼクト「最悪のタイミングでバレたな」
湊「どういう意味だ」
ゼクト「姫さん、多分“封印側”だ」
リリアナ「……え?」
その瞬間。
リリアナの胸元が淡く光った。
金色。
暖かい光。
黒い魔力とは真逆の輝き。
???「忌々しい」
“それ”の声に初めて感情が混じる。
怒り。
いや、憎悪。
空気が震える。
《危険度急上昇》
その時。
リリアナの身体から、見たことのない紋章が浮かび上がった。
金色の円環。
まるで――封印陣。
ゼクト「……おいおい」
ゼクトが乾いた笑いを漏らす。
ゼクト「マジで“本物”かよ」




