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第12話


 黒い魔力が王の身体から噴き出す。


 騎士たちが一斉にざわめいた。


騎士「陛下!?」

騎士「何が起きている!!」


 王は胸を押さえ、苦しそうに膝をつく。


 その姿を見て、リリアナの顔が青ざめた。


リリアナ「お父様!!」


 駆け寄ろうとする。


 だが。


《警告》

《接触危険度:極大》


 反射的に俺は彼女の腕を掴んだ。


湊「行くな!」


リリアナ「でも!!」


 次の瞬間。


 王の背後の空間が“裂けた”。


 黒い亀裂。


 その中から、何本もの黒い腕が這い出してくる。


 騎士たちが息を呑む。


騎士「な、なんだアレは……!」

ガルディア「陛下から……出ている……?」


 王が苦しげに叫ぶ。


王「ぐ……あぁぁっ!!」


 その声は、途中から“別の声”へ変わった。


???「――ようやく、開いたか」


 低い声。


 男とも女ともつかない。


 空気そのものが冷える。


 黒い腕が王の身体へ絡みつき、ゆっくりと持ち上げる。


リリアナ「いや……」


 震える声。


 ゼクトは静かにそれを見ていた。


ゼクト「遅かったな」


湊「お前、知ってたのか」


ゼクト「当然」


 軽く答える。


ゼクト「王様はずっと“器”だった」


 器。


 その単語に嫌な寒気が走る。


《深層解析》

《寄生存在名:未確認》

《危険度:測定不能》


 測定不能。


 初めて見るレベル。


 俺の解析ですら、完全には見えない。


 その時。


 王の口がゆっくり開いた。


 だが動いているのは王じゃない。


???「観測者」


 声が響く。


 直接頭に流れ込むような声。


???「やっと会えた」


 黒い瞳。


 いや、違う。


 王の目が“塗り潰されている”。


 闇で。


ガルディア「陛下から離れろ!!」


 騎士団長が飛び出す。


 だが。


 黒い腕が軽く振られただけで――


 ガルディアの身体が吹き飛んだ。


 轟音。


 石壁に叩きつけられる。


リリアナ「団長!!」


 強すぎる。


 レベルの問題じゃない。


 “存在そのもの”が違う。


 俺の視界にエラー表示が増えていく。


《解析不能》

《情報汚染発生》

《深層干渉警告》


 頭が痛い。


 見るだけで危険。


 なのに、理解が進む。


 勝手に。


???「なぜ拒絶する」


 王の身体を使って“それ”が喋る。


???「お前は我々に近い」


湊「……我々?」


ゼクト「おいおい」


 ゼクトが笑う。


ゼクト「そいつの言葉、真面目に聞くなよ」


???「裏切り者が」


 空気が歪む。


 黒い圧力がゼクトへ向かう。


 だがゼクトは動じない。


ゼクト「お前らと一緒にすんな」


 瞬間。


 ゼクトの周囲の空間が割れる。


 “構造操作”。


 黒い圧力を強引に分断した。


 衝撃で塔全体が揺れる。


騎士「うわぁぁぁ!!」


 天井が崩れ始める。


 最悪だ。


 戦闘規模がデカすぎる。


 その時。


 “それ”が俺を見た。


???「観測者」


???「こちらへ来い」


 瞬間。


 頭の中に映像が流れ込む。


 宇宙みたいな暗闇。


 無数の光。


 崩壊する世界。


 そして。


 “巨大な目”。


湊「っ……!!」


 膝が揺れる。


 脳が焼けそうだ。


《精神侵食》

《異常接続を確認》


リリアナ「神代!!」


 彼女の声で、意識が少し戻る。


 その瞬間。


 “それ”がわずかに反応した。


???「……光?」


 空気が止まる。


 黒い瞳がリリアナを見る。


???「なぜここに“鍵”がいる」


 鍵?


 リリアナ本人も意味がわからない顔をしている。


ゼクト「……あー」


 ゼクトが面倒そうに頭を掻く。


ゼクト「最悪のタイミングでバレたな」


湊「どういう意味だ」


ゼクト「姫さん、多分“封印側”だ」


リリアナ「……え?」


 その瞬間。


 リリアナの胸元が淡く光った。


 金色。


 暖かい光。


 黒い魔力とは真逆の輝き。


???「忌々しい」


 “それ”の声に初めて感情が混じる。


 怒り。


 いや、憎悪。


 空気が震える。


《危険度急上昇》


 その時。


 リリアナの身体から、見たことのない紋章が浮かび上がった。


 金色の円環。


 まるで――封印陣。


ゼクト「……おいおい」


 ゼクトが乾いた笑いを漏らす。


ゼクト「マジで“本物”かよ」

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