521ーぐるぐるする
そしてロック鳥が雛を大事そうに抱えて、じゃーなー! と帰って行った。
バッサバッサと上空に上がる時には、風が起こり俺とエルはよろけてしまう。ロック鳥、分かってる? 本当に魔族がやって来たらすぐに来てね。
「ふぅ~、びっくりなのら」
「な、なんかよくわからないじょ」
「あたまのなかが、ぐるぐるしゅるのら」
「ぼくもら」
だって、とんでもない話ばかりなのだもの。お祖父様たちはとっても冷静だけど、ロッテ姉は相変わらず涙目になっている。ここは泣くところではないぞ。
「レオ、心配だわ。無茶しないでね」
「アハハハ、ロッテは心配性だな」
なんて言っている。おやおや~? なんだか二人はいい感じじゃないか? 思わず、じーッと見てしまった。
「ロロ、あんまり見るな」
「にこにい、しょう?」
「おう、そっとしておくもんだ」
「にこにい、おとななのら」
「当たり前だ。俺はもうすぐ10歳だからな」
ニコ兄ったらさすがだ。
「二人とも何言ってんのよ」
「リア姉は鈍感だからな」
「しょうしょう」
「ええ?」
さっきまで魔族を怖がっていたのに、いつの間にかいつもの感じに戻っている。これってディさんとクリスティー先生の存在が大きい。自分たちよりずっと強いと分かっている。その二人が全然慌てていないからだ。
「さて、それでは皆さん。早速ですが特訓いたしましょう!」
「ふふふ、張り切ってるよ」
「ディ、当然でっす。こんなに才能ある子たちを特訓できるのですから」
おっと、特訓ってクリスティー先生は厳しいのだろう? 俺ってディさんチームだっけ? クリスティー先生チームだっけ?
「ろろはぼくと、くりしゅてぃーしぇんしぇいら」
「しょうらった」
「くりしゅてぃーしぇんしぇいは、こえーからな」
また言ってる。追いかけて来られたのが、よほど怖かったのだね。
でもちゃんと教わったら、エルももう少しピコピコハンマーが使えるようになるはずだ。
「わふん」
「キュル」
僕たちは何をするの? て、ピカとチロが聞いてきた。
「あい! くりしゅてぃーしぇんしぇい!」
「はい、ロロ」
「ぴかとちろは、なにしゅるのら?」
「そうですね~、ピカはブルクハルト様たちの対戦チームの相手をお願いしまっす」
「わふ」
「チロは、対戦チームが疲れたり怪我をしたらどんどん回復してください」
「キュルン」
ほうほう、なるほど。強いピカさんを相手に対戦する。そしてもし怪我したり疲れたりしたらチロが回復すると。それはチロの練習にもなる。
それぞれが分かれて自分たちにできることをする。ただ怖がっているよりずっといい。
お祖父様たち対戦チームは裏の広い場所へ、ニコ兄たちポーション作成チームは薬草を採りに温室へ、俺たちクリスティー先生チームはお邸の中へと入って行った。
付与をするらしいのだけど、俺は刺繍でしかまだしたことがない。できるのかな?
「ろろ、ぼくはもっとぴこぴこはんまーを、ちゅかえるようになるじょ」
「うん」
「らから、ろろもきっと、れきるようになる」
「える、ありがと」
「おー、しんゆうらからな」
ふふふ、エルったら頼もしい。ここで戸惑っていても仕方ない。エルの言うように、頑張るしかないのだ。よし、やるぞ。
「さて、付与ですが」
「「あい!」」
思わずエルと二人で手を上げてお返事してしまった。
「おや、二人とも良いお返事でっす」
クリスティー先生が、どこからか布の袋をドドンと出した。そこには小さな石がたくさん入っていた。これって魔石なのかな?
「クリスティー先生、こんなにたくさんの魔石を」
「はい、フリード様から預かってきました。そしてこれがお見本でっす」
クリスティー先生がお見本と言って見せてくれたのは、魔石のペンダントだった。お花の形に繋げた小さな魔石を、ペンダントトップにしてある。
これってこの花弁に見立てた一つ一つの魔石に付与がしてあるのかな? もしかしてそれを今からすると?
「これは、凄いですね。フリード爺にお世話になっていたのに、全然知りませんでした」
「ええ、これは秘密ですからねッ」
そう言って、バシコーンとウインクをする。クリスティー先生のウインクも破壊力が半端ない。エルフさんは綺麗だから、ウインクなんてされると目がチカチカしちゃうぞ。
「これはさっき話していた令嬢が考案されてからずっと辺境伯家で受け継がれてきた物でっす」
えっとぉ、300年前にいた令嬢のことだ。その令嬢が考案したと。
「この魔石の一つ一つに物理攻撃防御や魔法攻撃防御、状態異常無効を付与してある優れものでっす。魔族に対抗するには、これくらいは必要でしょう」
レオ兄はさっき凄いと言っていた。きっと鑑定眼でこれがどういう物なのかを見たのだ。これって本当に俺はできるのか? てか、お祖母様とかレオ兄とか魔石に付与したことがあるのかな?
「れおにい、したことあるの?」
「僕はないよ。ロロがリボンとかハンカチとかに付与してくれているだろう? 普通はあれで十分だから」
じゃあこれは普通じゃないくらいの付与がしてあるってことだ。ええー、全然できる気がしない。
「では、私がお手本を見せまっす」
クリスティー先生は、サクサクと話を進めていく。できて当然と思っているみたいに。




