俺の日常にファンタジーが突き刺さってきた その23
柴 is エンジェル
・異世界4日目 15:20
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ソファに頭を突っ込んだままウィリアムが動かない。
スネて引き篭もって、出てきてくれない。
「いい加減、諦めて出て来いよー」
声をかけるも、尻を左右にふりふりされてしまった。
どうやら、首の代わりに尻を使ったイヤイヤ表現らしい。
なにそれ可愛い。
「がうっがうっ!」
”オレも欲しい!くれるまで出て行かない!”
そしてこの宣言である。
断固として出てくる気はないらしい。実に小癪。
ただなー。
ひっじょーに残念ながら、説得力がないんだよなー。
だってウィリアムだぞ?
うちのペットの中で、ダントツで堪え性のないヤツだぞ?
そんなヤンチャボーイが、果たしてソファに頭ツッ込んだまま大人しくしてられるのだろうか?
答えは否だ。ぜってー無理。どう考えてもムリムリカタツムリだわ。
その証拠に、1分くらい観察してただけで案の定モゾモゾと動き始めた。
そらみたことか!
ゆっくりとソファから頭を引き抜き、首を回してコチラを振り向くウィリアムたん。
コソォ……と俺の様子を伺ってきた。
まぁ、どれだけコソコソしても無駄なんだけどな。
なんせコッチはその一部始終を目撃した上で、待ち構えてる訳ですし。
ガッツリ目が合った。
「よっ」
片手を挙げて挨拶すると
鬼のようなスピードで、ソファに頭をツッ込み直されてしまった。
「ガウガウッ!」
”オレも欲しい!くれるまで出て行かない!”
そしてこのツッコミどころ満載の宣言再びである。
いや、2秒前まで思いっきり顔出してたじゃねーか。
1分で音を上げてたじゃねーか。
言いたいことは多々あったが
お尻ふりふりが可愛かったことに免じて見逃してやることにした。
そんじゃ仕切り直しだな。
遠慮なくかかってこんかい、このワガママウルフめ!
こうして俺とウィリアムの我慢比べが始まった。
ウィリアムの尻を眺めつつ観察を続行。
するとまたしても1分くらいで、モゾモゾし始めた。堪え性がないにも程があるわ。
ソファから頭を引き抜き、コソォ……っとコチラへ振り向くウィリアムたん。
目が合うと、サッとソファに頭をツッ込み直されてしまった。はやい。
更に1分経過。モゾモゾし始めた。
コソォ……っコチラを伺ってくるウィリアムたん。
今回も目が合うなり、ソファに頭をツッ込み直された。はやい。
更に更に1分経過。モゾモゾ開始。
やはりコソォ……と伺ってきた。
しかしなんと目が合うギリギリのタイミングで、視線を逸らされてしまった。
「ガウッ!」
”オレの勝ちー!”
そしてこの勝どきである。
あー……なるほどな。
多分これはアレだわ。
一連のルーチンがだんだん楽しくなってきて
本来の目的をスコッと忘れちまったパティーンだろきっと。
チョーご機嫌なウィリアムたん。
やっぱスゲェわコイツ。色んな意味で。
だがしかし。
「ガウガウッ!」
”にーちゃん!ゴキゲン直ったなら皆でご飯食べようよ!”
「ガッ……!」
エドガーの無邪気なお誘いを受けて、目的を思い出したらしい。
短く一吠えした後、目にも止まらぬスピードで再びソファに頭をツッ込み直しやがった。
「ガウーッ!」
”えー!また潜るのーッ?”
不満ブーブーなエドガーたん。
いいぞいいぞ、もっと言ってやれ。
「行けエドガー。往生際の悪い兄ーちゃんをソファから引っこ抜いてくるのだ」
ウィリアムの尻をビシッと指差しながら任務を与えると
「ガウッ!」
”わかった!”
元気よくお返事したエドガーが、勢いよくウィリアムの隣にブッ刺さっていった。
いや、お前も刺さるんかーい。
[兄弟写真: 仲良く並んでソファにブッ刺さる巨大狼さんたち (尻2つ)]
スゲェ絵面だ。
あ、もちろんいい意味でな。
圧倒的美尻ッ。
そして美尻からスラリと伸びる無敵の脚線美ッ。
これはもう額縁に入れて飾るべきレベルだろ。
しばし魅惑の兄弟尻に眼福してると
ソファ溝から、くぐもった狼たちの声が聞こえた。
どうやら並んでソファにブッ刺さったまま、ウィリアムを説得してくれるらしい。
「ガウガウッ!」
”にーちゃん、ご飯だよ!ご飯!”
「がう」
”あっち行け”
「ガウガウッ!」
”一緒に行こうよ!みんな待ってるよ!!”
「がう」
”ヤダ”
「ガウガウッ!」
”出ーてーきーてー!!”
「がうっがうっ」
”ヤダ、ヤダ”
でも、スゲェ難航してるっぽい。
あ、エドガーがスッポォォンって飛び出てきた。
「ガウッ!」
”ダメだこりゃ!”
あー、うん。そっか。
やっぱダメだったか。そっか、そっか。
若干、見切りをつけるのが早すぎる気もするが
『オレ、頑張ったよ!』と誇らしげにドヤるエドガーを見た瞬間、そんな気持ちは吹き飛んだ。
エドガーたんのドヤ顔、チョー可愛い。
当然、首元をわしゃわしゃしてやった。
「ありがとなー」
「ガウガウッ!」
”にーちゃん、ときどきメンドクサイよね!”
それな。
ホント困った兄ちゃんだよなー。
ひとしきりエドガーたんのドヤ顔を愛でた後
改めてウィリアムを説得してみたんだが、まぁてんでお話にならなかった。
「いくらねばってもダメなもんはダメだぞ」
ふりふり。
「腹減ってるだろ?そろそろ諦めて飯にしよーぜ」
ふりふり。
「いい加減、出てこいっつーの!」
ふりふり。
埒開かぬぇ!!
ぶっちゃけ、途中からは『尻をふりふりするウィリアム』を見るために声かけてたもんな。
そんなこんなで、万策尽きて悲嘆に暮れていると
シバ丸・シバ吉がとことことソファの方へ歩いていくのが見えた。
2人はそのままソファの裏側に回り込むと、
ちょうどウィリアムの頭がブッ刺さってるあたりに向かってヒソヒソと話し始めた。
「わふっ……!」
”オレたちがもらった肉を、半分こしますよ!”
「わふわふっ……!」
”ペッポのお礼です!”
シバ達がいい子過ぎてツラい。
どうしよう。365日抱きしめていたい。ツラい。
もちろんこのチャンスを逃すウィリアムじゃねぇ。
口を挟む間すらなく、ヤツは動き出した。
具体的にどうなったかって?
そんなもん。
自主的にスッポーンとソファから飛び出て来たに決まってんじゃん。
「ガウガウッ!」
”ヤッターッ!!”
「ガウッ!」
”ありがと!”
「ガウッ!!」
”オレ、チョー嬉しい!”
「ガウガウッ!!ガウガウガウッ!!!!」
”困ったことあったら何でも言え!オレなんでもしてやるぞ!!”
まーテンションの高いこと高いこと。
怒涛の勢いで「ガウガウッ!」喜びまくってた。
だよなー。そうなっちゃうよなー。
遠慮とか絶対しねぇタイプだもんなーお前って。
この後しばらく、シバ丸・シバ吉に全力ですりすりしまくって感謝の意を伝えてたぞ。
で、ひとしきり感謝を伝え終わると、のっしのっし俺の方に歩いてきた。
「ガウガウッ!」
”お腹空いた!早くご飯食べたい!”
そしてこの催促である。
マジでスゲェなこの狼。もちろん良い意味ではないが。
おーまーえーのーせーいーでー、遅れてたんだろうがよぉ!!
せめてもの腹いせに、首元目掛けてチョップを連打してみたが
「ガウッ!」「ガウッ!」「ガウッ!」「ガウッ!」と陽気なステップを4回踏まれたところで諦めた。
でもまぁ『すぐに飯を食う』って提案自体は大賛成だけどな。
ただ、念のためシバ達の確認をとっておこう。
「ホントによかったのか?」
「わふっ」
”半分こするだけだから、大丈夫です!”
「わふっ」
”みんな一緒の方が嬉しいです!”
シバ達がいい子過ぎてツラい。
思わず「俺も頑張って食い散らかすからな!」って、意味不明の宣言しちゃってたわ。
あ、宣言通りに色んな肉をかじりまくって
見事7切れの食い残し (シバ+狼兄弟分)を確保した事は、わざわざ書くまでもねぇよな?
シバ丸には2切れ進呈したぞ。
シバ丸は、嬉しそうにウィリアムの方に皿を掲げると
「わふっ」
”2枚もらったので、1枚どうぞ!”
「ガウガウッ!」
”ありがと!”
仲良く寄り添って肉をガブガブするシバ丸とウィリアム。
実に和んだ。
シバ吉にも、当然2切れ進呈したぞ。
シバ吉も嬉しそうにエドガーの方に皿を掲げて
「わふっ」
”1枚どうぞ!”
「ガウガウッ!」
”ありがと!”
仲良く寄り添って肉をモグモグするシバ吉とエドガー。
実に和んだ。
何だかんだとアクシデントはあったものの、
終わってみれば結構いい昼飯だったと思う。
つーか、シバの優しさが染み渡る昼下がりだったわ。
うわぁぁ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁ……ッ!!
・異世界4日目 15:50
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食後、狼兄弟が元気よく外に飛び出していった。
食後の運動かな?
一瞬「ペットだけで散歩に出すのはヤバいか?」と葛藤したが
その一瞬の内に姿が見えなくなったんで、止めようがなかった。
ま、まぁ、あの狼たちなら問題ない……よな?
ぶっちゃけ同じ家に住んでるBBAですら威嚇するレベルの人嫌いなんで、不用意な接触は死を招きかねない。けど疾走中のアイツらに干渉できる人間がいるとも思えねぇんだよな。
若干ドキドキしながら待つこと2分。
何とも形容しがたい巨大生物を咥えた狼さんたちが空から降ってきた。
ズゥゥゥン……。
軽く地響きが起っちゃうくらいデカい。ヒギャア。
狼兄弟は、口にくわえた巨大生物を庭に置くと
異口同音でこんなことを言い放った。
「ガウガウッ!」
”いっぱい持ってきてやるから、全部倒していいぞ!”
どうやらお肉のお礼として、更にペッポを貢ぐつもりらしい。
実に殊勝な心がけだ。
よしよしいいぞお前達。その心がけはいつまでも大事にして欲しい。
改めて庭に鎮座する巨大生物見てみた。
直後、その浅はかな行動を深く反省した。
うん。しっかり見ちゃダメな系のヤツだったわ。
より端的に表現するなら、チョー怖い。
でも飼い主として、ペットたちの雄姿は見ておきたい。
葛藤の末、念写を残すことにした。
ホラ、念写だったら一瞬目を合わせるだけでOKだからさ。
0.1秒くらいだったらギリ耐えれそうじゃん?
つー訳で。
俺の心が白き灰がちになりてワロエなくなるまで撮り続けた念写を紹介したいと思う。
あ、先に言っとくがグロ注意な。
耐性のあるヤツだけ付いてきてほしい。
では刮目せよ。
これが地獄だ。
[ラスボス①: 片手で地球を破壊できそう]
[ラスボス②: SAN値を根こそぎ奪われそう]
[ラスボス③: この世に存在する”おぞましいもの”をかき集めたらコイツになりそう]
[ラスボス④: 想像の遥か上の遥か上の遥か上のキモさ]
[ラスボス⑤: もうダメ]
うん。もうダメ。
5枚が限界だった。
心の中で”お前たち、頑張れ……ッ!”とエールを送りながら、フェードアウトさせてもらったわ。
その後も、しばらく庭先から”ズゥゥゥン……”って音が聞こえてたから、
狼兄弟は順調にラスボスを仕入れてきてたみたいだぞ。
あと、シバ達の『が、頑張るぞー……!』って声や
精霊さんの『なにこれー?ちょっと触っていい?』って念話なんかも聞こえてきてた。
パワーレベリングに励んだ食後だった。
うん……まぁ、詳細は一切知らねぇんだけどな。




