俺の日常にファンタジーが突き刺さってきた その22
■俺抜きでやってもらっていいッスかね?
・異世界4日目 14:40
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目的のブツも回収できたことだし
一刻も早く、このクッソ寒い水辺とおさらばしたいわ。
つー訳で。
「そろそろ帰るぞー」
ゆるんだマフラーを巻き直しつつ帰宅の号令をかけると、狼とシバと玉がついてきた。
うん。そう。
しれーっと玉もついて来た。
「お前、付いてくんの?」
どストレートに尋ねたら、激しくビガビガ光られた。
”当たり前じゃん!当たり前じゃん!”
大事なことなので2回ビガられた。
精霊さん激おこである。
まぁ、今のは俺の聞き方が悪かったな。
もっとマイルドに「付いてきてくれるの?」って聞くべきだったわ。
精霊さんだったら普通にウェルカムだぞ。
七草の件では世話になったしな。
今度はこっちがもてなす番だろJK。
とか考えてたら、脳内アナウンスが流れた。
”精霊は土地を守護する存在の為、連れ出すことはできません。”
ダメだった。
どうやら精霊というのは土地神様的な存在らしく、お持ち帰り禁止らしい。
ちらりと精霊さんを見ると、無光のままワナワナ振動していた。
どうやら精霊さん本玉も『テイクアウト不可』のルールを知らなかったらしい。
あー……なんつーか、残念だったな……。
短い付き合いになっちまったけど、どうか達者で暮らしてくれよな。
七草粥作ったら、お供えがてら遊びに来っからさ。
そん時はまた一緒に遊ぼうな。
サクッと別れを告げたところ、精霊さんがビッカーッ!!と光り輝いた。
”ヤァァァァダァァァァァ!!”
まさかの大反抗だった。
直後、精霊さんの周囲でバリンッとガラスが割れるような音が響いた。
さらに精霊さんが叫ぶ。
”一緒に行くのぉぉぉぉぉぉ!!”
それに併せて、今度はバリンッバリンッと連続で破砕音が鳴り響いた。
そして始まる大論争ですよ、大論争。
”精霊は土地を守護する存在の為、連れ出すことはできません。”
”ヤダァァァ!!”
”精霊は土地を守護する存在の為、連れ出すことはできません。”
”一緒なのぉぉぉぉ!!”
”精霊は土地を守護する存在の為、連れ出すことはできません。”
”パパァァァァ!!”
いや、パパじゃねーし。
そうこうしてる間にもバリンバリンッと響く音は増え続け
”精霊は土地を守護する存在の為、連れ出すことはできません。”
”…………”
”精霊は土地を守護する存在の為、連れ出すことはできません。”
”…………”
”精霊は土地を守護する存在の為、連れ出すことはできま――――”
”どっせい!”
ガッシャーンッ
ひときわ大きな破壊音が鳴ったかと思うと
それまでバリンバリンッと鳴り響いていた破砕音がピタリと止まった。
多分、精霊さんが何かしたんだと思う。こわい。
”よっしゃ!どんなもんじゃーい!”
そしてこの勝どきである。
テンションが上がりすぎたのか、高速で八の字飛行とかしてた。
”ヤッたよパパ!”
いや、パパじゃねーし。
あと「ヤッた」ってニュアンスは止めろ。
突然、脳アナさんが沈黙した理由を邪推しちゃうだろ。
物騒な漢字を当てはめちゃうだろ。
そんな不謹慎な事を考えてると
”ギ、ギリギリセェェェフ!!しゃおらぁぁぁぁ!!!”
唐突に、脳内アナウンスが鳴り響いた。
いや、アナウンスっつーか、魂の叫び?生きる喜び?
まぁ、元気そうでよかったわ。
生還おめでとうなー。
心から賛辞を送ったが、脳アナさんはそれどころじゃないみたいだった。
ヤツは明らかに様子がおかしかった。
”な……ッ!これは……ッ!?”
とか
”そんな……ッ、バ、バカな……ッ!?”
とか
実に不穏だった。
そして嫌な予感がした。
だってこんなもん、どう考えたって面倒事が始まるフラグじゃん。
気を許し方最後、ガッツリ巻き込まれる系のアレじゃん。
あ、結論から言うと
もちろん絡まれたぜ!!
ハイ、知ってたぁぁぁぁ!!予定調和ぁぁぁぁぁ!!!チクショーがぁぁぁ!!!!!
脳アナさん曰く。
”貴方が何とかしてください。この地に留まるよう説得してください”
との事らしい。あきらかな丸投げだった。
いや、知らんがな。
俺にどうしろってんだよ。
そう憤った俺は悪くないと思うんだ。
だって、精霊さんとは今日初めて会ったんだぞ?
流石に荷が重いってーの。そもそも俺には関係ねぇじゃん。
話があるなら、さっきみたいに直接本玉と話せばいいじゃん。
俺を経由するな。声と玉で仲良くケンカしてろや、まったく。
思わずグチる。
その0.05秒後に、脳内アナウンスが流れた。はやい。
”貴方が何とかしてください。この地に留まるよう説得してください”
おう、壊れかけのレイディオやめーや。
つーか、何回リピートしたって無駄なんだよ。そんなゴリ押しに屈する俺じゃねぇからな。
この後、5分くらい壊れかけのレイディオされて心が折れた。
ふぇぇぇぇぇぇ……うざいよぉぉぉ……。
脳内直接叩き込まれるから、防ぎようがないよぉぉぉぉ……。
わかった。わかったからリピートやめろ。
伝えるだけ伝えてみるから、いい加減勘弁しろ。恥も外聞もなく泣くぞ。
その途端、ピタリと止まる壊れかけのレイディオ。
まぁ殺意沸いたよね。
その上”可及的速やかにお願いします”と急かしてきやがった。
まぁ殺意増したよね。
でも、約束は約束だからな。
甚だ不本意ではあるが、メッセンジャーの役割を果たすことにした。
八の字飛行中の精霊さんに声をかけると
”なにー?”と光りながら、すいーっと近寄って来てくれた。
「あー……言いにくいんだけどな」
”どしたの?”
「ほら、ここを離れちゃダメって話してたじゃん?」
”わかった!”
ん……?
まだ何も言ってないんだが。
まさかの了解だった。
そして、この直後に事件が発生したのだった。
キュイーンという音をを立てながら、徐々に膨張していく精霊さん。
ハンドボールくらいまで大きくなると、ベッカーッ!と目を焼くような強烈な光を放ち始めた。
”どっせい!”
”なッ……!?これ以上は流石に……ッ!?”
”どっせい!!”
”ちょっ……!止め……ッ!シャレにならな――”
”どっせーーーーいっ!!!”
”あ――”
怒涛の”どっせい三連打”により、脳アナさんが完全に沈黙した。
いつの間にやらソフトボールサイズへと戻っていた精霊さんは
上機嫌な様子でピカピカと光っていた。
”これで大丈夫!”
ヤダ……この子怖い。
”それじゃ帰ろ!パパ!”
いや、パパじゃねぇし。
この後、普通に皆で帰宅した。
尚、いまだに脳アナさんの元気な声は聞けていない (真顔)
■おい狼、そういうとこやぞ
・異世界4日目 15:00
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「ただいま」
「あら、おかえりなさい」
玄関のドアを開けた途端、BBAとエンカウントした。
尚、槍は持っていない模様。
おいおいどうした。具合でも悪いのか?
命を貫く形状の相棒はどうしたんだ?
と、思わず心配しちまったが
よくよく考えてみると、槍持ってない状態の方が正常だって事に気が付いた。
普通、BBAは、槍、持たない。
だがしかし。
分かっちゃいるんだが、やっぱ何かが物足りない。
例えるなら、メガネを掛けてないメガネッ娘を見たときの感覚っつーの?
あるべき場所にあるべきものが存在しない違和感っつーか、圧倒的コレジャナイ感っつーか。
それもこれも、BBAの槍イメージが強烈すぎるせいなんだよな。
槍デビューからまだ数日しか経ってねぇのに、確固たる槍キャラを築き過ぎなんだよコイツは。
まさに生粋の槍修羅BBA。
命を貫きし鬼の化身。
とか考えたたらBBAに肩を掴まれた。
産まれてきてごめんなさい。
ちょっとしたおふざけだったんです。
本気でそう思ってた訳じゃないんです。
だからどうか堪忍してつかぁさい。
そんな俺の切なる祈りが天に届いたのかどうかは定かじゃないが
お母様は槍を召喚することもなく、厳かな口調でこうおっしゃった。
「で、七草見つかった?」
何だよ。そっちの要件だったのかよ。ビビッて損したわ。
全身からドッと力が抜けた感じがした。
「どうだったの?」
愚問だわ。
俺を誰だと思ってる。
当然、むしり取ってきたに決まってるだろうが。
胸を張り、大きな声で言ったった。
「あぁ、全種類見つけてきてやったぞ」
「よくやった」
戦国武将かよ。
いくら何でも労い方が無骨すぎる。
でも俺は、賢い男なので言い返したりしないのだ。
ここで反論しちまうと、BBAから物足りなさが消える可能性があるからな。
触らぬ神に祟りなし。
【まほうのかばん】から、適量の七草を取り出してBBAに手渡した。
「それじゃ、すぐに作るからちょっと待ってなさい」
そう言い残して物置へ向かうBBA。
鍋用の土鍋で、じっくりコトコト作るらしい。
粥だから低火力のカセットコンロでも大丈夫なんだと。
「そういえば、土鍋、どこにしまったかしら……?」
「そんくらい先に用意しとけよ」
「まさか、ホントに摘んでくるなんて思わないでしょ」
だよなー。俺もそう思う。
でも、そういうのは俺の居ないところで口にしろや。
クソ寒みぃ中、ヒィヒィ言いながら探して来たんだぞ。
ツンクールBBAもいい加減にしねぇと、マジで泣くぞクソが。
ペットたちを見ると、ウィリアムが若干ぐでぇってなってた。
かなり腹ペコらしい。
って、もう15時半回ってるのか。
そら腹も減るよな。気づかなくて悪かったなお前ら。
どう考えても、粥を待ってる余裕はねぇ。
つー訳で、先にペットたちの昼飯を焼く事にした。
あ、でもその前にMP (?)残量を確認しとかねぇとな。
調子に乗って【暖房】魔法をガンガン使いまくったら、速やかにガス欠したからな。
おかげで、その後の散歩の寒ぃこと寒ぃこと。
まぁ、ガス欠してからは魔法使うのガマンしてたし
そろそろ回復してると思うんだが……。
さて、どんな感じかね?
試しに【暖房】の魔法を使ってみたらほんのりと暖かくなった。
よっしゃ、いい感じ。
この調子なら大丈夫そうだな。
「肉焼くぞー」と声をかけると、ペットたち全員が舌を出して「ハッハッ」って言い始めた。
期待のこもったキラキラした視線がまぶしいぜ。
こんな時間まで待たせて悪かったな。
MPが続く限りいくらでも焼いてやるから、たらふく食ってくれよな!
早速【料理魔法】を発動し、肉を焼き始めた。
すると
「ガウガウ!」
”次、オレだぞ!”
「ガウガウッ!!」
”ダメ、次もオレだよ!”
お互いに向き合い”ガルルルッ”といがみ合う狼兄弟。
「わ、わふー」
”オ、オレたちの番だったらいいなー”
「わふっ」
”ちょっとでいいから欲しいなー”
シバ達は、ギュッと身を寄せ合ってひそひそと話し込んでた。
焼き上がる前から、肉の取り合いをしているのかって?
いいえ、彼らが取り合ってるのは僕の食い残しです。
予想はついてたが、やっぱり今回も狙われたわ。
いやー。ペットたちに愛されすぎちゃって困るわー。うへへ。
あ、もちろん次はシバ達の番だぞ。
つー訳で、狼兄弟はステイだぞ (無慈悲)
念の為、今のうちに釘も刺しとこう。
おい、そこでメンチ切り合ってる狼兄弟。
メインターゲットはお前達なんだから、ちゃんと聞いとけよ。
狼兄弟 (主にウィリアム)を見つめた。
すると、俺の視線に気づいたウィリアムがのっしのっしと近づいてきた。
「ガウガウッ!」
”何なにー?”
注目されてゴキゲンなウィリアムたん。
そんなウィリアムたんに向かい、俺は無慈悲に釘をブッ刺すのであった。
「順番だぞ順番」
そう告げた途端、ソッコーで目を逸らすウィリアム。
あざとい。
ちなみにエドガーも「?」って顔しながら、ウィリアムの真似して目を逸らしてた。
まねっこエドガーたん。実に可愛いかった。
「順番だからな?」
更にブッ刺すと、今度は耳をペターッと折り畳みやがった。
あぁ、完全にお耳を寝かせたウィリアムたん、チョー可愛い。
っていかんいかん。そんな事してもダメだぞ。
その状態でも絶対聞こえてるだろお前。騙されんからな。
ちなみにエドガーも「?」って顔しながら、ウィリアムの真似して耳をペターッと折り畳んでた。
んで”オレの耳、ペターッってなった!”って俺に見せてくれた。すごく可愛かった。
「じゅ・ん・ば・ん・だ・ぞ?」
更に更にブッ刺してみると、とうとうソファに顔をツッコみやがった。
実に粘るな君は。だがその努力、無意味だ。
ちなみにエドガーは、完全に何かの遊びと勘違いしたらしく、大はしゃぎしながら”オレもー!”と、ソファに突き刺さっていったぞ。そうまるで弾丸のようにな。
きゃわいい上に勇ましいかった。
そうこうしてるうちに、頭数分の肉が焼き終わったんで
俺、ウィリアム、エドガー、シバ達の順番に配膳して、飯の準備が完了した。
「おーい、メシ食うぞー」
ソファに突き刺さったままの狼兄弟に声をかけた。
すると。
「ガウガウッ!」
”兄ちゃん、ご飯だって!”
「がう……」
”うん……”
「ガウガウッ!」
”どーしたの兄ちゃん!早く行こ!”
「がう……」
”うん……”
「ガウガウッ!!」
”はやく!はやくー!”
「がう……」
”うん……”
「ガウーッ!」
”もーっ!”
と、ここでエドガーたんがしびれを切らせたらしい。
ウィリアムに向かって結構エグ目の攻撃を仕掛け始めた。
ズガッ
バキッ
ドガッ
バスッ
それでも兄は動かない。
…………。
あ、あのー。もうそろそろ諦めてくれてもいいんじゃないッスかね?
ウィリアムさん?
エドガーの攻撃が更にエグ味を増した。
ズガンッ
バキンッ
ドガガッ
バスンッ
それでもやっぱり動かない。
……………………。
ウィ、ウィリアムさん?
ウィリアムさーーーーーーん!!




