↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法使いの魔法書  作者: 碧衣 奈美
第一章 大魔法使いの子孫と三人の竜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/35

11.カードの勝者

「魔法使いの部屋へ入って来て、最初に窓ガラスに注目する奴もいないしねぇ。こういう場所なら、本や道具類に目が向けられるものだし。オレ達だって、さっきまでそうだった。見えない、と言うよりは見てなかったな」

「魔法がかけられた物を調べはしたものの、窓そのものに細工されているとは気付かなかったんだね。反応があったことはわかっても、ここはライオストーンの部屋だから、反応があっても当然だと考えたんだ」

 サンシュコートのメモにもあった。

 ライオストーンの部屋だから、彼の魔法がかかった、もしくはかけられたことがある物ばかり、と。

 窓ガラスからライオストーンの魔法が感じられても、近くに魔法道具などがあったりして、それのせいだろう、などと思われていたのだ。

「リルレイアに転ぶくせがあって、助かったよなー」

「ガ、ガイ! くせじゃないもんっ」

「自分でそう思ってるだけじゃないか?」

 リルレイアの抗議も、ガイは笑いながらさらっと受け流す。

「きっと、他の奴らは薄氷の上を歩くみたいに、慎重にやってたんだぜ。おかしなことをして壊したら、大変だからな。リルレイアみたいにそそっかしい奴は、部屋から放り出されてたんじゃないか?」

「ガイ、リルのおかげで糸口が見付かったんだから。彼女の過失は、起こるべくして起きたんだ」

 ジンのフォローも、あまりフォローになっていないように聞こえる。

 彼らの前ではすでに何度もどじをやらかしているので、リルレイアは強く反論できない。

「もう……それよりもっ」

 このままでは自分がからかわれ続けそうなので、リルレイアは強引に話を戻す。

「ねぇ。それじゃあ、魔法書はそこに隠されてるってこと?」

「さぁ、どうだろうな」

 ガイは軽く肩をすくめた。

「え? だって」

 明らかに怪しい場所なのに。

「ここには、何度も魔法をかけられた痕跡が見当たらない。日記の言葉を素直に読むなら、魔法書には複数回の魔法がかけられてるみたいだからな。俺達が探している魔法書、という可能性は高くない。実は全然関係ない物、だったりもするぜ」

 しかし、割れないガラスに何か隠されてるのは事実ではないのか。ここで隠されていると言えば、魔法書以外に考えられないはずだ。

 リルレイアはガイの言葉に首をひねるしかできないが、ヴィズもジンも「魔法書が見付かった」とは一言も口にしていない。

 つまり、彼らも「見付かった」とは思っていないのだ。

「まぁ、この窓ガラスに隠されてるのが何かはともかく……どうする? やりたい奴っ」

 ガイの言葉に、ヴィズとジンが手を上げる。もちろん、ガイも。

「よし。ヴィズ、いつものな」

 リルレイアは三人について行けず、横できょとんとしながら見ている。

 な、何? 何が始まるの?

 三人は完全に窓ガラスそっちのけで、輪になった。

 ヴィズが宙から三枚の白いカードを出し、それを目に見えない速さでシャッフルさせる。ジンが「ストップ」と声をかけると、カードはヴィズの前で横一列に並んだ。

 リルレイアには、宙で並ぶカードの動きが、まるで何かの生き物にも思える。

 その中から、ガイが真ん中の一枚を手に取った。次にジンが一枚、最後に残ったカードをヴィズが取る。

「勝負!」

 三人同時に、カードを返す。ガイの持つカードに、赤い星マークがついていた。

「よっしゃあっ、俺の勝ちーっ」

 ガイは嬉しそうに拳を上げ、残りの二人は「あーあ」と言いながら自分の持っていた白紙のカードを宙に弾いた。カードは床に落ちる前に消える。

「あの……何やってるの?」

「ん? ガラスにかけられた魔法を誰が解くか、決めてたんだ。で、俺の勝ち」

 嬉しそうに、マークのあるカードをリルレイアに見せるガイ。

「早い話、くじ引きしてたってこと?」

「ああ。これならケンカにならないからな」

 ヴィズがカードを出してシャッフルし、ジンが好きな時に止める。何も手を出さなかったガイが一番にカードを引き、カードを出したヴィズが最後に引く。

 三人の中で誰かを選ぶ時、公平になるように決めたルールだ。これで恨みっこなし。

 二人の時はコイントスで決められるが、三人ならいつもこの方法で決めているのだ。

 魔法は使い方次第で色々なことができるが、こんな遊びのようなことまでできるなんて、リルレイアは知らなかった。

「窓ガラスの魔法を解くのに、どうしていちいちくじ引きなんてするの? そんなの、誰でもいいじゃない」

 リルレイアにすれば、一番近くにいた人がやればいいではないか、と思う。

 この三人の誰がするにしろ、竜と呼ばれる魔法使いなら簡単かつすぐに終わるはずだ。

「リルにとっては、先祖の一人ってだけかも知れないけどね。オレ達にすれば、ものすごい人の魔法に関われる、またとないチャンスなんだ」

「チャンス?」

「ぼく達だって、最初から魔法ができた訳じゃない。先生に教えてもらったり、魔法書を読んで勉強したんだ。その魔法書で、一番影響の大きい人がライオストーン。雲の上の人って感じかな。その彼がかけた魔法に直接関われる機会が来るなんて、考えてもみなかったからね」

「今は本当に雲の上の人、だよな」

 ガイが茶々を入れ、ジンに肩をはたかれる。

「そんなもの……なの」

「うん、そんなものだよ。亡くなって長い年月が経っているのに、その人の魔法に触れられる。遺跡や何かの魔法ならともかく、こういうことはまずできっこない体験だよ」

 そう話すヴィズはもちろん、ジンやガイもうなずいている。

 ライオストーンは偉大な魔法使いだ、というのは、リルレイアも幼い頃から聞かされていた。こんなすごい先祖がいたんだよ、と。

 セレカティアに入る前も入ってからも、その名前を見聞きしない日はないくらいだ。

 確かに「すごい人なんだ」とは思っても、リルレイアにとっては身内。ライオストーンを初代とすれば、リルレイアは十三代目だ。

 当然ながら会ったこともないし、直系ではあっても、遠い親戚のような感覚しかない。すごいという知識はあっても、実感が伴わないのだ。

 しかし、彼らにすれば。

 憧れの魔法使いに会えるような感覚に近いのだ。

 かつてライオストーンが住んでいた家を外から見るくらいなら、そんな感慨深くはならない。だが、中へ入れるとなると……。

 しかも、彼が使っていた部屋へ入れるなんて、大チャンス以外の何者でもない。さらに、本人がかけた魔法に関われるなんて、一生に一度あるかないかだろう。

 表面では、どこかに手掛かりがないか、と冷静にあちこちをチェックしていた。しかし、内心では彼らもかなり舞い上がっていたのだ。

 そのことに、リルレイアはようやく気付いた。

 さっきのカードでも目を輝かせていたし、外れた時の顔は本当に残念そうで。年長者で一番落ち着いて見えるヴィズでさえ、子どもみたいだった。

 まるで兄弟がおやつを賭け、勝ち負けを競っているような。

「ってことで、今回は俺な。けど、二人にも絶対、順番は来るはずだぜ」

「だといいなぁ」

「ぼくも期待はしているけれどね」

「とにかく、まずは俺から」

 本当に残念そうな二人を横目に見ながら、ガイは窓へと近付いた。

 どういう角度から見ても、ガラスは透明な普通のガラスでしかない。今日、竜の三兄弟が来るというので、リルレイアが昨日拭き掃除しておいたのできれいなものだ。

 窓は二枚一組の、開き窓タイプ。一枚が木枠で八つの正方形に区切られ、透明なガラスがはめ込まれていた。

 件(くだん)のガラスは、右側の窓の右下にはまっている。

 ガイは大きく息をつくと、そのガラスに手をかざした。

「フーウエカリヒ」

 低い声で解呪を唱える。ガラスの表面で、ぱちっと光の粒が跳ねた。音と光に驚いたリルレイアの肩が、わずかに震える。

「やっぱり、手抜きはしてないな。大魔法使いってのも、伊達じゃないってことか。生きてたら、竜王なんて呼ばれてるんじゃないか?」

 一旦手を引きながら、ガイはそんなことをつぶやいた。

 レベルの高い魔法使いを「竜」と呼ぶようになったのは、ここ百年ほどのこと。ライオストーンが生きていた頃にそういった呼称があれば、ガイが言うように「竜王」などと呼ばれていたかも知れない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i000000 (バナー作成:相内 充希さま) (バナークリックで「満月電車」に飛びます)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。