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勇者落第、魔物清掃員29歳。〜異世界の呪物を回収してたら「魔神」になったけど、正体を隠して新人勇者からやり直します〜  作者: 仁胡 黒


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第9話:深層の咆哮、守るべきは…?

いつも応援ありがとうございます!

今回は、新人勇者一行が最大の危機を迎える第9話をお届けします。

ルミがゴーレムの攻撃を受け、絶体絶命の窮地! ルミを護るため、ついにケンジがその力を全解放し、その姿を目撃したルミの心に変化が……。


【異世界:聖教国 ダンジョン・中層】

 勇者ギルドから下された任務は、ダンジョン下層の「魔力異常」の調査と鎮圧。新人勇者である俺たちだけで挑むには十分すぎる難易度だった。

「ねえ、他の新人勇者と一緒ならまだしも、どうしてこのおじさんと一緒なの?! ありえないんだけど」

 ルミが細剣を鞘に納め、これ見よがしに溜め息をつく。

「さっきから『掃除』だの何だのと呟いて、結局のところ、ただの足手まといだし、罠の解除も索敵も、全部私がやってるんだから。…変な動きして邪魔だけはしないでよね」

「わりぃなルミ。足を引っ張らないよう気をつけるからさ」

 俺が苦笑いして防護服を整えると、彼女は「ふん!」とそっぽを向いた。

 だが、その剣技は本物だ。次々と現れるスケルトンを「このくらい楽勝よ!」と軽やかに駆け抜け、一振りで瓦礫の山へと変えていく。最短ルートで突き進むその背中を、俺たちは必死に追いかけた。

      ◆

【異世界:ダンジョン・最下層】

 最下層の空気が凍りついた。

 そこにいたのは、『獄炎のゴーレム』。全身を紫の結晶が覆い、禍々しい魔力を放っている。

「な……っ!? これ、どういうこと…!?」

 ルミが剣を構えるが、その手は震えていた。ゴーレムが巨大な頭を向ける。

「オ、オロカナ、ニ、ニンゲン……ワレハ、マジン…ナリ。スベテ、ホロビヨ…」

 その言葉と共に、ゴーレムが放った巨大な炎の塊がルミを直撃した。

「きゃあああっ!?」

 防御障壁が一瞬で粉砕され、ルミは吹き飛ばされる。壁に叩きつけられた彼女は、頭部を強打し、そのまま意識を失って崩れ落ちた。

「ルミさん!? 嘘だろ……!」

 マナトが駆け寄ろうとしたが、ゴーレムの次なる炎がマナトの行く手を阻む。

「ぐあぁあああ!」

 マナトもまた吹き飛ばされて床を転がる。俺は即座にマナトを庇い、ゴーレムの正面へ立った。

(凛に隠れてきたが、もう限界か)

 俺は鍵を解放した。ドォォォォンッ!!

 ダンジョンを揺るがす衝撃波の中、俺はゴーレムの懐へ飛び込む。

「どうにでもなりやがれぇーー!」

 一撃で核を砕き、魔神ゴーレムは霧となって爆散した。

 静寂が訪れる。

 その時、倒れていたルミの意識がわずかに浮上した。薄れる視界の中で、彼女は見た。紫色の粒子に包まれ、先ほどまでの「頼りないおじさん」とは別人のような、圧倒的な力で立ち尽くすケンジの背中を。

(……え……? あんなの、人間じゃない……でも……)

 ケンジが振り返り、倒れたマナトを抱き起こす。

「ケンジさん…この力、それに目が紫色に光ってますよ!?…さっきの魔神のような……」

 ケンジは少しバツが悪そうに頭をかき、呟いた。

「あー、まー、なんだ…。ちょっと魔神の力を身体に取り込んじまったみたいでな?」

「えっ?!…大丈夫なんですか? ちゃんと見てもらったほうが…」

「いや、…このことは黙っていてもらえるか?……たぶんバレたら処分される。下手すりゃ解剖だ」

 マナトは息を呑む。ケンジの真剣な眼差しを受け、決心したように力強く頷いた。

「わかりました。…こうなったら墓まで秘密を持ってきますよ!」

「サンキューな…」

 ケンジはそう言うと、傍らで意識を失っていたルミを優しく抱き上げた。

「う…、うーん」

 ルミがぼんやりと目を開ける。自分の状況を理解した彼女は、反射的に顔を真っ赤にした。

「ななな……ッ、なんであんたが私を抱っこしてるのよ!」

 ルミは気力だけで抗議したが、先ほどの圧倒的な光景は彼女の網膜に深く焼き付いていた。

「安心して寝てろ、もう敵はいない」

 (あれ…このおじさん、こんなにカッコよかったっけ…?)

 彼女は隠しきれない心拍数の高鳴りとともに、ケンジの胸元で再び安堵の闇へと落ちていった。

第9話をお読みいただきありがとうございました!

ルミのツンデレ全開なセリフと、ケンジの背中に心を奪われてしまう可愛さを意識しました。

クールな少女がケンジの前でだけ見せる慌てた姿、いかがでしたでしょうか?

次回、第10話はケンジの正体への疑惑と、ルミの密かな感情の動きとなります。

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