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勇者落第、魔物清掃員29歳。〜異世界の呪物を回収してたら「魔神」になったけど、正体を隠して新人勇者からやり直します〜  作者: 仁胡 黒


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第27話:嘘のない真実、勇者の矜持。

いつも応援ありがとうございます!

管理官ゼノンに対し、過去を隠すのではなく「誇り」として真っ向からぶつかるケンジ。

清掃員としての経験を、勇者としてどう昇華させるのか?

レオも驚く、ケンジの勇者としての矜持を描く第27話です!

【異世界:地下迷宮『静寂の揺り籠』最深部】

 迷宮の冷たい空気の中で、ゼノンの視線が俺の心臓を射抜くように突き刺さる。

 管理官ゼノン。一番隊を束ね、魔神を屠る力を持つ男。彼が拍手を止め、ゆっくりと距離を詰めてくる。その一歩一歩が、迷宮の緊張をより鋭いものへと変えていく。

「単なる新人ではあるまい……佐藤ケンジ。今の『解体』、魔神の核さえも部品のように扱うその手際は、訓練を受けた勇者のそれではない」

 ゼノンの問いに、俺は魔導銃を腰に戻し、真っ直ぐに彼の瞳を見返した。

 誤魔化す必要はない。俺は今、勇者だ。そして、俺の力は確かにかつての経験から来ている。それを恥じる理由も、犯罪のように隠す理由もどこにもない。

「私は勇者になる前、長年『清掃員』として現場に立ってきました。魔物の解体や中和、それが私の長年の仕事です」

 俺の声は震えていなかった。

 ゼノンは少し意外そうな表情で俺を見る。俺は続けた。

「現場で死体や呪物を片付け、必死に世界を綺麗にしてきた。その中で培ったのは、ただ破壊するだけではない『魔物の弱点を見抜き、安全に処理する技術』です。今の私の力は、かつてのその泥臭い現場仕事の積み重ね。……これを誇りに思っています」

 それは紛れもない真実だ。

 ケンジという人間が、勇者の道を諦めず、影で世界を支え続けた証そのものだったからだ。

「氷室チーフの試作品を使いこなしているのも、彼女の技術を現場で最も効率的に活かせるのが自分だと自負しているからです。私は勇者として、戦場で被害を最小限に抑え、確実に魔物を無力化するためにこの力を使っている。……それが、私の勇者としてのあり方です」

 沈黙が流れる。

 ゼノンはしばらく俺を見つめていたが、やがて小さく肩をすくめた。

「……なるほど。貴様のその異常なまでの処理能力は、執念めいた『職人の矜持』というわけか。美徳とは言い難いが、否定する理由もないな」

 ゼノンはそれだけ言い残すと、足音もなく闇の中へ消えていった。

 彼が去った後、俺は肩の力を抜いた。嘘を吐いてまで自分を守る必要はない。俺は清掃員だった。そして、今は勇者だ。その両方の誇りが、俺を支えている。

「……ケンジさん、今の対応、驚きました。清掃員だった過去を、堂々と誇れるなんて」

 マナトが感嘆の声を漏らす。

 レオは沈黙していたが、その視線には先ほどのような不信感ではなく、何かを探るような深い関心が宿っていた。

「自分の過去を隠さず、今の力として認めるか……。佐藤、貴様の『勇者』としての歩み、少し興味が湧いてきた」

 レオは背を向け、迷宮の奥へと歩き出す。

 ルミが俺の袖をギュッと掴み、少しだけ頬を染めながら俺を見上げた。

「……カッコいいじゃない。あんたって人は、本当に……!」

 俺はルミの頭を軽く小突いて、迷宮の奥――魔神の墓標へと目を向けた。

「さあ、行くぞ。楔を回収して、こんな場所はさっさと終わらせよう。俺の仕事は、まだ終わってないからな」

 清掃員としての誇りを胸に、俺は勇者として前を向く。

 地下迷宮に漂う澱みさえも、今の俺なら「綺麗に」掃除してみせられる気がした。


第27話をお読みいただきありがとうございました!

いよいよ予選突破のクライマックスへ。

複数作品を書いてますのでもしよろしければ、評価やブクマで応援いただけると、こちらの作品を優先して進める目安になるので推してくだされば幸いです!

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