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勇者落第、魔物清掃員29歳。〜異世界の呪物を回収してたら「魔神」になったけど、正体を隠して新人勇者からやり直します〜  作者: 仁胡 黒


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第21話:窮地の共闘、その背中が映す「正体」

いつも応援ありがとうございます!

予選会場に現れた異形の怪物『カース・イーター』に対し、絶望的な状況に追い込まれるレオ。

ケンジは自身の正体を隠しながら、清掃員としての圧倒的な技術でレオを導く!

極限の状況下で芽生える「禁断の共闘」。果たして二人は、森を喰らう怪物を撃破できるのか?

緊迫の第21話、開幕です!

【異世界:聖教国 禁忌の森・深部】

 地割れと共に現れたのは、予選の難易度を遥かに逸脱した「異形」。それはワイバーンの死骸に森の呪力と魔素が融合し、醜悪な肉塊へと再構築された『呪怨の生贄カース・イーター』だった。

 全身を硬質な呪石で覆い、手足は刃物のように鋭い。何より、周囲の魔力を根こそぎ吸収する「拒絶領域」を纏っているため、普通の魔術や物理攻撃は霧散してしまう。

「な……なんだ、あれは。予選の対象魔物じゃない……っ!」

 これまで余裕を見せていたレオが、初めて剣を取り落とさんばかりに後退りした。彼の聖剣の光すら、その異形の怪物が放つ闇に呑み込まれている。

 マナトとルミも凍りつき、武器を構えるのが精一杯だ。

「……っ! レオさん、下がってください! アレは、今の僕らの攻撃じゃ通じない!」

「くそっ、これじゃ剣が……剣が折れるッ!」

 レオが絶望的な一撃を放つが、異形は鼻で笑うようにその衝撃を吸収し、逆にレオを吹き飛ばした。巨体が空中で弧を描き、無防備な状態で地面に叩きつけられる。

 カース・イーターの鋭い刃のような腕が、地面に転がるレオを貫こうと振り下ろされた。

「……チッ。手のかかる坊っちゃんが」

 俺は舌打ちをし、魔導銃を最大出力の「解体モード」へと切り替えた。

 ここで正体を明かすわけにはいかない。しかし、このまま全員が全滅すれば、そもそも「新人勇者」としての生活そのものが終わる。

「マナト、ルミ! あいつの関節、右腕と左足の付け根だ! そこを狙って結界の圧力を一点に集中させろ! 俺が中和弾を撃ち込むための隙間を強制的に作る!」

「えっ、でも、そんな連携……!」

「俺の背中を見ろ! 俺が合図を出した瞬間に撃つんだ!」

 俺は森を駆け抜けた。その動きは、先ほどまでの「凡庸な新人」の足取りではない。魔神としての身体能力を極限までセーブしつつ、清掃員時代に幾千もの死体と向き合って磨き上げた、獲物の構造を見抜く精密なステップ。

 カース・イーターの攻撃を紙一重で回避する。その風圧が頬を切り裂くが、俺は笑みを浮かべていた。

 見えた。その異形の呪石と呪石の継ぎ目、魔力が循環している「脆弱部」。

「今だ!」

 マナトとルミが放った結界が、カース・イーターの動きを一瞬だけ止める。

 その刹那、俺は魔導銃のトリガーを引いた。放たれたのは単純な魔力弾ではない。凛が開発した「高密度魔素分解溶液」を圧縮した弾丸だ。

 銃弾が異形の関節部に吸い込まれ、中から黒い霧となって爆発した。

 カース・イーターの右腕が、自重に耐えきれずにボロリと剥がれ落ちる。

「な……! あいつ、あの呪石の硬度を無視して……!」

 レオがその光景を見て、目を見開いた。驚愕と屈辱、そして、どこか理屈では説明のつかない「畏怖」が混ざった眼差し。

 しかし、異形はまだ倒れない。右腕を失った反動で狂暴化し、周囲の木々を薙ぎ払いながら無差別に魔力を吸い取り始める。このままでは森ごと崩壊する。

「ケンジさん! あれを見てください……!」

 マナトが指さしたのは、異形の胸部から突き出た「古い王家の紋章」だった。あれは先日の廃坑任務で見かけたものと同系統――かつて魔神が滅ぼした、ある王国の遺物だ。

 俺は確信した。こいつは予選の障害ではなく、誰かが意図的に「仕込んだ」呪いの発生源だ。

「……誰の差し金かは知らないが、掃除屋として見過ごせねぇな」

 俺はレオの傍らに降り立ち、魔導銃を肩に担いだ。

「レオ。あいつを倒すぞ。お前の剣の『光』を、俺の銃弾の『穴』に注ぎ込め。そうすれば、内部から崩壊する」

「……俺に指図するな、と言いたいところだが……今の俺には、それしか手段がないのか」

 レオは震える手で聖剣を握り直した。その瞳から傲慢さは消え、ただ一人の勇者としての必死な戦意が宿る。

「やるぞ、ケンジ……!」

 二人の勇者が、初めて呼吸を合わせた。

 禁忌の森の最深部で、俺たちの「予選」は終わり、真の「地獄の選別」が始まろうとしていた。

 その背後、森の外から――それを冷ややかな目で見守る影があった。

 ギルドの幹部の一人、あるいはレオの派閥の誰かか。

 この事件の裏には、俺の「魔神」としての正体を嗅ぎ回る、より深い思惑が潜んでいた。


第21話をお読みいただきありがとうございました!

レオの鼻っ柱をへし折るだけでなく、共に戦うことで彼の中に「ケンジという謎の男」への特別な感情が芽生え始めました。

そして今回、森の異変が単なる偶然ではなく「仕組まれたもの」であることが発覚。物語は一気にサスペンスの側面を強めていきます。

果たしてこの事態の首謀者は誰なのか? そしてケンジの正体はいつまで隠し通せるのか……?

次回、衝撃のラストを迎える予選の結果と、ライバルたちとの関係に大きな変化が訪れます!

面白かったらぜひブックマークや評価をお願いします!皆様の応援が、ケンジの「掃除」の活力になります!

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