第20話:深淵からの咆哮、レオの焦燥と清掃人の一手。
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ランキング選抜戦の予選会場、『禁忌の森』。
圧倒的実力を持つレオでさえ苦戦する強敵ワイバーンを、ケンジが清掃員の知見で鮮やかに処理する!
しかし、予選の難易度を遥かに超えた「異形」が覚醒し、森は生存を賭けた地獄へと変貌します。ライバルたちの思惑が交錯する、ランキング戦激動の第20話です!
【異世界:聖教国 禁忌の森・深部】
森の空気が、ドロリと淀んだ液体のように重くなる。
予選開始から数時間が経過し、勇者たちの多くが魔物の群れに足止めを食らい、脱落を余儀なくされていた。森のいたるところで、無情な強制送還の鐘の音が鳴り響いている。
その中で、上位に食い込んでいるのはやはりレオだった。
彼は森の中心部へと一直線に突き進んでいた。彼の放つ聖剣の輝きは、この汚染された森の呪力を切り裂くほどに強力だ。しかし、その輝きこそが森の奥深くに眠る「捕食者」――『呪纏いのワイバーン』を呼び寄せてしまった。
「くそっ、次から次へと……! これでは魔力核の回収どころではない!」
レオは舌打ちをする。彼の周囲には、ワイバーンが吐き出す毒霧に焼かれた木々が立ち並んでいた。力任せの突破は、確実に彼を消耗させていた。
その様子を、数キロ離れた地点から俺は冷静に観察していた。魔導銃のスコープ越しに見えるレオの戦いぶりは、剣技こそ一流だが、戦場の構造を全く理解していない。「力ある者は、力でねじ伏せればいい」という、エリート特有の慢心。それが彼を殺しかけていた。
「ケンジさん、レオさんの様子、かなりマズいっすね……。あのままじゃ、ワイバーンに囲まれて終わっちゃう!」
「ああ。アイツは剣の力で霧を払おうとしてるが、あれは逆効果だ。霧の中の魔素を刺激して、余計に毒性を強めてる」
俺はため息をつき、腰のポーチから特殊な薬剤の入ったカートリッジを取り出す。
ここから先は、俺の「掃除」の出番だ。
「マナト、ルミ。悪いが少し手を貸せ。あいつが派手に暴れてくれたおかげで、このエリアの魔素バランスが崩れちまってる。俺がワイバーンの『核』を撃ち抜くから、お前たちはその瞬間に解毒の結界を張ってくれ」
「えっ、レオさんを助けるんですか? あんなに嫌味を言われたのに?」
「別に助けるわけじゃない。あいつがあそこで自爆されると、森全体が誘爆して、俺たちの回収分まで台無しになる。ただの『効率化』だ」
俺はそう言うと、静かに引き金を引いた。
銃口から放たれたのは、破壊の弾丸ではなく、魔素を中和するための特殊なジェル状の魔弾だった。
直後、空を切り裂くワイバーンの咆哮が森に響き渡る。レオが絶体絶命の窮地に立たされた瞬間だった。
ワイバーンの巨大な爪がレオの背後に迫る。レオは剣を振るうが、その身体は毒に蝕まれ、一瞬動きが鈍る。
「くっ……ここで、終わるのか……っ!」
レオの瞳に、初めて「死」への恐怖が宿った。
その瞬間、俺の放ったジェル弾がワイバーンの喉元で炸裂した。強烈な化学反応が起こり、ワイバーンを覆っていた呪鎧が剥がれ落ちる。
「……今だ!!」
俺の合図と共に、マナトとルミが結界を展開し、森の毒霧を霧散させた。
眼前にさらされたワイバーンの「核」。レオは信じられないものを見る目で俺の方を振り返る。
「貴様……なぜ、俺を……」
俺はレオの問いに答える暇も与えず、魔導銃を構え直した。次の瞬間、俺は魔神の力をほんの一瞬だけ――誰にも気づかれないほどの短時間だけ解放し、超高精度の狙撃を叩き込む。
ワイバーンの悲鳴とともに、森が静寂に包まれた。
だが、安堵も束の間だった。
倒したはずのワイバーンの死骸から、異様な黒い液体が溢れ出し、地中へと浸透していく。森の地下にある「何か」が、ワイバーンの死をきっかけに目を覚ましたのだ。
足元が大きく揺れる。
森の地面が割れ、そこから立ち上がったのは、予選の難易度を遥かに逸脱した「異形」の魔物だった。
「……おいおい、マジかよ。これ、予選の敵じゃないぞ」
レオが呆然と立ち尽くす中、俺は冷や汗を流しながら銃を構え直す。
選抜戦は、ここから「生存を賭けた地獄」へと姿を変えた。
第20話をお読みいただきありがとうございました!
ついに動き出した「異形」。そしてレオのプライドをズタズタにするケンジの「掃除」スキル。
レオを始め、新人勇者たちとの絡みも今後増えていきます。特に、ケンジの技術を面白がるバルドやシノンといった「変わり者」たちが、物語のスパイスになっていく予定です。
果たしてケンジは、魔神の力を隠し通しながら、この絶体絶命の予選をどう生き残るのか? 次回、レオとの予期せぬ「共闘」が始まります。
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