第17話:仮面の下の断層、あるいは凪の前の嵐。
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一番隊での生活に馴染む一方で、副隊長サハクの鋭い観察眼がケンジを追い詰めます。
さらに凛からの極秘任務が舞い込み、ケンジは夜の街へと繰り出すことに……!
【異世界:聖教国 一番隊訓練場】
一番隊での生活にも、ようやく慣れが見え始めた頃だった。
だが、その「慣れ」こそが、俺にとって最大の危険であることを自覚している。訓練中、サハクが俺の背後でじっと剣筋を見守っていた。
「……ケンジさん。先ほどの魔物への対処、本当に素晴らしいですね。まるで、その魔物がどこに弱点を持っているか全て知っているかのような……いえ、解体手順を熟知しているような動きでした」
サハクの穏やかな口調には、一切の棘がない。だからこそ、その直球の洞察が心臓を冷やす。
「……いえ。サハクさんほどではありませんよ。ただ、ゴミ……いえ、汚れたモノを片付けるのは、昔からの癖でして」
「癖、ですか。なるほど。……ケンジさんは、ご自身の力を『清掃』と呼んでいらっしゃいますが、その技術は、戦場においては『救済』そのものです。隊長も、あなたのことを一目置いていますよ」
彼はそう言って微笑むと、そのまま去っていった。
背中から感じる視線に、冷や汗が伝う。一番隊の副隊長は、ガドル隊長の荒々しさとは違う、静かな執念を持って俺を観察している。
その夜。マナトとルミと共に、街の外れにある安酒場で休息を取っていた。
「……あーあ。ガドル隊長の訓練、マジでしごきがキツいっすね。ケンジさん、よくあんなに平然としていられますね?」
「まあ、清掃員の頃はこれより酷い労働環境だったからな……」
「そう言えば、ケンジ。あんた……凛っていう知り合いがいるのよね? さっきから端末に何度も通知が来てたわよ」
ルミがジト目で俺の手元の端末を指差す。
画面には、凛からの無慈悲なメッセージが点滅していた。
『ケンジ。次の任務よ。ギルドの監視網を回避して、聖教国地下にある「古い遺物」を回収してきなさい。それが今のあなたの正体を守るための、唯一の隠れ蓑になる』
俺はため息をつき、グラスの酒を一気に飲み干した。
「……また、面倒な仕事が舞い込んだらしい」
「えっ、仕事ですか? なら僕たちも行きます!」
「……いいよ、マナト。これは俺の……個人事業主としての、ちょっとした『掃除』だから」
店を出ると、夜空には薄く紫色のオーロラが揺らめいていた。
魔神の残滓が、街の地下深くにまで浸食している。一番隊の守護をすり抜け、俺はたった一人、闇の中へと消えていった。
第17話をお読みいただきありがとうございました!
ケンジの正体を疑いつつも、穏やかな態度で距離を詰めるサハクの不気味さを表現してみました。
また、一番隊の監視をかいくぐって任務をこなすという、スパイのような展開へシフトしていきます。
魔神としての力と、勇者としての日常の板挟み。ケンジの受難はまだまだ続きます。
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