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今は秋。
――の、はずだ。
「九月だってのに、あっついっスね~」
小笠原の言うとおり、九月に入っても残暑が厳しい。
少しはマシかと思うのは、見上げた先にある太陽が僅かながら遠く感じられるからだ。
「ま、ここを離れればもっとマシになるだろ。早く乗れ」
「はいは~い」
私服姿の小笠原をマイクロバスへと追い立て、俺も最後に乗り込んだ。
アンティークショップ&カフェ【アヴェク-トワ】一号店四名。
今日から社員旅行。
行先は……――。
「旧軽井沢って、僕初めてなんですよ。店長は行った事あります?」
俺の後ろに座った日野が声を掛けて来た。
鞄から予定表を取り出しながら俺は首を振る。
「長野自体初めてだな」
「そうなんですね。あとからオーナーも来るんでしょう?」
「ああ。今回ばかりはあの人も来るだろ」
「オーナーの御親戚の方が経営している民宿でしたよね。でも良く貸し切りにしてもらえましたね~」
「先月までは書き入れ時だったみたいだからな。それをずらしてくれさえすれば、いいってことになったらしい」
「さすが避暑地。相当混むってテレビで見た事ありましたよ」
うんうんと深く頷く日野に、俺は小さく笑いを零した。
「……何です?」
「いや、楽しそうだなと思って」
「当たり前ですよ! 店長は楽しくないんですか?」
「楽しいっていうか……、やっと仕事から解放されるなとは思うかな」
「アハハ。フェア終わっても少し忙しかったですもんね」
日野の同情からの苦笑いに、まったくだと俺は冗談混じりに肩を落とした。
そう、行先は長野県軽井沢。
少し遅れての避暑地巡りだ。
予定は二泊三日。
(無事に帰って来られるといいけどな……)
なんせ、あの二号店と合同旅行なのだ。
何も無い、と言い切ってしまえたらどんなに楽か。
「……はあ」
「ちょっとちょっと! 優ちゃん暗~い!」
(!?)
隣に置いておいた鞄が持ち上がり、代わりに腰を下ろしてきた小笠原に俺は目を丸くした。
「……吃驚させんな。お前の席はもっと後ろだろ」
「え~、いいじゃん♪ 折角の旅行なんだし、楽しく行こうよ」
俺の鞄を膝に抱えて、ニコニコと心底楽しそうな顔に目を眇める。
「楽しく、ねぇ……。俺を解放してくれたら、全力で楽しめると思うんだけど」
「ちょ、ひっど! オレそんな束縛してないっスよ!? ……ちょ~っぴりだけ独占したいなーと思うくらいで……」
「思ってんなら同じことだろうが」
溜息混じりに呟きながら、手元にある予定表に視線を落とす。
これから二号店の連中を拾ってから軽井沢へと向かう。
宿に着くのは夕方になるため、本格的な観光は明日からになる。
(そいやぁ、部屋割ってどうなってんだろうな)
宿に関しては現地に行けば分かるとしか知らされていない。
(個室か、大部屋か……。できることなら一人でゆっくりしたいよな)
団体行動に反する思考であることは、口に出さなければ問題ないだろう。




