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君だけに恋を囁く  作者: 煙々茸
君恋 第二章
11/12


「今日も良い天気だなー。……いや、良過ぎか」

 スタッフ専用の駐車場に車を停めた俺は、眩し過ぎる陽に目を細めながら店の前まで来ると、『本日は棚卸の為、休業致します。』と張り紙された扉の鍵穴に鍵を差し込んだ。

 カチャ……――、

 静かに音を立てて開く。

 時間は朝の七時。

 案の定、他のスタッフはまだ来ていない。

 スタッフルームで着替えを済ませ、店へと下りる。

 その時、ポケットにしまっていた端末が振動を伝えた。

 抜き取って、指先で画面をスッと撫でる。

 メールが一件。

 今度は画面をタッチする。

「あ……」

 送り主は神条雪乃となっていた。

(今日来るはずだろ?)

 この時間にメールを寄こすなんて、余程の急用だろうか。

 すかさずメールを開く。


『おはようございます。

 本日の棚卸ですが、取引先でトラブルが発生したためそっちに向かう事ができません。

 代わりに二号店の榊店長に向かわせますので、宜しくお願いします。

 神条。』


「え……マジで?」

 口元が引き攣る。

 神条さんのことは、前ほど考え込まなくなってきたから吹っ切れつつあるのだと思うが、まだ不安はある。

 会わないで済むなら有り難いが、かといって、代わりに来る人物が、まさかアレとは……――。

 俺はよろよろとレジ内にある椅子に腰かけた。

(と、とりあえず……返信……)

 端末を操作して、神条さんに『了解』と返事を送った。

 ……ブー、ブー……――

(あれ、またメール?)

 送って数分でまた着信を知らせてきた。


『優一。

 槙人と仲良くね。』


 更に口元が引き攣る。

「なんだこの追い打ちメールは!」

 端末をブン投げてやりたい衝動に駆られたがなんとかとどまった。

 俺が榊槙人さかきまきとを毛嫌いしている理由は、言ってしまえば苦手だからだ。

 神条さんと彼は、大学の同級生らしい。

 俺がココで働くきっかけとなったのは神条さんの誘いがあったからだ。

 俺が入社した時、榊店長がココの店長として働いていた。

 厳しい人ではあるが、優しい面もあった。――俺以外には。

 あの頃から何故だか俺には意地悪で……、いや本当に理由なんて知らない。

 こっちから本人に訊いたこともない。

 訊いたところで答えてくれたとも思えない。

 それだけ、苦手意識が強くなっていたわけだ。

 入社して二年ほど経った頃、二号店を開くということで、榊店長がそっちへ移動することになった。

 移動するまでの間、彼が俺の指導係になったのだが……。

 いろいろ仕事を押し付けてくるのは、俺を店長に育てる為の指導者としての彼なりのやり方と言えば聞こえはいいが、俺にはどうも腑に落ちなかった。

 仕事に厳しいくらいならまだ納得はしてやってもいい。

 ――が、

 人の弁当を勝手に食ったり愛用していたボールペンを取り上げてなかなか返してくれなかったり座ろうとした椅子を後ろに引いて転ばせようとしたり。

 やることが幼稚でセコかったのだ。

 絶対俺の事嫌いなんだこの人。

 そう思わない日は無いほどに、彼からの嫌がらせは続いた。

 今思えば本当にしょうもない。

 くだらな過ぎて笑う気も起きやしない。

 それから、彼がココを離れる日。

 ――「頑張れよ」――

 そう言葉を掛けてきたことには驚いた。

 お前はまだまだだ、とか、油断するなよ、とか……厳しい言葉が来るものと思っていた俺は、呆けて、素直に「はい」と答えていた。



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