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憂鬱な梅雨が明けて、時期は七月の半ば。
カフェ兼アンティークショップ『Avec-toi』は今日も賑わいを見せている。
「店長。こっちは貼り終わりました」
「てんちょー。こっちも終わったっスよ」
こっちへやって来た日野と、商品棚の横から顔を覗かせた小笠原が口々にそう告げてきた。
「了解。二人共アクセコーナーの方に回ってくれ」
「分かりました」
「はいはーい」
きびきび動く二人を見届けつつ、俺はレジ内で在庫の整理をしている。
もう一人のスタッフ、片山さんにはカフェの方に入ってもらっていた。
彼とはアレ以来プライベートな話はしていない。
いや、普段もあまりする方ではないけれど、それ以上に酷くなっている気がする。
(……っていっても、あの人は全然普通に見えるんだけどな)
自分だけが意識しまくっていることが少しばかり悔しい。
だからって、相手の気持ちを知ったところでそれを受け入れられるかと訊かれたら、それは無理だ。
片山さんのことは、大事な仲間としか思っていない。――今までも、これからも。
「てんちょー! とりあえず全部終わったと思いますよー」
しゃがんで作業をしている俺に、カウンターに身を乗り出して声を掛けてきた小笠原。
彼を視界に入れてから、俺は一度立ち上がる。
アクセサリー売り場で片付けをしている日野の姿を見て、小笠原に次の指示を出す。
今日は、明日総出で行われる棚卸のために、下準備をみんなに手伝ってもらっている。
全部の棚に、紙に書かれた番号札を貼り付けて行き、サンプルとして出ている商品の空箱を、カウントしないように退ける作業だ。
そして、夕方六時三十分少し前。
「二人共お疲れさん。そろそろ時間だな。退勤していいぞ」
A帯で入っている日野と小笠原に帰るよう声を掛けた。
「それじゃあお先です」
「優ちゃんまた明日~」
「おー。気を付けて帰れよー」
相変わらずレジ内にいる俺は、作業を再開しながら二人に返事をする。
あと少しでココも終わる。
なんとか無事に明日を迎えられそうだ。
(この後、片山さんとラストまでってのが、ちょっとアレだけど……)
カフェの方を盗み見ると、無駄な動きなく働く片山さんの姿があった。
(ま、本人がいつも通りなら、俺がグダグダ悩んだって仕方ねーよな)
一瞬止めた手を動かして、仕事に集中した。




