表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/107

(15)

 「では月読さん、お願いします」

 「じゃ、ちょっといってきますね」

 そして月読さんは、超高速で弾道上の衛星軌道に向かいます。その時間・速度、エンジニアとして口惜しいですが、なかなか「ひとが乗れる乗り物」には出せません。G的な。

 「セリゼちゃん、状況はわかりましたね?」

 私はあの「脳内無線」でセリゼちゃんにコンタクトを取ります。

 「迎撃したっていいんだけどね」

 いたって平静な彼女の声が聞こえてきます。頼もしい。


-----------------------


 

 「ハハッ、高度魔導実験施設のオーバードライブだ。全開だ、レールガン二百機分、……これでもどうにかならないとで」

 「だから?」

 言葉を遮ってキギフィはいった。その若さが罪だとでもいわんばかりに。

 「完全に神討ちナメてるでしょ。ほら、そこのおじさんもレクチャーしてあげたら?」

 「……」

 「ま、いいや。どうなるかその目でみて、その結果を各国のウラに流すのも一興か。見せしめというのも、フレアらしくないなー……そんだけ怒ってるってことかー」

 そして少女、厳しい目をする。

 「この後あんたらがどうなるか、までは私知らんし、弁護するつもりも更々ないけど、今からおこることは一生忘れられんから、ゆめゆめ油断せんように」

 こちらの少女ものんきである。が、

 「私たち敵に回したらこうなるんだから」

 そこに慈悲はなかった。


---------------------------------



 バリッ、という電撃音とは別の、むしろ何か陶器が割れた音。

 それが極大レールガンが空間に響かせる異音。空気が破裂したかのような。

 そして雷撃は星をつらぬく。きっかり数十秒後に、待ちに待ったかのように、雷電の速度、時間の尺度を超越して、ただの「神鳴り」として、ほうき星町向かって破壊の一撃を見舞う!

 だが月読は。大気圏上の月読は。

 両手をその暴虐極まりない光に向け、すっと息を潜め、静かになる。

 そして……

 なんということだろう、破裂音と蹂躙の意志を、疾走とともに推進する光は、月読の手に、水のように、空気のように吸収されていくではないか。

 その光景は、あまりに自然で、暴虐さと穏やかさが同居していた。月読はその穏やかな顔を少しも歪ませることなく、淡々と「吸い込み」を行っていた。

 時間にして、一分。それだけの莫大な電気魔力エネルギーを、月読は「食い」きった。

 莫大な魔力を有する施設の全魔力を。ひとつの発電所に相当するエネルギー……それも攻撃指向性をもったエネルギーを吸いきったのだ。

 それは、人間の魔術師ができる範疇を、遙かに越えていた。

 「さて」

 なんでもなかったかのように月読はいう。

 手のひらをそっと胸のあたりまで持ち上げる。そこに光球が宿った。

 しかしその球には、秒を追うごとに、指数関数的にエネルギーのポテンシャルが、大気をふるわせるかのごとく集中していった。

 


-------------------------------


 「月読さんのエネルギーがいまどうなっているかわかりますね?」

 最後通牒を私は彼らに告げます。

 「あれが『汎エネルギー吸収』……月読さんのデータを漁ったのならわかるでしょう? あらゆる五行八卦のエネルギーを、自分の中で自在に変換して、行使することができる、反則技にもほどがあるものです。そのオーダーは、今のような巨大さなど、ごくごく簡単に御することができるほどです」

 本当に、これが神討ちの力なのだ、と思うと、恐ろしいものがありますね。

 「さて」

 私は努めて冷静に彼らに告げます。

 「この光球を攻撃に使ったら、どうなるでしょうね?」



------------------------------------


 

 完全な絶望とはこのことだろうか。

 経験を積んだ男と、若気に走った男は、自分たちが「ふれてはいけないもの」に、それこそ神に近いモノにあらがったことに、絶望を抱いていた。

 組織は俺たちを切るだろう。だがそれ以上に、こいつらは組織ごと、いやもしかしたら、国ごと葬りさるのかもしれない。

 「ねえ、助けがあるとでも思った?」

 キギフィは淡々という。

 「まあフレアのことだから、虐殺とか、蹂躙とか、そういったことはしないよ。ただ、全世界のウラのちょーしこいた連中に、ナシつけることはあるかもね。で、そこで相談、というか命令なんだけど」

 「……なんだ」

 「フレアはここのデータを全部ハックしたし、ここと関連したとこのデータも洗ってる。で、そこいらがなんか悪さしようと思ったり、ここ発信のデータが出回るようなら、凶悪なウィルスばらまくことは……初歩だね。で、だ。あんたら、もう手引かない? ていうか、この稼業から」

 一気にまくしたてるキギフィ。

 「ウラで生きていくなとはいわない。ただ、ほうき星町に手を出そうとするならば、こうなる、ってことを喧伝してもらえばいい」

 「……」

 「ていうかやれ」

 問答無用。

 「フレア、聞こえる?」

 「はい、聞こえますよ?」

 「どーする?」

 「計器を見ていてください」

 そして通信は途切れた。

 「なにをするつもりだ……」「どうするんだ……」

 弱々しい二人の質問。

 「んー、きっと、アブソリュート、という意味かな」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ