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何事もなかったかのように月読さんが大気圏から戻ってきました。チート……
「お疲れさまです」
その姿、実にほのぼのとしていて、絶対怒ることなんかなさそうな美少年というか美少女というか。セリゼちゃんはよくヘタレショタとかいいますが、いいじゃないですか別に。
が。
私は分かります。脳内センサーが、なにより大気の震えが、莫大な魔力の存在を、エネルギー量を、はじき出していることを。
「やれやれですねー」
困ったような顔つきの月読さん。でも、これだけの付き合いになるのだから分かります。きっちり、しっかり、怒っていらっしゃることを。
月読さん、片手を掲げます。
そこに、月読さんが「食べた」全魔力が集中されていきます。その濃縮ポテンシャル、ゆうに発電所一基分は軽くあります。
恐ろしい……神をも下したその手。光とも、輝ける闇とも、現実空間の虚数単位とも、攻撃的な虚空とも、なんとでも表現できます……ことごとく、抽象的で、背反的で、矛盾した表現で、エンジニア失格かもしれませんが、この莫大さを見ると、なぜかそのような言葉が自然に出てきてしまうのですから困ったものです。……そうでなかったら、神的存在とは、神討ちとは、表現できないのでしょうか。
「難しいことを考えている素振りですね大家さん」
「月読さんのことを考えていたんですよ」
「照れちゃいますね」
「どうします? なんだってできますよ、その力なら。『なんだって』」
含みを持たせてみます。
「それじゃあ……」
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「「わ――――――ー!!!!!」」
阿呆がいた。
セリゼとキギフィは、コンソールルームで、その男(多分)のしでかす所業に呆れていた。
「ほーらほらほら、どうです?」
仙人・剣崎月読老師、二人の下手人の前で、そのポテンシャルエネルギーをちらつかせ、弄っている。手をひらひらさせたり、光球をぽんぽんボール遊びのようにしたり。
「おっと落ちちゃいました」
「「ぎゃ――――――――!!!!」」
「あははははは」
御歳314歳にして、この御乱心である。
キギフィ、セリゼに問う。
「ねー、月読って、こんなんなの? もっとまともなひとかと思ってたよ」
「平和ボケってやつかいな。ガキかっつの」
すでにこれだけのエネルギーの濃縮存在がここに集結している、ということは、この場の計器が、コンピュータが、施設の設備全般が、その熱量に耐えきれるはずがなく。
真っ暗闇のなか、月読の光が、かんらからからとした月読の笑い声と共にその場を照らす。
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それを、回線を通じて映像で見ていたフレア、
「あはははははは」
星の真反対側で、楽しく笑っている。
今日もほうき星町は平和である。




