(12)
「ときに月読さん」
「はい?」
「セリゼちゃんとはうまくいっていますか?」
「いつもどおりですけど」
「いえ、恋愛的な」
ぶ――――ーっ!
お茶を吹き出してしまいましたよ。
「あら新鮮な反応」大家さんはほほえんでいます。
「なにをいうんですか」
「脈なしというわけでもなさそうですね」
「勝手に話をすすめんといてください」
「違うのですか?」
「もう僕らもいい年ですからね……三百もすぎてれば……」
「恋は死よりも強しというではないですか」
「あれー? 大家さんってこんなキャラでしたっけ?」
天才の思考は神のみぞ知る、ということでしょうか。似たもの似たものといわれつつも、この反応は……
「で、どうなんですか?」
「友達としてなら、まあ」
「あら、進展ないのですね」
「お互い三百越えてますからねー、若人のような熱情は遠くなりにけり、です」
「でも、セリゼちゃんがですよ、あの血みどろの地獄を経てきた彼女がですよ、その姿をつぶさにみてきた月読さんは、それなりに思うところはないですか?」
「……幸せになってほしいとは思いますね。そのための助力ならするつもりです」
それを聞いて大家さんはほほえみました。
「セリゼちゃんの反応を見ていればわかりますよ、月読さんが特別なひとだって」
「……まあ、うぬぼれるのも、ときには悪くないでしょうか」
僕はなんだか少々照れくさいですが、別に悪い気持ちはありません。
「それで、恋愛感情があるように思えたのですが」
「かいかぶりですよ。確かに僕とセリゼは、死線をくぐり抜けたり、お互いの人生の業を分けあった間柄です。……が、それと恋情とは別でしょう」
「セリゼちゃんは、本当に月読さんを信頼していますからね」
「もう百年以上のつきあいですからねー」僕は首をすくめます。「恋だのなんだの、といったことはありませんでしたね。親友ではありますが」
それを聞いた大家さんは、ふと、穏やかなほほえみを浮かべました。
「……さて、もう一回とばしますか」大家さんはプロポをもちます。「こんどはのんびりいきますか。大体機体の癖はつかみましたから」
わくわくしているのがつぶさに見て取れます。
「して、月読さん」
「何ですか?」
「セリゼちゃんが親友だというのなら、私はどうでしょう?」
「今日の大家さんはキャラ崩壊著しいですね」
すすっと寄ってくる大家さん。
「別に私はセリゼちゃんやキギフィさんのような器量はないですが、どうです? このように攻めれられると」
う――――ーむ、いつもの大家さんらしくない攻め方です。よほどヒコーキで楽しんで、気分がハイになっているのでしょう。
するとセリゼ、その地獄耳で我々の会話を聞いていたらしく、
「をい、年甲斐もなく燕狩りすんなオーバー40」
とぼそっと我々に向かって声をかけてきました。
すると大家さん、パチッ、と指をならします。
瞬間、なにもない空間から、突如として機関銃がでてきました。そして次の瞬間、ズガガガガガ!とセリゼのほうに向かって一斉斉射!
「だ――――ーっ! なにするんじゃ!」
「聞き捨てならない文言がありましたから」
「そもそも年甲斐もなく月読に迫るなや」
ズガガガガガガ!
「わーったわーった! ピンポイントでヘッドショットするのやめい!」
うーん、大家さんもノリがいいですね。




