●工作少女の日々(1)
月読のほうき星町過去話をしようかと思ったのですが、急に気が変わって、フレアの趣味、模型のお話になります。
バトル一切なしの、ほのぼのストーリーです。
登場人物は、フレア、店主、店の客(子供)です。
そんな長くはならない予定です。
溶剤の匂いが染みついて、離れない。
ここで言う溶剤ってのは、なんつうかな、接着剤とか、塗料とかの、溶かし液――アルコールとかを用いたモンだ。
ひらたく言えばシンナー。
模型の箱がほとんど天井まで届いてやがる、私の模型屋。
名を「ツバサ模型」という。
俺は、エポキシとデザインナイフを手に、じっくりと模型の改造に勤しんでいる。
ツバサ模型は店先の近くに、カウンターがある。
そこで俺は、同時にワークショップ――簡易工作室を構え、ちょっとした工作をするのが、暇なときの常だ。
……まあ、つい調子のって、ここで大々的に店を広げてしまうんだがな。
店の中で店を広げるとはこれ如何。
まあそんな感じで、のんびりと午後の暇な時間をもてあましていたところだ。
そんなときに、店のドア(わりに重い)が開いた。
フレア「どうもー、こんにちわ」
普通、模型屋に来る奴なんてのは、オッサンか子供かオッサンかである。
これは偏見ではない。世界共通の事実である。
ところが、
その声は、とても落ち着いた少女の声であった。
ああ、そういえば時間だったか。
店主「やぁ、龍博士。いらっしゃいだな」
ウチの常連、超常連、超お得意様にして、
世界最高の工学者、龍・K・フレア博士である。
いつもながら、パーカーにキュロット、
大人ものの白衣を羽織った、今日も明日も昨日も一年前も一向に変わりがない風体だ。
で。
この博士、とんでもない、模型マニアだったりする。
フレア「K-10輪転型巨式カノーネの新作が出ましたね。あんなのどこの誰が買うんでしょう?」
店主「おまえさんだろ、そりゃあ」
フレア「なんでわかったんですか!?」
店主「背中がすすけてるぜ、ってやつだよ。……入ってるよ」
フレア「さすがです!」
ったく、ほんとーに嬉しそうな顔しやがって。
世界の魔法科学にコペルニクス的革命をしでかした天才が、模型に命をかけるたぁね。
12/23、店主の一人称を、(2)に従って、変更しました




