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○二日目(セリゼ、月読にほうき星町を案内する)

 



「嫌いな奴の話を聞くのって苦痛だよね」


 「いきなり何さ……僕何か悪いことした?」



 あまりに出しぬけにセリゼがそう切り出すのでどう答えたらいいのか分からない月読であった。まさか遠まわしな皮肉ではあるまい。


 「いや、月読のことを言ってるんじゃなくってさ、あくまで一般論。哲学やら文学やらで、『他者』との理解や交流、ってのがテーマになるじゃない」


 「まぁね。ず~っとそればっかやってるってイメージすらあるけど。特にこの百年ちょい」


 「学者さんが、立派な理論を打ち立てるわけですよ。でも、嫌いな奴に難癖つけられたら、『他者との理解』なんて吹っ飛んで喧嘩になるよね、その学者も」


 「それが人間じゃない? ……ああ失言、他の種族でも同じか。長生種ですらそうなんだから」


 「余計に煽ってるような気がするけど」おかしそうにセリゼは言う。


 朝食が終わって(カリッと焦げ目の付いたトースト、豆と山菜の煮物、スープ、サラダ、というシンプルだがきちんとした朝食。セリゼはきっちり四人前食べた)、

さて皆思い思いのことをするか、という段になり、フレアとキギフィは自室へと戻って行った。

何をするのだろう、と月読は思った。この家の「普段」がまだわからないからだ。

そうしたら、

フレアは「プラモデル制作」、

キギフィは「仕事」

であるそうだ。

フレアはともかくとして、キギフィまで在宅ワークだったのは意外だった。


 「で、他者とのコンタクトが困難だという話がどうしていきなり持ち出してくるのさ」


 「ん~? 逆に、気心知れた人相手だと楽だな、っていう演繹を導き出したかっただけ」


 「……遠まわしな言い方だね」


 「直球で言うの恥ずかしいじゃん」


 食後の一休み、ということで、居間でまったりしているセリゼと月読であった。熱いコーヒーを飲みながら、益体もない言葉のキャッチボール。



 「日常」。



 ふと、そんな言葉が月読の頭の中に明滅した。おやおや、まだ早いだろう? と月読は自分を笑う。まだ二日目だというのに。


 ……だというのに、この居心地の良さと言ったら。旧知の仲に囲まれているというのもある。気のいい同居人だからというのもある。それにしてもなぜこれほど穏やかで――静かなのか。


 だから、率直にセリゼに聞いてみることにした。


 「静かで平和な家だね」


 「この町だからかな。都会だと、こうはいかない」


 「田舎だから、ってわけでもないでしょう? どうもセリゼも大家さんも、そのあたりに一物持ったものの言い方をする」


 「じゃあ、これから説明しに行こうか。コーヒーカップが空になったことだし」


 「よく見てるね」


 「戦場で生きていると、ささやかな変化を見逃すと死に繋がる。穏やかな町に生きていると、ささやかな変化が楽しみに変わる。そんなもんだよ」

飛躍した物言いをするセリゼだった。

「さあ、行こう? 嫌いな奴とか、他者とか、そんなこと考えずにすむ町を案内しよう」

 

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