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魚型兵器のセンサーは、なんだか「この場所」に浮上したことに、とまどいを覚えているようだった。


――ここを狙ってきたわけでは、やっぱりないのか? 


とキギフィは思った。


ホントにただ単に釣り人がひっかけただけで……まあいい。どちらにせよ、こんなものに暴れられたらいやだ。


ほら、センサーがこっちを判別したぞ、LEDがレッドに点滅したぞ、ほら、オールグリーン、目玉、輝いて。


全身の機械が蠢く……キギフィは相手が「戦闘モード」に入ったことを、そのように確認し、自分も構える。


相手が迫ってきたら、その瞬間からカウンターの要領で、一気に潰す。この化物以上のトップスピードを出しきる自信がキギフィにはあった。


全身を、すぐさま跳躍出来るように、バネを縮ませる……


が。


そのとき、天高く闇広がる夜空の、雲の切れ間から、何かが飛来してくる「予感」がした。


予感がした。


果たしてそれは事実だった。



「見つけた! 死ねー!!」


次の瞬間、上空からいくつもの銃弾がガンガガンガガンと猛烈に被弾! 


鋼鉄の装甲、あえなく貫かれ。


こんなに簡単に鉄って貫けるものかと思うほど、上空からの数撃は強烈なものであった。一体どんな炸薬・弾頭を使っているのか。


否、キギフィは知っている。


それは全弾大口径のライフル弾。


そんなものを上空から勢いよく「死ねー!」の声とともに連射してくる人間……じゃない、吸血鬼。


ああ、彼方から、ほうきに乗って、彼女がやってくる。


ユーイルトット家第十四代公爵、セリゼ・ユーイルトットその人である。


マントと黒衣に身を包み、両腰に三本の剣。その剣のグリップには、銃の機関が備え付けられている。刀身の向きと平行に弾頭を打ち出せるデザインの。


片手にリボルバータイプのその奇妙な剣――「内蔵式銃剣」を握り、もう片手はほうきを握って大暴走。猛烈な勢いで、ジェット機かって勢いで、こっちに飛来してくる。


化物、ぐぎぎがががとうめきながらも、セリゼの方角を見ようとする。銃弾が貫かれているのだから、ほとんど死に体ではあったが、戦意だけは衰えず。


が、それ以上に野蛮な戦意をたたえているのが御乱心公爵様であって、


「くたばる機械は訓練された機械だ! 逆らう機械は訓練されてない機械だーっ!!」


そしてずどどどど。


いつの間にリボルバーに六つの弾薬を装填してのであろうか、再び斉射。その弾頭、化物の各急所部位を貫いて。


ぼす、ぼす、ぼす、と、内部で軽い爆発が起きる。口から黒煙が噴き出ている。回路はショートしている。あんなに凶悪そうだった殺戮機械が、なんということでしょう、あっと言う間に御釈迦に!


そして、


「死ねっ!」


突撃突貫、全力全開、スターライトぉっ! 以下略! 詳しいことは知らん! 勢いだけ伝われ僕の心!


そんなこんなで、上空から閃光を纏って、セリゼがほうき星のように飛来して、猛烈な勢いをつけて、その魚に突っ込む。ほうき星のように辺りに衝撃波が撒き散らされ、円錐型のベクトルがその場に描かれ、それは光、鮮やかに。


次に、轟音。そりはそうである。あのような高度から直撃してきたのである。それも猛スピード。キンッ、という金切り音の後に、爆発の音。それが一連の流れ。それは飛来の音と直撃の音。キンと鳴って、風が吹き、ドンと鳴って、風が凪ぐ。


文字にすれば優美なれど。


その「爆心地」に立つのは、破壊された頭部に足をがっとかけ、支配者のポーズをして、完全に勝利宣言をするのは、そう、我らがニート貴族。


セリゼ・ユーイルトットその人である。


満足そうに頷き、足で魚をぐりぐりし、「う~んマンダム」のポーズを露悪的にとり(わからない人は親御さんに聞くかYOUTUBEで検索しよう、お兄さんとの約束だぞ!)、そして感慨深そうに言う。


「私ってば最強……」


まあ確かに最強だろうよ。



この類の決戦兵器は、その戦局を根底から覆すポテンシャルを、たった一基のうちに秘めているものである。いわば一個師団を一基で相手取れるような。


それを、こう、なんちゅうか、猫を一匹潰すかのような簡単さでやられたら、兵器や兵団の立つ瀬がない。


そんな気持ちにさせるがしかし、そんなこと知るかボケと言わんばかりのこの勝利者の態度。


勝った奴がエライのだ。勝てば官軍負ければ賊軍。勝は万金に値いせり。


そんなナチュラルな自己確信を、セリゼの笑みはたたえていた。


よって、キギフィが人類最強なら、セリゼは吸血鬼……否、もはや、生物最強なのだ。


それはそうなのだ。


何故なら彼女は、この世界において、「神」を屠るだけの武力を一個人のポテンシャルに有する、特異存在。


神に抗った者。


神を殺した者。


絶対不可侵にして完全無欠の王、すべての価値と矛盾の上に立つ王。


神……そう、その神を、


殺してしまえるほどの。


「神討ち」


化物8人を、人はそう呼ぶ。


闇の呼称。それでいて、絶対的な強者の呼称。


創造主たる神に唯一比肩しうる存在。


あるいは世界のバグ。


神によって緻密にデザインされたこの世界の、根底を揺るがす異常存在。


なんとでも呼べる。


ただひとつ、言えることは、


「強い」こと。

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