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背中に尾びれがあるのはいいとしよう。だがそれが刃物以外に見えないのはどういうことだ。
本来エラがあるところがスラストバーニアで、その横にロケットランチャーが備え付けられているのにも、疑問が残る。
鱗というか装甲。ヒゲと言うよりは幾本もの槍。
流線形なのは変わらずとも、そこにあるのはオニハコゼのような凶暴性にして、で、手を触れなば即座にイヤンな惨事になっちまいそうな、攻撃的なフォルム。
……いやもうはっきり言ってしまおう。
決戦兵器。
殺戮破壊蹂躙虐殺を旨とする、ただそれだけのデストロイヤーマシーン。
愛想もなく、慈悲もなく。
ダライアスのボスのような、無慈悲にして凶悪な「敵」が、そこにあった。
当然このような相手と「おともだち」になれるほど、釣り人もキギフィも脳内お花畑であるはずがなく、
「まいったわね」
「全然まいった風に聞こえないよ」
それでも呑気に話すのであった。手慣れとは恐ろしい。
「ほんと君、なんか悪いことでもしたんじゃないの? なんで決戦兵器なんか召喚しちゃってるのさ」
「無実だと思いたいのだけどね」
「事実来てるじゃない」
「無心に竿を下していると……」
「話をそらすのやめい」
「……まあ、私に思い当たる節はないわね。あったとしても、このようなモノに狙われる前に、『アタリ』をつけて、穏便に帰ってもらうくらいの甲斐性は持ち合わせているつもり」
「出来る女は違うなぁ」
「貴女だってそれくらいのことはするでしょう……?」
「まあね」
さらりと言うふたりであった。この凶悪な殺戮機械を前にして、この余裕。
して、
「じゃ、ちょっとひとひねりしてくれない?」
「いいんだけどさ、そこはこう、『私もやるわ!』的な、こう……」
「戦うのは貴女の前職じゃない。私は釣り人として、今度魚が釣れたら、貴女の肴にするために一番に龍教授の家に持っていくわよ」
「それを言われたらしょうがないな」
あっけなく話がまとまった。
釣り人にしても、このようなガチ戦闘において、自分がさほど役にはたたないことを承知している。
で、キギフィがこのような鉄火場において最大限の力を発揮するのも、自分で承知している。
要は適材適所というやつで。
世界の人間全てが、人生においてこれを第一に希求すれば、さぞ世界は平和になろうかと思うが、そうもいかないのがこの娑婆苦=人間界なのである……世知辛い話だ。
そして、その原理をよく知っていて、その原理に苛まれることも知っていて、でもその原理がなんだかんだ言って世をうまく回すコツであり、自分がなにをすべきか、の最も有力な答えであるからして。
少なくとも……それがトラウマでない以上、「適材適所」を無理なくやっていくこと、それはそれなりに大事なことなのではないか、と、二人も、そしてほうき星町の住民も思っていることなのだった。
というわけで、バトル開始である。




