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「にしても、なんか恨まれるようなことでもしたの?」


「しまくりの人生だったわね」


キレキレのジョークを放ちつつも、現状確認。


「『今』悪いことをしてるのか、ってこと」


「それはないつもりだけど」


「だよね。『昔』の尾が引いてる可能性は……ないか。ここはそういう町なんだし」


「信じているわ。だとしたら」


「としたら?」


「まあ、厄介な偶然よね」


「動じてないんだね」


「これでも元スパイですから。スパイが動じていては職にならないわ」


「それもそうか……」


不思議なほどに納得してしまうキギフィだった。


「それにしても、よくもまあ、このようなモノが釣れたものだわ」


「爆釣ってやつ?」


「もっとまともなものを釣りたいのだけどね」


「魔術ランタンとか、星屑の欠片とかはまともなの?」


「綺麗じゃない。素敵じゃない」


「ぐうの音も出ないね」


その返しに微笑んでしまうキギフィだった。またも笑顔がまぶしい。


すると、


水面がぶくぶくぶく……と、泡立った。


それも、今までのようなもの(いや、今までもそれなりにずいぶんな泡立ちだったのだが)とは違い、明らかに不吉な予感。胎動。


水面がゆらめく。


すると次には、そのゆらぎに、フラクタル画像のような幾何学模様の透明な格子が展開された。スクリーントーンを張られているようだ。


――魔術式? 


ふたりはそれまでの経験から、これがそのような「日常の常軌を逸したモノ」」であることを察知した。その前にミサイルが湖から出てくること自体が常軌を逸していることはさておき。


「まさかフレアが何かしたってわけじゃないよね」


それはない、と即断するキギフィだった。


あの博士は確かにマッドサイエンティストだが、こうして「無関係の人に迷惑をかける」ことを何よりも嫌うことを、キギフィは家族として……そして、過去に話してくれた、彼女が義体に己が身を換装することになった忌まわしき事件を思い返して、「それはない」と判断するのだった。


第一フレアが「ガチ」で作るのなら、こんな普通の……もとい、こんなザコの機体は作るまい。もっと面白いモノを作るはずだ。


(ほめてるんだかけなしてるんだかわからないな……)


よって、これはフレアに関する案件ではない。


ただ、彼女が開拓した、「魔術科学」の代物であることはわかる。


この世界における第二次の産業革命。エネルギーサイクルと活用法、そしてデバイスとなる機関といったものの、完全なる科学(機械)と魔術の融合。秘儀であった魔術の、科学的解明。科学の矛盾の、魔術的「超論理」解明。


それによって、レッズ・エララは、わたしたちの世界より早く「近未来」に辿りついた。


そして、目の前に展開されている光景は、そのような近未来技術の結晶であるのだ。


果たして、何が出てくるのか……それは、少なくとも、今出たようなミサイルのような、簡単なものではあるまい。


そして。


ぶくぶくぶく! と猛烈に泡立ち、フラクタルの模様が薄紫色に輝く。LEDで発光しているようだ。


果たして出現したモノは。


巨大な化物魚類であった。


ただし、その肉体は、完全な機械のものであった。


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