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ではフレアは? 義体とはいえ、あの二人のような人外戦闘能力なんてない。
だがしかし、「天才工学者」が、戦闘力のないことの、何が問題なのだろう? それこそ戦闘は、自分のような生業のような奴がやればいいって話なのだ。
「タダの人間のオーダー」を越えているのは、フレアにしたって変わりない。
およそこの時代の知的営為なるものをすべて把握していると言っても過言ではない、その圧倒的なまでの頭脳。ああ、本屋「懐中水時計」が擬人化したら、こんなんなるのかな、いや、まだ足りないか、もっともっと……みたいな、得体の知れない、これもまた「人外」と評して構わないほどの、その頭脳。
世界のレベル――技術、科学、理論――を数メモリ上げた天才。
天才。
セリゼの力が、神の気まぐれによって授けられた、地獄の炎ならば、フレアの天才は、神の明確な意志によって宿った、世界を変えるための天使の翼なのだ。
なんとなく、キギフィはそのように思うようになった。
ときに、キギフィはフレアの思考を、セリゼ、月読といった人外とは、また別の、「何者か」であるような気がする。それは人なのだろうか。ただただ「天才」という言葉でしか表現できない、またある種の化物ではなかろうか。
大天才の孤独。
至りついた境地。
会話の端々に、いつもはあんな呑気だけど、優しげなそぶりだけど、時折刺しこんでくる意見の、氷柱のような冷たさ、速さ、それでいて透徹さ。十年二十年五十年先のことなんか簡単に見通せる、みたいな。
「濃い連中だよね」
あははと笑う。
実際、酒の席でもそういった話題を振ったことがある。
決まって返ってくる返答は、
「お前がそれを言うかね?」
であった。
異常人間度合で言ったら、キギフィだって、相当に変というか、変過ぎというか、そんな美少女のくせして、何で元特殊部隊なんだ、とか、何でそんなに呑んだくれなんだ、とか、ツッコミ所がいやに多すぎる。
「私は自分なりに普通にしてるだけなんだけどなぁ」
そのフツウの認識が、すでに凡夫とは一光年くらい異なっているのだよ、君。




