(5)
さくさくと、浜辺を歩く。ぼんやりと考えながら
月読にしても大概である。「人間を辞めた仙人」。男でも女でもない存在。見た目男の娘だけど。そんな「人外の極み」は、なんか放浪癖があるらしく、この土地に腰を落ち着けてからも、ちょくちょくふらっと旅行したりする。
セリゼに言わせれば、これでも「超絶の進歩」だという。何しろひとところに落ち着かない、永遠の放浪者、それが月読だという。
見かけは、どこにでもいる優しげな――嘘。優しげな、というところは否定せんが、あの堂に入った男の娘っぷりと、何もかもを微笑んで受け流す度量の深さは、うむ、やはり仙人、と思わせるところがある。
例えばこんなことがあった。
酒の肴調達、並びに近隣住民の頼まれごとで、町の裏手の山々に分け入っていくミッションを遂行しているときに、月読、難なく着いてきて、しかも山のヤンチャなモンスターの群れに囲まれた際、若頭にちらと目配せさせただけで、一同をヘドバンかっつうほど土下座させたのだから。
ちょっくらドンパチになるかと期待していたのだが(装備も整えてあった)、その余りの格の違いぶりに「うーん、レベルが違いすぎるってこういうことなんだな」と、ごく自然に納得してしまった。
「セリゼだったら皆殺しだよね」
呟く。
ああ、ああ、あの暴力思考の貴族なら間違いない。対話とか獣の面子とか山のシキタリとか、平気で蹂躙して、ちゃっちゃと撲殺しておしまい。
というわけで、月読とセリゼ、対比点は相応にある。
が、言えることは、「タダの人間」のオーダーを越えている、ということ。




