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さくさくと砂地を歩く音が聞こえる。
波打ち際には、いくつものモノが流れ着いている。
主に、流木。
水に漬かりきって、ほとんど黒ずんでいるその木々は、しかし長い道程を歩んできたことを伺える、幹の、枝々の強靭さ、しなやかさ。
冬の枯れ木のような神経質さよりも、もっと生命力を感じさせ、それでいて、どこか孤独さも感じさせる。
キギフィはそんな漂流物を眺めるのが好きだった。
木だけではない。貝殻や、不思議な宝石や、機械のジャンクと魔法紅玉が複雑怪奇にスチームパンクに絡み合う――まあ一言で言えば美しいガラクタ。
そんな、世界から零れ落ちて、流れ着いてきたモノたち。
そこに意識があるのかは知らない。何が宿っているのかも知らない。
ただ、キギフィはそういった漂流物を構っていると、不思議に満たされ、ワクワクする心持になれるのだ。
専門用語で「ビーチコーミング」と呼ばれるらしい、この漂着物収集。
要するに水辺(主に浜辺とか)をうろついて、漂着したものをゲットする。ルールはただひとつ「早い者勝ち」。
まあ、早い者勝ちと言っても、このような奇特な趣味に人口の大半がかかずらうこともないから、コミケの争奪戦に比べれば、天と地、どころか北極星と地殻マントル、くらいの差がある。
穏やかである。波打ち際も、キギフィの心も。
普通、こんな夜更け/夜明けにおいては、ライトが無くては物を見つけることも困難なのだが、さすがに元特殊部隊のキギフィである。闇目が完全にきいていて、どんな小さな貝殻ひとつ見逃すこともない。
いつしかキギフィは、昔のことを思い出すようになっていた。
対テロ鎮圧の銃撃戦とか。
巨竜を屠る伝説の戦いとか。
暗殺者との一対一の対決とか。
単騎敵陣に乗り込み、首級を捕ってきたこととか。
それから……ずいぶん多く、生傷を負ってきたこととか。




