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●夜明けの釣り人(あるいは暇人キギフィのささやかなお悩み相談)


大体夜明け前の暗がりに、湖の岸辺を徘徊している人間というのは、怪しい人間か怪しい暇人かのどちらかである。どっちにしろ怪しいんじゃねえか。


イーシィ湖、現在午前三時半。


ちょいとほうき星町の中心の広場にそびえる、大きな共同倉庫(複数の店舗が使っている)の上にかかっている、大時計に目を回せば、きっとその時間をはじき出してくれるはずだ。とても人間的に。


あるいは、便利な(都合のよい、ではナイ)我らの大家さん、フレアが傍にいれば、内蔵クロックを即座に参照してくれるだろう。


が、こちらもまたどっちにしろ、正確な時間がわかったところで、辺り一面暗闇ということは変わりなく、時間が分かったところで、うろついている人間の怪しさが弁解されるわけでもない。


とは言っても、変人奇人の吹き溜まりである、このほうき星町においては、多少の怪しさ、挙動不審くらいは普通に許容してしまう。


で、話というのは、こんな夜明け……夜更け? どちらにせよひどく暗い時間だ。スコット・フィッツジェラルドは「魂の暗闇」を形容するのに、その時間を使った。「ひとはその時間の暗闇の心を見てはいけない」。老婆心ながら、このことは嫌と言うほど若人に忠告しておきたい。


北方の夜はひどく暗い。


まだ春だからいいものの、ひとたび夏至を越え、秋に入り、冬に入っていくと、とてもではないが、外に出ることあたわずの厳しい寒さを迎える。


だから北方の人間は、動ける季節に懸命に動く。で、寒波激しい季節はヒキコモリになる。


キギフィは、そんな夜明けだか夜更けだかわからん時間に、ひとり、湖の岸辺をうろついていた。

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