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その支流はいくつもの流れが束になって、ひとつの大きな流域を形成することは、今述べたが、とりわけ、共和国内陸、大平原にほど近い地域の、「イーシィ湖」の辺りで形成されている流域は、とくに複雑怪奇を極めている。
西からこの流域にたどりつくには、「どれを選んでもいいのよ」と、まるで手慣れた熟女のように(もうちっとマシな例えはないのか)様々なルートの支流によって辿りつくことが出来るのだが、そこからが問題である。
交易の拠点、大港町「マーサ・ル」がその入り口となるのだが、そこから先、まるで熟女の手癖の如くと言おうか、熟女の思考の如くと言おうか、とにかくくねくね曲がって、あっちこっち行ったり、ぐるぐる回ったり、迷路のようで、船乗りたちに「めんどくせえ歳喰った女みたいな航路」と評されるのである。(ホントもうちっとマシな例えはないのか)
ひとえにそれは、イーシィ湖の地形が形作る、水域の、流域の、山間地域の奇怪さにある。
迷路、と今筆者は言った。マーサ・ルからの大河は悠々とイーシィ湖に流れ込み、そこから様々に分岐していく。例えば、このまままっすぐ行けば、「水没都市」レヴァス・ファンジェ。
山を分け入っていく形で、フィヨルドの湖から注ぐ支流に入っていけば、さらに別の川へと流れ込み、またその道がやっかいなのである。あっち行ったりこっち行ったり、ときにはそれらが混じり合ったり逆流したり。ちょうど奇妙なプライドと意地で凝り固まった熟女の思想のように(だからホントもうちっと以下略)。
さて、我らが物語――とは大言壮語である。ともかくも皆様がお手元にお持ちいただいている書物(いずれは電子書籍になるのか? その際の、その、ぶっちゃけ印税ってどーなの?)、それが描かんとしているところの町である、「ほうき星町」。それは、ここ、イーシィ湖の湖畔にある。
そして我らが主人公たちは、その湖畔の高台の上に、一軒ポツンと、町並みを離れるようにしてそびえ立っている、そこまで大きくはないが、それほど小さくもない、作りのいい一軒家で始終暇を持て余している。




