第三章:夢への旅立ち
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セネカはかつて「旅と場所の変化は、精神に新しい活力を与える」と述べた。しかし私にとって、この旅は単なる地理的な移動ではなかった。これは一種の巡礼であり、私たちの人生というタイムカプセルの中で、十年間眠り続けていた約束の清算だった。
エディンバラ行きの機内、コーヒーの香りと人工的な空気が私たちを包み込んでいた。窓際の席で、詩織は鼻をガラスに押し付け、綿の海のような雲の広がりを見つめている。
「お父さん、スコットランドの雲も、あんなふうに見えるのかな?」
彼女は振り向かずに尋ねた。
「物理的には、そうだね。けれど詩的に言えば、スコットランドの雲にはかつての騎士たちの息吹と、古のバグパイプの残響が混じっているはずだよ」
私は彼女の足元にある毛布を整えながら答えた。
隣に座っていたあかりが、くすくすと笑った。彼女はベルベットの布で、銀のフルートを愛おしそうに磨いているところだった。
「お父さんの言うことは気にしなくていいよ、詩織。向こうに行ったら、雲はママのメロディに合わせて踊るの。大事なのはそこなんだから」
それから、あかりは私の肩にそっと頭を預けた。彼女の手が私の指の隙間に滑り込んでくる。それはいつも変わらぬ、温かな港のような感触だった。
「エドくん、ありがとう」彼女は囁いた。「あの頃の、女子高生のバカげた夢を叶えてくれて」
私は彼女の頭頂部にそっと口づけをした。
「夢にバカげたことなんて一つもないよ、あかり。夢とは、私たちの魂が未来と対話するための手段なんだ。もしあの時、諏訪湖のほとりで二人で夢を見なかったら、私たちは今日という日に決して交わることのない、二本の平行線のままだったかもしれない」
私は二人を見つめた。私の人生における、二つの最高傑作。決して絶えることのない情熱を宿したあかりと、スケッチブックに私たち三人の肖像を夢中で描いている「詩の織物」、詩織。
目的論という哲学の視点から言えば、私の人生はその目的に完全に到達したように感じられた。もし今、時間が止まったとしても、私は「充足」の意味を最も深く理解した男として死ねるだろう。
「着陸したら、そのままハイランドに向かおうね?」あかりが目を輝かせて言った。「そこで、あなたと詩織のために最初の曲を吹きたいの」
「君の望む通りに、私のミューズ(女神)よ」私は静かに答えた。
突然、鋭いチャイムの音と共にシートベルト着用サインが点灯した。私たちの交響曲への、小さな割り込み。前方の悪天候による軽い乱気流だと、パイロットのアナウンスが流れた。
恐怖は感じなかった。なぜ恐れる必要があるだろう? 私の世界のすべてが、今ここにあるのだ。エピクロスも言っていたではないか。「死は私たちとは何の関係もない。私たちが存在するとき、死は存在せず、死が存在するとき、私たちはもはや存在しないのだから」と。
しかし、二度目の衝撃はより激しく訪れた。詩織のスケッチブックが床に落ちる。折りたたみテーブルの上のプラスチックコップの中の水が、出口を探す恐怖そのもののように、激しく波打ち始めた。
「お父さん……」詩織が私の腕を強く掴んだ。彼女の明るい顔が、みるみる青ざめていく。
「大丈夫だよ、詩織。空気が少し踊っているだけだ」
私は落ち着かせるように言った。論理的には、機体のエンジンの振動が明らかに同期を失っているのが分かっていたとしても。
あかりを見た。彼女はもう笑っていなかった。フルートを胸に抱きしめ、まるでそれが最後のお守りであるかのように。彼女の瞳の中に、プロローグで予感したのと同じ暗闇の閃光を見た。
運命という名の残酷な織り手は、私たちの詩を綴るための糸を使い果たしてしまったらしい。かつて私が口にしたあの「歪んだ曲線」が、今、強制的にその円を閉じようとしていた。
この高度で、触れることができたはずの夢の淵で、私は一つの恐ろしい事実に気づいた。
時として、天が私たちに翼を与えるのは――ただ、地上へと叩きつけられる時の痛みがどれほど凄まじいかを教えるためなのだということを。




