12月21日 4
イグサの匂いだ。
この匂いは、お盆の頃の畳を連想させた。
正月の畳は寒いからか、全然匂いがせず。
ガスや灯油の臭いの方が連想できる。
そんなにおいの連鎖に冷たい匂いが混ざり始めた。
和室の暖房の点検をしていたら、ビックっと冷えを感じ、肌寒くなってきたなと思い、窓の外を見ればぽつりぽつりと鉛色の空から、わたげのような雪が落ち始めたような。
雪っ!
雪で意識が覚醒すると後頭部に柔らかい感触を感じる。
そしてひんやりとした心地よい手が優しく頭をすべらせている。
目を開けると綺麗な着物での双丘が目に入った。
秩父の景色は下から見るか、横から見るか。
「こうも寝顔は可愛かったのに、煩悩に塗れておるのう。まあその対象がわらわに向けられているのが、熱を感じるのう」
脳。 no. のう。
「反対に向き直してもいいですか?」
「それはお日様が眠ってからじゃ」
「ここは?」
見渡す限りどこからの和室だ。
障子も襖も床の間もある。
「100年前の氷上家じゃ」
「ではさっきのバーは?」
「バブリーの頃に友人がやってたバーじゃ」
友人いるんだ。
「おるわ。2000年来の付き合いがあるのがふたり」
「▢▢▢▢見ました?」
「場所が違うのでみておらんよ。3人で▢▢▢はしたぞ」
「うっわ」
「その頃は美味いもんが流行り出した時期でな、東奔西走したものよ」
「それより氷上痛い所はないかの?」
下腹部とか?
「それは夜じゃ。下の冗談が言えるなら大丈夫かのう」
「チャーハンでやらなくて良かったですね」
「お主もなかなか図太いの」
ぼーっと、白銀のロングヘアで白い着物をまとった雪女さんを眺めている。
バーでの彼女の姿も良かったが。
流石雪女と言った所だろうか。
和室での親和性が凄い。
見とれる。
見惚れる。
見ほれる。
やっぱり白髪銀髪こそ至高。
「そんなこと言って、お前さんが持っておる抱き枕の雪女、黒髪ロングじゃろ」
「あれはインナーヘアーが白髪と言いますか……。負けでいいです」
「ふふふ、冗談じゃ。鬼とか蛇の抱き枕だったなら激しく嫉妬しておっただだろうがの」
「その鬼とか蛇も銀髪だったりするんですか?」
「うむ、三者揃って似たような髪色じゃったな。よく見れば全く質が違うのだが、人の子の眼球ではそれは厳しいだろう」
今の言葉で雪女さんは何かを思い出したのか、手をポンと叩いた。
「そうじゃ、氷上。わらわに名前を付けてくれ」




