35話.再会
目黒の今住んでる場所がわかった日から、翌日…。
俺は新幹線に乗って秋田まで来ていた。
うわ…ほんとに来ちゃったよ。こんな早くに行くつもりはしてなかったけど、後輩の秋元や片桐先輩たちの圧が強くて、もう今日にでも行くしかなかった。
とりあえず目黒の家は…バスに乗り換えなくちゃいけないのか。これ、帰り大丈夫かな…。
バスに乗って、どんどん駅から離れていく。人の姿もほとんどなくなっていく。
周りがだんだん、田んぼや畑だらけになっていくんだけど。行き先間違えたら、普通に迷子になりそうだな…。
目黒の家から一番近いバス停に着いた。しかし、まだそこから距離があるため歩かなくてはいけない。
公園みたいなところを通って…スマホの地図を見ながら…よしっ、ここか!
「ここが…目黒の家か」
俺は『目黒』という表札のついた一軒家にたどり着いた。
普通に一軒家だな…。むしろ、周りも一軒家しかないから、これが普通なんだろう。
インターホンを押したらついに会えるのか…。
俺はインターホンを押す手が震えていた。
緊張する…。こんなに緊張するのも久し振りだ。
「あれ…出ない?」
一度インターホンを押してみるも、応答はなかった。
もう一回…あれ?もう一度…ん?
何度押しても誰も出てくれない。
もしかして…今は昼間の13時だし、大人は仕事に行っていて、目黒は学校に行ってるとしたら…。
家に誰もいないなんて当たり前の話じゃないか。
「近くの公園で時間をつぶすか…」
家の前で待ってるのも不審者に思われそうなので、さっき通った公園に戻ることにした。
何時ぐらいになったらまた行くかな…。夕方になっても目黒が帰ってこなかったら、俺はどうすりゃいいのか。外で時間をつぶすのも限界があるぜ…。
スマホの充電を心配しながらも、俺はトボトボ歩いていた。
曲がり角を抜けて、一本の道に出たとき…。
俺は見つけてしまった。
ここからでもわかる。彼女の後ろ姿だと。
俺は慌てて追いかけようとした。だが、急に足が止まってしまう。
目黒の横に…男がいた。
目黒と同じような色の制服を着ているから、きっと同じ学校の人か。
なんだ…あいつ彼氏いたのか。そりゃ、彼氏がいるんだったら、秋田に帰りたいと思うよな…。
俺…ここまで来て何してるんだろ。なんか惨めになってきた。
東京に戻ろう。
そう思った瞬間、目黒たちの話し声が聞こえてきた…。
「ねぇ、いいじゃん。俺たち付き合おうよー」
「無理。他の人をあたって」
「周りからもお似合いって言われてるんだぜ?軽い感じで付き合うだけでいいからさー」
「………」
「おい、なんで無視すんだよ」
目黒の横にいた男が、目黒の腕をつかんだ。
横顔しか見えないけど、目黒は急に腕をつかまれて痛そうな顔をしているように見える。
「あ、あの!」
俺はまっすぐに目黒たちの方に走っていた。
急に現れた俺に、目黒の横にいた男は不快そうな顔をしている。
「はぁ?あんた誰?」
「彼女が嫌がってるんで…やめたほうがいいと思います」
「何言ってんのテメー。勝手に話に入ってきてんじゃねーよ」
おお…メンチを切られてしまったよ…。ほとんど距離のない近さで、俺を見下ろしてくる男。
こんな展開、漫画でしか見たことないぞ。まさか俺が実際に経験するなんて。
相手の男は俺より身長も高く、いかつい顔をしていたので迫力がすごい。
やべぇ…涙目になりそう。
「待って!」
彼女のハッキリとした声が聞こえてきた。
こんな大きな声を出すなんて…珍しいな。
目黒は俺の腕を取った。そして、その男に対して一言言い放った。
「この人は…私の大事な人だから」
大事な人…。
そう彼女に思われていたことに、俺は勝手に目頭が熱くなった。
「チッ。そういうことかよ」
その男はそれだけ言うと、イラついた様子でここから離れていった。
「ビックリした…。殴られるかと思った」
「………………………」
目黒は無言でじっと俺を見ている。
何がすごい言いたげな顔しているな…。
それもそうか、いきなり東京から俺が秋田までやってきたから。
「え、えっと…久し振り?でもないか。よ、よぉ」
俺は自然と目黒に再会した感じの雰囲気を出したのに。
目黒はなぜか、スマホに耳を当てていた。
もしかして…どっかに電話しようとしてるのか?
「おい。どこに電話するつもりだ」
「警察に。私のことはるばる東京から追いかけてきたストーカーが目の前にいるって」
「お、おまっ、やめろよ!」
「ウソ。冗談」
冗談って目黒は言ってるけど、顔が無表情だから本気にしか見えないんだよな…。
でも、やっと目黒に会うことができた。
目黒が着ている制服は見たことがあった。東京にいた頃、初めて目黒と曲がり角でぶつかって出会った時に、彼女が着ていた制服と同じ。
本当に秋田の学校に戻ったのか…。いったい、どうして。
俺は目黒に質問したいことが沢山あったが、先に目黒の口が開く。
「なんでスグルがここにいるの?」
「なんでって…お前に会いにきたから」
「どうして?」
「あんな別れ方したら、こっちだって納得いかないんだよ」
「それだけ?」
さっきからすごい目黒は質問で返してくる。
たぶん、俺が本心を言ってないのを見抜いているからか。
ここまで来て、誤魔化す必要はないよな…。
俺はもう、正直な気持ちを彼女に打ち明けた。
「お前に会えなくなるのが嫌だったんだ」
「…そっか」
相変わらず、目黒の反応は冷めている。
これまで何回もそんな彼女の表情を見てきた。
でも、なんだろうか…。
今の彼女は…どこか泣きだしそうにも見えて。
「私はもう、スグルと会うつもりはなかった」
ハッキリと彼女に拒絶されたような気持ちになった…。
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