34話.悲しみからの決意
学校から寮に帰ってくると、寮の中は静まり返っていた。
主に、俺から溢れ出す負のパワーが原因かもしれないが。
目黒が突然いなくなったことに、予想以上にショックを受けていたらしい。
寮のリビングのソファーにもたれかかる俺。視点はどこを見ているか定まっていない。
「………………」
「初川…大丈夫か?」
片桐先輩が心配して、俺に話しかけてくれる。
「えっ?あ、ああ、大丈夫ですよ。ああ…はい、大丈夫です…」
「ほらっ!また目黒ちゃんがこっちに来るかもしれないし!」
冨田先輩も気を遣ってフォローしてくれる。
その優しさがありがたいが…今の俺の胸にはまったく響いてこなかった。
「どうですかね…。なんか意味深な言葉を俺に言ってた記憶があるんで、もう会えないんじゃないすかね…」
「な、なら!初川が目黒の元に会いに行けば…!」
「あいつ、ここに来る前は秋田にいたのは知ってるんですけど、秋田のどこかは聞いてないんで無理っすね。はい…もう無理ですね」
俺はずっと否定的な発言をしてしまった。
片桐先輩と冨田先輩は黙っちゃったし…。
やべぇ、俺がすごい部屋の空気悪くしてるよ…。
自重したいけど、気分がまったく上がらない。
そんなときだった。
俺の頬に、すごい衝撃が走った。
「先輩!」
「ええ…いきなりビンタかよ」
俺はなぜか、後輩の秋元にビンタされてしまった。
めっちゃ痛い…。あとで、頬が赤く腫れてるよ…。
「なにウジウジくよくよしてるんすか!そんなんでいいんすか!?」
「でも…どうしようもできないだろ」
「そんなに目黒先輩のこと引きずってるなら、会いに行けばいいじゃないっすか」
「いや、だから。あいつの今住んでる場所もよくわからないんだって…」
「盛田さん」
すると、秋元は寮の管理人の盛田さんを呼んだ。
なぜに盛田さんを?秋元の考えがわからない…。
盛田さんはこちらに来ると、俺に一枚のメモ用紙を渡してきた。
「はい。これがあの子の今住んでる住所」
「えっ…なんで」
そのメモ用紙には確かに、秋田県のとある住所が書かれていた。
「寮に置いてきた荷物を後で送ってくれってあの子に頼まれたときに、住所控えてあったのよ」
「あー、なるほど…」
「あと、これ」
盛田さんは更に、俺に何かを渡してきた。
これは…一万円札が3枚だと!?
「えっ、こんな大金…いいんですか?」
「なに言ってるんだい。秋田までの往復の新幹線代だよ。あの子に口止めされて、あんたたちにいなくなるのを言えなかったからね。これぐらいはさせてちょうだいよ」
「盛田さんが菩薩様に見えるぜ…」
でも、やっぱり目黒はいなくなることを盛田さんにも口止めしていたのか。
なんでそこまで俺たちに知らせたくなかったのか…。
まぁ、今そのことを悩んでも仕方ないか。
とりあえず、目黒の住んでいる場所と交通費は手に入った。
あとはもう、目黒の元に会いに行くだけだ。
「先輩!当たって砕けろっすよ!」
「初川。失恋しても恥じゃないからな」
「振られたら私が慰めてあげるから〜」
後輩の秋元、片桐先輩、冨田先輩からエールを送られる。
エールというか、初めからなんか期待されていないみたいだな。
まぁ、この人たちなりの応援だと思えば…少しは心も軽くなるか。
「でも、いつ行くかが…」
「そんなの、明日しかないっすよ!」
「えっ…」
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