33話.何も知らなかった
新学期の登校日。
夏休みももう終わってしまった。もう帰ってこない夏休みに、心の中では悲しみの嵐。
あー…また学校生活が始まるな…。吉田は元気にしているだろうか。
学校へ行くときのいつもの時間に起き、身支度を済ませて俺は寮のリビングに下りた。
…目黒の姿がないな。あいつ先に学校に行ったのだろうか。前に俺が先に行ったら文句言ってきたのに…。
まぁ、学校に着いたら目黒に一言何か言ってやればいいか。いつもからかわれている俺が目黒にイチャモンつけれるなんて…なんだかワクワクしてきたぜ。
ーー
ーーーー
学校に到着し、俺は自分の教室に入った。
俺の右隣の席の吉田は既に着席していた。
相変わらず吉田の髪の毛は長いな。すげぇ暑苦しい。
吉田は読書をしているみたいだけど、派手な女の子が表紙のライトノベルを堂々と教室で読めるそのメンタルが羨ましいぜ…。
「うーっす」
「おお!初川殿!お久しぶりでござるな!」
「まぁ、コミケ以来だな」
吉田は相変わらずテンションが高かった。まぁ、これはこれで変わってなくて安心する。
吉田と挨拶を交わして俺も席に座ろうとしたのだが…俺の後ろの席にいるはずの目黒がいなかった。
目黒の机にはカバンも置かれていない。まだ学校に来ていないのか?
あっ、学校のトイレに行ってる可能性もあるな。きっとそうだろう。
「あれ?目黒ってまだ来てない?」
俺は一応、吉田に確認を取ってみた。
「目黒殿の姿なら、見てないでござるよ」
てことは、やっぱり目黒は学校にまだ来ていないのか…。
なんか心配になってきたな。こんなこと、今まで一度もなかったから。事故にあっていたりしていたら怖いし。
朝のホームルームが終わったら、念の為に寮にいる管理人の盛田さんに連絡してみるか…。
その後、チャイムが鳴り、すぐに担任の玉置先生が教室に入ってきた。
目黒はまだ来ていない。
朝のホームルームが始まり、玉置先生から色々話があった。
夏休み明けの小テストがあること、もうすぐ体育祭があるから各自出場する種目を決めること。
そして…
「えっと…皆さんにお伝えしなくちゃいけないことがあります」
玉置先生の声のトーンが変わった。
そのせいか、すこしざわついていたクラス内も急に静かになっていた。
たぶん誰も、玉置先生が次に言うことを想像していなかったと思う…。
「目黒さんですが…前の学校に戻られたので転校しました。目黒さん本人からみんなには転校のこと言わないで欲しいと頼まれたので、急な発表となってしまいました…」
……え?なに?先生はなんて言った?
目黒は前の学校に戻った…?転校…?
玉置先生が何を言っているのか理解できなかった。いや、たぶん俺は理解したくなかったんだと思う。
「えー!?」「そんなー!」
っと、そんな声がクラス内に飛び交う。
みんな突然のことに動揺していた。
勿論俺もその一人で…。俺は目黒が転校していなくなってしまった事実を、まったく受け止められなかった。
きっと俺は、呆然とした様子でいただろう。
「………………」
「は、初川殿。初川殿は目黒殿が転校することを知っていたでござるか…?」
「いや…俺も何も知らなかった…」
本当に、何も知らなかった。
目黒が転校するなんて。
この前までずっと一緒にいたのに…。なんで一言言わないんだよ…。
俺はホームルーム中なのにスマホを開いた。目黒に連絡して事実を確かめようと。
しかし、今更気づいた。俺は目黒の連絡先すら知らなかった。
俺と目黒の繋がりは、もうなくなったのである…。
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