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絶対零度系のラブコメ  作者: もこもこケーキ
31/36

31話.児童養護施設

 

 電車で2時間半、バスで30分かけてやっと目的地の児童養護施設にたどり着いた。

 バスの中で途中眠りそうになったぜ…。危ない危ない。

 今日は天気が曇り空だったから、涼しくてよかったことだけが幸い。

 

「やっと着いた…」


 俺がそう言うと、横にいた目黒(めぐろ)もコクリと頷いていた。

 目黒(めぐろ)は珍しく後ろ髪を一つに結んでいた。初めて見る髪型だな。ちょっと目黒のうなじの部分も見えてドキッとするが。 

 彼女は七分丈のデニムパンツに半袖の白のTシャツを着ていた。夏らしさを感じる。


「トイレとか大丈夫か?」

「うん。大丈夫」

「とりあえず、中に入ってみるか」


 今日は施設の夏祭りだからか、入口の門は開いていた。

 インターホンを押さずにそのまま敷地内に入ると、駆けっこしている子どもたちと俺は目が合った。


「あっ!スグルだ!」

「お前…呼び捨てかよ」


 俺のことを呼び捨てで読んできたのは、施設で暮らしている(まもる)という男の子だ。今年で小学5年生か。

 前から俺が施設に遊びに行ったときに(まもる)と会ってるから、お互い顔なじみではある。


「なんで来たの!?暇なの!?」

「一応招待されたから見に来たんだよ」


 すると、(まもる)の表情が固まった。あんなにさっきまではしゃいでいたのに。

 (まもる)の目線は…俺の隣にいる目黒(めぐろ)に向けられていた。

 

「す、スグルが彼女連れてきてる!?」

「えっ、いや、彼女では…」

「みんなに言いふらしてこよーっと!!」

「ちょっ!おまっ、待ってくれ!」


 俺の呼び止めも虚しく、(まもる)は子どもたちが集まっている方に走って行った。

 ああ…そこの集団の中にも顔見知りが何人かいるよ…。絶対あとで冷やかされる…。


「行ってしまった…」

「元気だったね」


 目黒(めぐろ)は俺の彼女と誤解されたのにも関わらず、いつもと変わらないクールな表情をしていた。

 こいつ…嫌じゃないのか?あっ、子ども相手だから大目に見てあげてるんだろうな。


「とりあえず、受け付けでパンフレット貰ったから…。どこ行きたい?」

「スグル。カレーが食べたい」

「食欲旺盛だな」


 俺と目黒(めぐろ)は一緒に施設の建物の中に入った。

 あー…毎年来てるけど、なんかここに来ると懐かしい気持ちになるな。この施設で過ごした時間はたった数年だけど、記憶の中に深く印象に残っていた。

 お祭りとあって食べ物屋があったり、輪投げなどのミニゲームをするコーナーもあった。

 ここで生活している子どもたちや近隣の住民が参加していて、とてもいい雰囲気だった。

 

「あ、竹森(たけもり)先生」


 廊下を歩いていると、俺がお世話になった女性の職員の先生がいた。あの頃はイタズラとかしてよく怒られたけど、温かい先生だったな…。

 もう50代くらいだろうか。昨年会ったときよりも白髪が増えたなぁ。

  

「あら、スグル君来てくれたのね。元気にしてた?」

「はい。なんとか高校もちゃんと通えてます」

「あのイタズラっ子のスグル君ももう高校2年生なんて、成長するのは早いわね〜」

「そ、そうですかね」

「えーっと、隣にいる方は…」


 竹森(たけもり)先生も俺の横にいる目黒(めぐろ)の存在が気になるようだ。


「あ、えと…彼女は…」


 同じ寮に住んでいる、同級生の目黒(めぐろ)です…と、俺は紹介するはずだった。

 



 だが、それはできなかった。

 竹森(たけもり)先生はいきなり、何かを発見したかのように目を大きく見開いた。

 そして、目黒(めぐろ)の前に行き、目黒の両手を握って…。





「も、もしかして…(あおい)ちゃん!?」



「えっ?」


 いったい何が起きているのか…。

 俺は状況が全く理解できていない。

 竹森(たけもり)先生が目黒(めぐろ)のこと(あおい)ちゃんって呼んだ…?

 確かに、目黒の下の名前は(あおい)だ。

 なんで竹森(たけもり)先生は目黒のことを知っているんだ?

 もしかして、竹森(たけもり)先生が人違いしてるだけじゃ…。


 しかし、目黒(めぐろ)の反応を見たとき、それはないことを俺は悟った。


「…はい、先生」


 目黒(めぐろ)竹森(たけもり)先生のことを、『先生』と呼んでいたのだ…。



最後まで読んでいただきありがとうございます!

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