30話.お便り
もうすぐ夏休みも終わる。そろそろ新学期に向けての準備もしなくてはいけない。
はぁ…嫌だな。永遠に夏休みが続いてくれないかな。
二学期って長いし、行事とかいっぱいあるから陰キャの俺は憂鬱である。
「あんたにお便りがきてるよ」
寮のリビングでのんびりしていたら、盛田のおばちゃんに一通の封筒を渡された。
確かに宛名が俺の名前になってるな…。
封筒の上の部分をハサミで切って、俺は中身を出してみた。
「えー…こんな夏休み終わる前に招待されても」
それは、群馬にある児童養護施設からのお便りだった。
そこは昔俺が過ごしていた施設だ。親戚の家に行くまでの期間だったけど。
その時一緒だった同級生とかは、もうみんな別々になってしまっている。まぁ、その頃お世話になった施設の先生とかはまだ残ってるから知ってるけども…。
施設の中で夏祭りするから来てくれって内容か…。断りづらいけど、遠いんだよな…。
「スグル、なにがきてたの?」
「…いきなり背後から現れるなよ」
後ろからにゅっと目黒が現れた。ほんといつの間にか背後にいたり横にいるからビックリする。
「昔お世話になった児童養護施設からお便りがきたんだ。なんか今年も施設で夏祭りするから来てくれって」
「えっ。先輩って、施設にいたんすか?」
リビングのテーブルに座っていた後輩の秋元が反応した。
そういえば、秋元は俺が児童養護施設にいたことを知らなかったんだな。
「小さい頃に両親亡くした後、親戚に引き取られるまではそこで暮らしてた」
「そうだったんすね…」
あれ?なんか部屋の空気が重くなったな…。
いつも元気ハツラツの秋元も珍しく大人しそうにしてるし。
誰か空気を変えてくれ…。目黒の一発ギャグでも…。
「初川は去年も行ってたんだから、また行ってくればいいんじゃないか?」
この微妙な空気を突破したのは、片桐先輩だ。
さすが先輩。頼れる兄貴だぜ…。
「そうそう。またお土産よろしくね〜」
「えー…もう行くの決定ですか…」
冨田先輩にもお土産を頼まれてしまったので、俺は児童養護施設のお祭りに行くことが決まった。
群馬か…。東京からだと、目的地まで電車やバスで片道3時間はかかるんだよな…。
明日は早起きするか。
ーー
ーーーー
次の日。俺は朝7時に起きれた。目覚ましにしっかり反応して目を覚ませたなんて優秀だぜ。
身支度を済ませ、一応寮の管理人の盛田のおばちゃんに声をかけてから玄関に向かった。
さて…これから出発だな。電車に乗ってる間、何をして過ごすか…。
「スグル」
「ん?…目黒か。なんだ、見送りだなんて珍しいな」
目黒が玄関まで下りてきてくれていた。
朝早くから起きてくれて俺を見送ってくれるなんて…なんかすごい嬉しいな。目黒にもお土産をちゃんと買ってこよう。
しかし、俺のそんな考えは浅はかであったようだ…。
「ううん。私もついて行く」
「……なぜ」
「私も行きたいから」
「いや、お前は俺の養護施設とは関係ないだろ。それに、こっからだと片道3時間くらいかかるから寮にいたほうがいいって」
俺についてくるって…正気か?
俺は必死に目黒がついてこないように説得する。
だって、こんな美少女様を連れきたなんて施設の先生とかに知られたら、なんてからかわれるか…。
目黒は一歩前に出てきた。そして、背伸びして俺の耳元に顔を寄せてくる。
な、なんだ?こ、ここで何をしようとするんだ!?
「…コミケ」
「え」
「コミケの猫耳の件について、私はまだ許してない」
「…早く準備してこいよ」
許してないって怖いですね…。
でも、コミケの件については圧倒的に俺が悪いので、その条件を提示されたら俺は食い下がるしかなかった…。
目黒と一緒に行くのか…。どうなってしまうのか…。
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