29話.ヤキモチ
「ただいま〜」
冨田先輩に実は彼氏がいるみたいな話を4人でしていたら、ちょうど冨田先輩が寮に帰ってきてしまった。
やべぇ、すごいタイミング悪いときに帰ってこられてしまった。
片桐先輩なんか、急いで階段駆け上がって行ったし。逃げるの早いな…。
「お、おかえりなさい」
冨田先輩がリビングに入ってきたところで、俺は噛みながら冨田先輩に挨拶した。
「んー?」
「ど、どうしたんですか?」
「なんか反応が余所余所しい気がするんだけど〜」
これが女の勘ってやつか…。鋭すぎるぜ。
いや、単純に俺の反応と様子が不自然すぎるだけか。
「いやー、そんなことないですよー。いつも通りですってー」
「冨田先輩に彼氏がいるって知って、動揺してるらしいっすよ!」
「あ、秋元お前…!?」
秋元が余計な一言を入れてくる。
その言い方だと、俺が冨田先輩のことずっと恋心寄せていたみたいに捉えられるからやめてほしい。
俺が動揺しているのはあれ。身近にリア充がいたことへの衝撃よ。
「あー、それね。さっき別れてきちゃった♪」
冨田先輩は、まるでアニメのヒロインがお花畑をバックをして満開の笑顔になるような表情をしていた。
さっき別れたって……え?どういうこと?
男女交際の終わりって、そんな軽いノリで終わるものなのか!?
「どどどういうことですか?」
「最近LINEも返してくれなかったし、会ってもつまんないから、もう別れよう〜って」
「そうだったんですね…」
俺にとっては未知の世界の話を冨田先輩はしてきた。
やっぱ、付き合うって色々と楽しいことばかりじゃないんだな。
ただ、これで冨田先輩もこちらの非リア側になったのでそれはそれでいい気分だな。
すると、冨田先輩はいきなり俺の肩に手を置いてきた。いきなりのボディタッチに動揺する俺。
「やっぱり付き合うなら、初川君みたいな男の子がいいなぁ」
「ええ!?」
そ、そんな、俺みたいなやつと付き合いたいって…今日はエイプリルフールか!?
「素直で優しそうだし、いつも初々しい反応してくれそうで〜」
「そ、そうですかね」
「うわぁ…先輩わかりやすいぐらいに嬉しそうっすね」
秋元は俺の顔を見て「うへぇ」とか「やば…」とか言っていた。
いや、だってな…。冨田先輩って普通に可愛いからな。可愛い人に褒められたら嬉しいだろ!
「ねぇ、私たち付き合ってみる?」
「え、あの…お、俺は…」
冨田先輩がどれくらい本気で言っているのかわからない。
俺がここで頷いたら、リア充への世界がやってくるのか?新世界への開拓か?吉田に自慢できそうだな…。
昔の俺だったらきっと、一つ返事でオッケーしていただろう。
でも、今の俺はきっと…。
「ダメ!」
大きな声がリビングに響き渡った。
その声を出したのは…目黒だった。
目黒は珍しく感情的になっていたのか?俺と冨田先輩の間に無理やり入ってくる。
「目黒…?」
「スグルは私の…」
私の…私のなんだよ。
ま、まさか、そういうことなのか!?
目黒が冨田先輩に煽られてヤキモチ妬いたってことなのか!?
俺を巡って!?
そ、そんなことが起きるなんて…。
「スグルは私の所有物だから、貸し出し禁止」
「貸し出し禁止って、俺は図書館の本じゃねーぞ…」
なんだよ…無駄に期待したじゃねーか。
所有物ってもはや物扱いかよ…。
俺はガックリ肩を落としていると、冨田先輩は目黒に
「ウソウソ〜。初川君と付き合いたいなんて冗談だって〜」と言っていた。
やっぱ冗談だったのかよ…俺は更に肩を落とした。
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