27話.夏休みの宿題
「やべ…ぜんぜん終わってねぇ」
学校から夏休みの宿題をたんまりと出されていたのに、俺はまだほとんど終わっていなかった。
なぜ休むための期間なのに宿題を出されるのか…こんな世界間違ってるぜ!
「スグル」
突然にドアをノックされたかと思えば、目黒が部屋の中に入ってきた。
目黒が俺の部屋を訪れてくるのは、もやは日常茶飯事である。
目黒の今日の格好…けっこうラフだな。紺のショートパンツから出る生足が色っぽかった。
「あー…どうした?」
「夏休みの宿題が終わってないから手伝って」
目黒も宿題終わってなかったのかよ…。
計画的にそういうのを取り組んで、もう終わらせてあるタイプの人間だと思っていたのに。
目黒も俺と同じで面倒くさがりやか。
「いや、俺も宿題終わってなくて、今必死にやってるところなんだが」
「そうなんだ」
「悪いけど、お前も一人で頑張れよ」
「じゃあ、一緒にやろうよ」
「…俺の話聞いてたか?」
「スグルのしんどそうな顔を見ることができれば、私も頑張れる気がする」
「お前…悪趣味だな」
俺のしんどそうな顔って、どんな表情だよ…。
俺が断っても目黒は引かないと思ったので、目黒と一緒に夏休みの宿題をやることを了承した。
場所はリビング。テーブルに向かい合う形で座るもんだと思ってたら、目黒は俺の真横に座ってきた。
距離が近い…。無駄に緊張してくるぜ…。
「目黒は宿題何が残ってるんだ?」
「夏休みの思い出についての作文」
「それだけかよ…。そんなの適当に書いて提出すればいいんだよ」
「わかった」
目黒は作文用紙をテーブルに広げると、スラスラと文字を書いていく。
おっ、順調だな。やればできるじゃないか。
それも束の間、目黒はいきなり言葉にしながら作文の作業をし始めた。
「『ある日、私は家の中でスグルに壁ドンされ、愛してるよと耳元で囁かれ…』」
「ちょ、ちょっと待て!!」
俺は思わず叫んでしまった。
目黒に壁ドンとかしたことねーし!しかも、愛してるなんて囁やけるわけないだろ!?
「なんで止めるの?」
「いくらなんでも話を脚色しすぎだからだ!」
「だって、適当でいいって言うから」
「もっとこう…友達と遊びに行って楽しかったとか、そういうのでいいんだよ」
「わかった」
目黒はやっと理解したようで、新しく作文を書き始めた。
さすがに二回目はないだろう…と、俺は油断していた。
「『スグルと吉田と一緒にコミケに遊びに行き、スグルに無理やり猫耳を付けられ、私は沢山の人に写真を撮られるという辱めを…』」
「そ、それは事実かもしれないけどやめてくれ!頼む!」
これに関しては事実だから、俺は何も目黒に言えないはずだった。
だが、この件について他の人に知られたくはない。
もしも目黒に猫耳を付けさせたなんてバレたら…俺は変態認定されてしまうだろう。そうなったらもう学校に通えない。登校拒否。
作文って担任の先生が確認しそうだよな…。
もっとまともな内容じゃないと怒られそうだ。
「スグルの文句が多い。これじゃ何も書けない」
「せめて先生とか、他の人に見られても大丈夫な内容にしてくれよ…」
「じゃあ…」
目黒は一呼吸置いた。
そして、俺の顔をじーっと見つめてくる。
俺の顔になにか付いているだろうか…。この距離で目黒に直視されるのは恥ずかしかった。
「『夏休みは、スグルとずっと一緒にいられて楽しかった』」
「ま、まぁ…それなら…大丈夫だと思う」
「『来年の夏も一緒にいよう、と二人は約束した…らしい』」
「おい…勝手に捏造して死亡フラグ建てるな」
目黒が死亡フラグを建てると、本当に俺がフラグを回収しそうな雰囲気があった。
一度作文を担任の先生に提出する前に、俺に確認させてもらえないかな…。
最後まで読んでいただきありがとうございます!




