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絶対零度系のラブコメ  作者: もこもこケーキ
22/36

22話.居残り

 

 一学期も終わり、夏休みに入った。

 寮のメンバーは夏休みになると、だいたいは実家に帰省する。

 今年も俺は寮のメンバーを見送る係をやっていた。


「じゃあ、初川(はつかわ)。あとは頼んだぞ」

「へい」


 俺は玄関で大きなカバンを持った片桐先輩を見送った。


「先輩!お土産は期待しないでくださいね!」

「へいへい」


 俺は玄関でリュックサックを背負った秋元(あきもと)を見送った。


「おじゃま虫がいなくなるから、目黒ちゃんと二人きりになれるね〜?」

「いや…あいつも帰ると思いますよ」


 俺は玄関でキャリーケースを引く冨田(とみた)先輩を見送った。なんか冨田(とみた)先輩にからかわれたけど、気にしない。


「また今年も一人か…」


 そんなことを呟きながら俺はリビングに戻ると、キッチンの換気扇のところでタバコを吸っている盛田(もりた)さんと目が合った。


「あんたは帰んなくていいのかい?」

「いやぁ…帰りづらいですし」

「まぁ、たまには顔見せてやりなよ。元気だってわかるだけで嬉しいもんよ」

「そういうもんすかね…」


 長い休みの日に実家に帰る選択肢。自分にとってそれを使うのは心境的に難しかった。

 親戚の家に顔だけ見せるのもな…。

 重い足取りでとぼとぼと自室に戻ろうとすると、部屋の前の廊下で…俺は出くわしてしまった。


「えっ」

「なに?」


 目黒(めぐろ)が普通に寮の中にいた…。

 全然帰省するような雰囲気は全く見えない。

 俺が目黒(めぐろ)を発見して変な声が出てしまったせいか、目黒(めぐろ)は首を傾げていた。


「スグルの反応が変」

「いや…思わずビックリしてな。お前は夏休みの期間に実家に戻らないのか?」

「戻らないよ」


 目黒(めぐろ)は即答だった。

 そして、次に彼女の口から出てくる言葉が衝撃的であった…。


「だって、実家はないから」

「お、おお。なんか…すまん」


 実家はないってことは、そういうことなんだろうな…。

 目黒(めぐろ)もきっと複雑な家庭環境なんだろうと、俺は勝手に察した。


「スグルは帰らないの?」

「まぁ、俺も帰る家は無いというか…。小さい頃に両親亡くしてから、親戚の家を転々としてたから」

「そうなんだ」

「無駄に暗くなるような話して悪かったな」

「ううん」


 すると、目黒(めぐろ)は柔らかい表情になっているようにも見えた。俺の錯覚か。


「スグルのこと知れて嬉しい」


 またこいつは期待させるような一言を…。

 俺は無駄に心拍数が上がっていただろう。


「そういえば、目黒(めぐろ)ってここに来る前は、どこにいたんだ?」

「秋田」

「秋田かー。秋田!?」

「ビックリしすぎ」

「いや、だって…そんな遠くにいたとは予想できないだろ」


 うちの寮や学校のある東京に来る前は、目黒(めぐろ)は秋田にいたとか驚きだ。

 もしかして、秋田美人というものなのだろうか。目黒が色白で美少女なのも納得できる。


「生まれも秋田なのか?」

「ううん」

「えっ、じゃあ、生まれは…」

「スグル」


 そこで目黒(めぐろ)は一歩俺に距離を縮めてきた。

 目の前に目黒の顔がある…。な、何をするつもりだ、


「め、目黒(めぐろ)?」

「教えない」

「は?」

「秘密」


 イタズラっぽい笑顔を浮かべる目黒(めぐろ)

 そんな顔されたら…これ以上何も聞けないだろ。

 目黒(めぐろ)はそのまま自室の中に入っていった。

 この夏休みの期間、寮には俺と目黒しかいない…。なんだろう、変に緊張してきた。


「あれ…?あいつの笑顔を初めて見たような…」


 ふと目黒(めぐろ)の顔を思い出す。あの笑顔は幻だったのだろうか…。


最後まで読んでいただきありがとうございます!

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