21話.草食系
目黒と一緒にベッドにいた事件の翌日。
俺は朝早くから寮を仕切っている盛田のおばちゃんに呼び出されていた。
寮の使われていない物置部屋みたいなところで、俺は盛田さんと二人きりにされた。
「まぁ、よくはないねぇ」
「…ですよね」
昨日の件について、盛田さんは感想を述べた。
同じ寮の…しかも男女が一緒のベッドにいたのは、なかなかに深刻な問題か。
「あんたたちも付き合ってるなら、場所を選ばないと」
「えっ、いやっ、つ、付き合ってないんですけど」
「はぁ?付き合ってないもないのに一緒のベッドで寝ようとしてたのかい?」
「…そういうことになりますね」
盛田さんは呆れたような顔をしていた。それは、俺に対して『情けない』とでもいうメッセージなのだろうか…。
「まっ、今後はうちの寮で昨日みたいなことしなきゃいいよ」
「えっ…それでいいんですか?」
「私も若い頃はあんたたちみたいに青春したものよ」
盛田さんは懐かしそうに語っていた。
「青春って…いつの時代っすか」
「なんか言ったかい?」
「いえ、別に」
特に盛田さんからはお咎めなしに終わった。目黒と接触禁止とか、最悪退寮まで考えていたが…意外と優しく見てもらえたんだな。
盛田さんから解放されたので物置部屋からリビングに移動すると…目黒がソファーに座っていた。
昨日のこともあってか、目黒のことを見ると心臓がドキッとしてしまう。
リビングには目黒以外いないか…。
「あ…目黒」
「スグル?」
目黒に声を掛けると、目黒はこちらに顔を向けてくれた。
「盛田さんから話あったか?」
「うん」
「まぁ、そういうことだから…昨日みたいなことはもう無しってことで」
「そうだね」
目黒からしてみれば、たぶんそういう男女関係とかまったく関係なく、ただ部屋にいたGが嫌だったから俺のベッドを借りようとしていただけなんだろう。
まぁ、俺は目黒から男として見られていないということでもある。
ふっ…なんだか悲しくなってきたぜ。
「ねぇ、スグル」
「ん?」
目黒がじーっと俺の目を見つめてくる。
「昨日…キスしようとした?」
俺は口から変な声が出そうになった。
正直昨日のことについては今でも記憶があやふやなのに、目黒のその一言で一気にその場面が頭の中で再現されていく。
「いや…き、記憶があやふやで…」
「そっか」
俺は適当に嘘を付いた。本当は昨日の夜は…その場の雰囲気に飲まれていたけど。
とりあえず、ここにいるとまずい。これ以上目黒に追及されるとボロが出そうである。
「スグル」
リビングから立ち去ろうとしたとき、俺は後ろから目黒に呼ばれた。
「今は誰もいないよ」
思わず足が止まってしまった。
目黒のその言葉の意味が、どうしても自分の都合のいいものに捉えてしまう。
キスしようとしたか聞かれて、今は誰もいないって言われたら…
俺は自然と目黒の方に体が動いていた…。
「あー!昨日交尾してた二人がまた一緒にいるっす!!」
急に大きな声をあげながら後輩の秋元が入ってきた。
正直…助かった。あのまま目黒と二人きりだったら、俺は何をしていたか…。
「交尾って言い方なんだよ…。あと、俺と目黒は昨日の夜何もしてないからな!」
「狼先輩の言うことは信じられないっすね!」
「狼って…お前例えが古いな」
秋元は俺に威嚇しながら、俺と目黒の間に入ってきた。
なぜ俺が目黒に手を出そうとしている立場になっているのか…こんな草食系男子代表なのに。
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