20話.同じベッド
夏なのに今日は体育の授業でマラソンを走らされた。
こんな炎天下の中で走ったら死ぬぜ…。
俺は寮に帰ってからもヘトヘトで、夕飯を食べて風呂に入ったら自室のベッドに倒れ込んだ。
もう時刻は夜の10時か…。早いけど疲れてるし、このまま寝てしまうか。
「今日はぐっすり眠れそうだ…」
自室の電気を消そうとしたところで、ドアがノックされた。
こんな時に…。早く寝かせてくれ。
「…はい」
「スグル」
俺はドアを開けると、目の前にいたのは目黒だった。
白のパジャマが似合ってるな…。なんかいつもより可愛く見えるのはパジャママジックか。
目黒はなぜか知らないが枕を抱えていた。
「なんだ…どうした?」
「ベッド貸して」
「…は?」
急に俺のベッドを借りたいと言ってくる目黒。
あまりの予想してなかったことに、頭の整理が追いつかない。
「言ってる意味がわからないんだが…」
「さっき私の部屋にGが出てきて…今も私の部屋にいるかもしれない」
「それで」
「そんな状況で一晩過ごせない」
「お前の言いたいことはわかった。だがそれなら、俺の部屋じゃなくて秋元や冨田先輩の部屋で寝ればいいだろ」
普通に考えれば、男の俺ではなくて女性陣に頼むのが一番いいだろう。
高校生の男女が同じベッドで一晩を過ごす…。絶対によくないなこれ。
しかし、目黒は首を横に振ってくる。
「それだと、あの二人に迷惑を掛ける」
「俺に迷惑を掛けるのはいいのかよ…」
「スグルと一緒に寝たい」
「お、お前…誤解されるような言い方するなよ」
「ダメ…?」
「いや…それは」
「今日だけでいいから」
「……」
たぶん俺は疲れていたのだ。
だから、自分のベッドの半分のスペースを目黒に貸したのは、疲れが原因で頭が回らなかったからだ。
俺は必死に言い訳ばかりを頭の中に巡らせていた…。
「…じゃあ、寝るぞ」
「うん」
自室の電気を消して、俺はベッドに入った。
隣には…目黒がいる。
なんだこの状況…同じベッドに同級生の女子がいるとかカオスすぎる。寝返りとか絶対うてないだろ…。
俺は目黒がいる方向とは逆の方に体を向けていた。
10分ぐらい経っただろうか…。
もう目黒も寝ているだろうか。寝息とかはまったく聞こえてこないけど。
俺は体の向きを変えたくなったので、目黒のいる方に体の向きを変えた。
「……………」
「……………」
…部屋は暗いはずなのに、人の顔ってぼんやりと見えるんだな。
目黒はまだ寝てなかった。
普通に目を開けて、俺のことを見ている。
こんな近い距離で目黒と顔を合わせることなんて今まで一度もなかった。
もう少し近付いたら、鼻先が触れてしまいそうなそんな距離。俺は目黒から目が離せなかった。
心臓の鼓動がどんどん速くなっているのがわかる。何か自分の中で守っていたものが崩れそうになっていく。
どっちから近付いているかはわからない。もしかしたら…お互い顔を近付けているかもしれない。
俺と目黒の口が、あともう少しで触れ合いそうになっていた…。
「ギャー!Gが出てきたっすー!!!!片桐先輩なんとかしてくださいぃぃぃ!」
…なんか廊下からすごい叫び声が聞こえるんだが。
どうやら、後輩の秋元の部屋にもGが出現したらしい。ていうか、目黒の部屋にいたやつが秋元の部屋に移動しただけだと思うが。
「いや、俺も虫はダメなんだ…」
「今更何カッコつけてるんすか!?」
「初川君なら退治してくれるんじゃない〜?」
「!?」
冨田先輩が俺の名前を出しやがった…。
これはまずい。今自分の部屋に入ってこられたら、俺と目黒が一緒のベッドに入って寝ていることがバレてしまう。
「そういえば、初川の姿を見ていないな」
「たぶん、自室にこもってるんすよ!今呼んでくるっす!」
このままだと、秋元が俺の部屋に乗り込んでくる…!
俺は急いで部屋の明かりをつけた。
「め、目黒起きろ!ていうか、隠れてくれ!」
俺は必死にベッドにいる目黒に呼びかけた。
「ごめん…眠くなってきた」
「くそっ、こんな時に!」
「先輩!緊急事態っす!」
…まるで、時が止まったかのような錯覚を覚えた。
俺の部屋に入ってきた秋元。ベッドの上に俺と目黒が二人でいる状況。
スローモーションみたいに時間が遅く感じた。
「えっ……初川先輩と目黒先輩が一緒のベッドに…」
「あ、秋元!これは違うんだ!これには深いわけがあって…」
秋元はヘニャヘニャになりながら、その場に倒れてしまった。
なんで気絶するんだよ…。ほんと秋元はそういう耐性がないらしい。
「今なんかすごい音がしたが…あ」
「なんでさえちゃんが倒れてるの…えっ」
「か、片桐先輩、冨田先輩…」
続けて俺の部屋に入ってきた片桐先輩と冨田先輩。
二人も、見てはいけないものを見てしまったかのようなリアクションをしていた。
ああ…明日の朝、絶対問題になってる…。
最後まで読んでいただきありがとうございます!




