17話.プール②
「じゃあ、各々自由行動で。解散!」
寮のメンバーが全員揃ったところで、片桐先輩がそう宣言した。
え、まじかよ。こんな場所で自由行動って一番苦手なんだが…。
とりあえず適当にプールサイドを歩いていたら、目黒と秋元がプールの中にいた。
なんかあの二人楽しそうだな…。目黒もいつもよりはしゃいでいるように見える。
「なに見つめてるの〜?」
「と、冨田先輩!?」
急に俺に声を掛けてきたのは、冨田先輩だった。
くそ…ドキドキする。隣りに色気たっぷりのグラビアアイドル顔負けのスタイルと美貌を持っている人がいるとか落ち着かない。
冨田先輩は俺の動揺など気にせずに話しかけてきた。
「さっきから、目黒ちゃんばっかり見てないかなぁ?」
「い、いやそんなことは…。ただ、目黒がピンク系の水着を着てきたことに驚きというか…」
「あー、あれはね。私が目黒ちゃんにオススメしたやつなんだよ〜」
「えっ?」
「お店行ったときに『これ着たら、絶対初川君喜ぶわよ〜』って言ったら、目黒ちゃんすごい嫌そうな顔して買ったの」
なんで目黒は冨田先輩に勧められたものを、嫌そうな顔してまで買ったんだよ…。
しかし、今この場で目黒のあの水着姿を見ることができたのは冨田先輩のおかげなのか…。
冨田先輩グッジョブです。
その後、俺もプールの中に入って泳いだり、目黒にジュース買わされたり、秋元にアイス奢らされたりした。
あれ?俺パシられてね?
「初川先輩アイス溶けてるっすよー!」
「真夏なんだし仕方ないだろ…」
屋根のあるベンチのところで俺と秋元は休んでいた。
けっこう直射日光がきついな…。目黒は色白だけど大丈夫なのだろうか。
「ん?そういえば、目黒の姿が見えないな…」
「ほんとっすね…。あっ!」
秋元が大きな声を出していた。
「どうした?」
「せ、先輩、あそこ…!!」
秋元が指差す方向に目をやると…目黒がいた。
目黒はアイス屋の近くにいるみたいだが…ナンパされている?
遠くにいるのでぼやっとしかわからないが、複数人の男に囲まれているように俺は見えた。
「あ、あの!」
…あれ、俺何してるんだろう。
気付いたら、勝手に目黒のところまで走っていた。体が勝手に動いたのだ。
目黒がナンパされてたらどうする…相手がヤンキー系だったら…あとで裏に連れ込まれてボコボコにされたら…
ええい!思うがままよ!
「スグル?」
目黒の呼びかけにも反応できないほど、俺は頭も視界も真っ白だった。
「お、俺の彼女になにか用ですか!?」
今思えば、なぜこんなセリフを俺は吐いてしまったのか…。
「…………………」
目黒は俺の顔を見上げるようにじーっと見つめていた。え、何その反応、なんかおかしかったのですか。
だが、俺の視界がクリアになるにつれて、状況が把握できた。
目の前にはマイクを持ったリポーターらしき男の人と、でっかいカメラを担いでいるカメラマン。そして後ろには音声担当らしき人。
も、もしかして…目黒はテレビのインタビューを受けていただけなのか!?
「おっと!彼氏さんの登場ですね〜!今日はこのプールにデートで来たんですか?」
リポーターの人がぐいぐい俺に質問してくる。
やべぇ、なんでこうなった。しかもこのリポーターの人見たことあるよ。県内放送のテレビ番組で有名な人だよ。確かこの放送って生放送だったような…。
俺は一気に顔が青ざめていただろう。
「え、いや、その、あの、こ、これは、えーっと…じ、実は違くて…」
「スグル、暑いから早くプールに入ろ?」
こんな時に限って、目黒は腕を絡ませてきた。
くっ…腕に柔らかい感触が…じゃなくて、余計に誤解されるだろ。
俺と目黒はテレビのインタビューから逃げるように立ち去ったが…生放送…まずいことになった。
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