我慢は心身ともに良くないのです。偶には脳筋さんを見習うべきなのですよ。
ゴールデンウィーク前になんとか間に合った!
という事で投稿させていただきました。
よろしければお読みください。
それは良く晴れた日の朝、珍しくも一早く教室に辿り着いたその者は一番目立つ場所、教壇に立って目を閉じ静かにしておりました。
登校してきた生徒たちはその光景に驚きはしたものの、自分の席に付いていきひそひそとその者の噂を始める。
その者に直接声を掛ける者はほぼおらず、約一名勇気を持って声を掛けたが一言二言言葉を交わしただけで自らの席へと戻っていった。
そしてすべての生徒、いや、約一名だけ謹慎がまだ明けていないから残りの生徒全員が席に着いたあたりでその者は目を開けた。
「いいか、お前ら。これからダンデライオン辺境伯が嫡子として命令する。くだらん平民差別はやめろ、気持ち悪い。不満があるなら勝負して勝て、以上だ!」
「「「「「「「は?」」」」」」」
その者の名はダン・ダンデライオンといい、この国の上位貴族ダンデライオン伯爵家の嫡子だった。
などと授業開始前に起きた出来事を語ってみましたが、ダンさんがすとれーと過ぎて皆さん付いていけてません。
ダンさんも詳しく説明するつもりは無いようで、やり切ったぜ!みたいなドヤ顔で自分の席に戻ってしまいました。
まだ唖然とした表情で動きの止まった皆さんの中、いち早く行動を開始したのはラビリオさんでした。
あ、私は流石だなぁ、という感想はありますけど唖然とはしてませんよ?
唖然とした表情のルビーちゃんとチェルシーちゃんを愛でるのに忙しいから何もコメントをしていないだけなのです。
もしするとしたら、やっぱりルビーちゃんとチェルシーちゃんはきゃわいいのです!になりますね。
「ダ、ダンさん。話が違いませんか?」
「おう、おはようラビリオ」
「ええ、おはようございます。ですから昨夜話した件はどうなったのですか?」
「あ?あんなのやっぱり面倒だろ。だからバシッとだな」
「まずは僕に任せるって話だったでしょう!」
「分かった分かった。じゃあ、こっからは全部ラビリオに任せるわ」
「この状況で丸投げですか!?」
なんだか話し始めたお二人ですが、ちょっと気になりましたので魔法でちょちょいっと聞き耳を立てていましたらこんな事を話してました。
どうやら昨日寮に戻ってから二人で何やら画策していたようで、でもダンさんがそれを無視して突っ走っちゃったようなのです。
ラビリオさんもまだまだ甘いですね、ダンさんは深く物事を考えない脳筋さんなのですからそういう企み事は向かないのですよ。
なんだか頭を抱えて困っているようですが、相手はラビリオさんですしね、そっとしておいてあげましょう。
「まさか昨日の話からこんな事をしたのかしら、ダンさまは」
「ええっと、おそらくそうじゃないかと」
「端的過ぎてじゃあどうすれば?というのが皆が感じていることじゃないかしら。でも、しばらくは大人しくなるわね」
「そう、ですね。流石にダンさまが直接おっしゃった事ですから真意が読めずに動けないかと」
「なんだか昨夜ラビリオさんと考えてたみたいなのです」
「この距離でよく聞こえるわね。でも、ラビリオさまと相談した割りにはアレなの?」
「ルビーちゃん、アレって言うのは」
「リスティナみたいに脳筋発言って言えばよかった?」
「そ、そっちの方が拙いですよ!」
「ダンさまは気に入ってたみたいだけどね。でもラビリオさまのあの感じだと話した内容を無視してダンさまの独断かしら?」
「それだけじゃなく後はラビリオさんが引き継ぐのです」
「うわぁ、大変そうだわ」
「そ、そんな他人事みたいに。お二人は私たちの事を思って」
「でも、どうせしばらくは何もしてこないんだから大丈夫じゃない?だってダンさまのこの行動にはラビリオさまも絡んでるって言ってるようなものだし」
「そうだと良いんですけど」
うん、チェルシーちゃんは本当に優しいですね、ダンさんとラビリオさんの暴走を心配してしまうぐらいですから。
でもですね、昨日も思わず本音を出しちゃいましたが可愛い娘さんの為に男の子が頑張るのは当然の事なのです。
可愛いは正義!なのですから。
さて、ダンさんの暴走、もとい活躍によってあれだけ煩かったお邪魔虫さんたちが一切近寄ってこなくなりました。
上位貴族であるダンさんが直接介入するという事態に下位貴族さんたちは下手に動けない状況に陥った、という事なのでしょう。
もし今私たちに絡んだりしたら何をされるか安易に想像できちゃいますからね、実例がありますし。
中位貴族であるヤクトワルト伯爵家に連なるレオさんですら停学と自宅謹慎をくらうほどですから下位貴族の方たちだったら、と考えるのは当然だと思うのです。
このまま大人しくして頂ければ私たちも助かるのですが、それは甘い考えでしょうね。
「怖いくらいにピッタリ止まったわね」
「流石にダンさまに逆らってまでしようとは思わないかな、やっぱり」
「でも、この状況もしばらくの間だけだから今のうちに対策を取らないと」
「子息さんたちはしばらく大丈夫なのですよ。それよりも子女さんたちへの対策を考えた方が良いのです」
「殿方たちはレオさまが戻るまでは大丈夫ね、確かに。でも、そうね、令嬢たちは今日の放課後、厳密には寮に戻ってからでも再開しそうよね」
「そうですね。ミレディさまに相談してみますか?」
「それって完全にミレディさまの派閥に入るってことでしょ?私は難しいわね」
「あ、ルビーちゃんのご実家は」
「そういう事なのよ。もし誰かの庇護下に入るとしたらロザリアさまね」
「ロザリアさんは無理なのですよ、ルビーちゃん」
「そうなの?でもなぜなのよ。だってノワール家が総主じゃない」
「ロザリアさんが婚約者である王子殿下以外と交流を持たれないのですよ。間違いなく断られるのです」
「そういえば社交の場でもそうらしいですね」
確かにローズお姉さまの庇護下に入る事が出来れば誰も手を出せなくなるのですが、誰かを傘下に収めるような事は絶対にしないのです。
それは乙女ゲームで孤高の黒薔薇姫という設定を付けられた事に起因しているのですが、群れて何かをしようと思わないのがローズお姉さま。
それは社交会でも同じのようで夜会に参加しても必ずシャルル殿下と共にあり、殿下が参加しない夜会には絶対に出ないという徹底ぶり。
ノワール公爵夫人であるアデレードさまが何とか夜会に参加させようと頑張っているそうですが、それが実ることは今のところないようです。
まあ、乙女ゲーム上だとシャルルルートに突入するとヒロインに立ち塞がる為に殿下が参加しない夜会にも出始めるのですが。
ここまで説明すればお分かりになると思いますが、ローズお姉さまに助けてもらおうとしたらシャルル殿下と仲良くなる必要があってそうなると対立するという無理ゲー状態なのです。
「そう、それだと無理ね。それにしてもリスティナ」
「なんですか、ルビーちゃん?」
「やっぱりあなたって黒の派閥なの?」
「それってリスティナちゃんがノワール家の指示で入学したって事なのですか?」
あ、流石にストレートに話過ぎちゃいましたね。
昨夜頂いた宝物で注意されたばっかりなのにいきなりまずい状況になっちゃいましたね。
ここで否定するだけなら簡単なのですがそうするとローズお姉さまの事を詳しく知っている理由を話さなくちゃいけなくなったいます。
前世の知識です!と正直に話しても電波子ちゃん扱い受けるだけですし、この世界が乙女ゲームの舞台なんて事を言ったら病院に送り込まれちゃいますよね。
ノワール家と関わりがあると話すと私の出生の秘密に辿り着かれては不味いですし、これはどうやって乗り越えましょう。
嘘を言ってもルビーちゃんは鋭いですからバレちゃいますから、ここは本当の事を言うしかないですよね。
よく考えたらお友達であり妹でもあるルビーちゃんとチェルシーちゃんに嘘なんて付いちゃいけないのです!
「そういえば言ってなかったのです」
「やっぱりそう」
「私はロザリアさんをお姉さまにしたいのです!」
「「え?」」
「そう、ローズお姉さまこそが究極のお姉さまなのですよ!」
「ちょ、ちょっとまって、リスティナ」
「え?え?ミレディさま狙いじゃなかったの、リスティナちゃん!?」
「もちろん、ミレディお姉さまもお姉さまなのですよ。至高のお姉さまなのです!」
「ええ!?ど、どういう事なの、リスティナちゃん!」
「ちょっと落ち着きなさい、チェルシー」
「落ち着いてられないよ、ルビーちゃん!だって、私を妹と言ってるのに、他の人、それも二人もお姉ちゃんにしようとだなんて」
「本当に落ち着きなさいよ、チェルシー!?」
「なんでルビーちゃんは落ち着いてられるの!だって私たちは妹」
「違うわよ!何パニックになってリスティナに洗脳されてるのよ、チェルシー!」
「大丈夫なのです。私はチェルシーちゃんもルビーちゃんもちゃんと可愛がるお姉ちゃんだからね!」
「全然大丈夫じゃないわよ!」
「ほ、本当?」
「本当なのです、チェルシーちゃん。私の可愛い妹天使のチェルシーちゃんをずっと愛で続けるのですよ!」
「一人じゃ捌けないわ、この状況!?」
ふぅ、何とか誤魔化せましたね、とっても危なかったのです。
やっぱり誤魔化す時には真実を混ぜるに限りますね、だって自分自身の心に嘘を付かなくてすみますから迫真の演技ができるのです。
あ、でも発言内容は全部本当の事なのですよ。
私はルビーちゃんもチェルシーちゃんもこの先ずっとずっと愛で続けると決めているのです。
こんなに可愛い娘さんたちを手放したり裏切ったりは絶対にしないのですよ!
だってそれが私なのですから!むふー!
「えっと、そろそろ僕の話を聞いてもらってよいかな?」
「あ、ラビリオさん居たのですか」
「やっぱり僕は影が薄いのか!?」
「そろそろ次の授業が始まりますよ?」
「ぐふっ」
うん、なんだかラビリオさんがオチ担当に見えてきました。
このまま攻略対象役から転職してくれたらうれしいのです。
安心して芸人の道に進んでくださいね、ラビリオさん!
そんなこんなでその日の授業も平和な雰囲気で終わり、安全に放課後を迎える事ができました。
朝の発言でもう大丈夫だろうとタカを括っているダンさんはあれから私たちに接触してくることはなく、私たちに誰も近寄らないのを遠目で見ながらドヤ顔してました。
やっぱりこうするのが一番だったぜ!などと考えているのではないでしょうか。
その陰でラビリオさんが頭を抱えてずっと唸ってますからすごく対照的な二人ですね。
自分の席だけでそれをやっていてくれれば良かったのですが、わざわざ私たちの席に近寄ってきてそれですからラビリオさんがちょっとキモチ悪いのです。
しかしその状態のラビリオさんを見て何か悩み事があるのかと心配するチェルシーちゃん。
なぜ悩んでいるのかと解っているから申し訳なさそうにするルビーちゃん。
きゃわいい美少女二人からそういう感じで相手にされて満更でもない様子のラビリオさん。
「はっ!?まさか態とだったのですか、策士なのですよ!」
「また唐突に何か言い出したわね、リスティナが」
「あははははは」
といういつも通りな私たちでいれるくらい誰も近寄ってきませんでした。
厳密に言えば近寄ってこないだけで遠巻きにして私たちの様子を伺っている、いえ、ダンさんの発言の手前何かするのを躊躇して誰が突破口を開くか牽制しあっている状態のようですね。
この状況で無作為に近寄ってくるのは考えなしの馬鹿か頭のおかしい人ですから、流石にそんな勇者さんは居なかったのです。
反対にそういう人たちばっかりだったら思い切った対処もできますから楽なのですけどね。
だってその方たちをダンさんに引き渡せば言い訳を言ったりしても取り合わないでしょうし、貴族と平民がなんちゃらと言い出してもダンさんには意味がないですから自宅謹慎コースなのです。
ある意味それだけで済ませてくれるダンさんは優しい人なのかもしれませんね、ワイルド系な美少年という見た目に反してですけど。
もしこれがダンさんではなくラビリオさんが宣言していた場合の事はあまり考えたくありません。
その場合、間違いなく宗教絡みへと発展しますから、高々一クラスで起きたちょっとした出来事レベルの事でそんな大げさになるなんてたまったものじゃないのです。
それにあまり私が関係することで大事になるとノワール家との繋がりが露見してもまずいですし、醜聞で露見なんて事になったら母共々ちょっとまずい展開なのですよ。
そうなったらいよいよこの国にいれなくなりますから国外逃亡をしなくちゃいけなくなりますね。
国を離れたらローズお姉さまに会えなくなりますし、ルビーちゃんやチェルシーちゃんを愛でられなくなりますから絶対に避けなくてはいけないのです!
でも、きゃわいいお母さんと愛の逃避行はちょっと心が揺さぶられる案件なのです!むはー!
「そういえば今日はミレディさまと会う日よね、チェルシー」
「はい、三時からのお約束です」
「色々聞かれそうね」
「そうですね、おそらく。ダンさまがかばってくださっている事は確実に聞かれると思います」
「うーん、あの感じだと親同士の許嫁というよりミレディさまは間違いなくダンさまを好きよね」
「社交界でも有名な話ですから」
「あら、やっぱりそうなの?ミレディさまは解りやすい反応してるものね」
「そうなのですよ!」
「いきなり加わってきたわね、どこかに行ってたのに」
「綺麗な美少女で高貴なお嬢様なミレディさんが乙女のような反応をするとか、もう、私得すぎて最高なのですよ!むはー!」
「可愛い反応というのは理解できるけど、リスティナの反応は未だに理解できないわ」
「ミレディさまとダンさまの仲の良さはお茶会でも話題の定番ですからね、私もミレディさまは可愛いと思います」
「そうなのです!ミレディお姉さまは普段ツンとしてますけどダンさんにはデレデレな正統派ツンデレさんですしダンさんは口では鬱陶しいみたいな事言っちゃいますけど内心満更でもない誰得なツンデレさんですからすごくお似合いの二人なのです!」
「い、息継ぎもしないでよくそれだけ喋れるわね」
「あ、たまにリスティナちゃんが言うつんでれ?ってそういう意味だったのですね。そういう意味だと分かれば納得ですね」
「なんでそんなところに食いついてるのよ、チェルシーは」
「何を他人事みたいに言ってるんですか、ルビーちゃん。ルビーちゃんもツンデレさんなのですからちゃんと私にデレて私得なツンデレさんとして活動しないとダメなのですよ」
「誰がツンデレよ!」
「あ、確かにつんつんしてますね、ルビーちゃん」
「チェルシーまで何言ってるの!?」
「さあ、今こそデレる時なのです、ルビーちゃん!私をお姉ちゃんと、リーナお姉ちゃんと呼んでください!リーナお姉ちゃん、はい!」
「リーナ、って、言わないわよ!!」
むぅ、もうちょっとで聞けそうでしたが残念なのです。
でも私は諦めませんよ、いつの日にか絶対に私をお姉ちゃんと呼ばせて見せます!
などと誓いを立ている内に女子寮へ到着しちゃいました。
なお、ラビリオさんも途中まで一緒だったのですが何やら用事があるとかで別れたとかどうでもよい話ですね。
「ミレディさまは何か言ってた?」
寮に戻ってから数時間、寮の食堂で合流した私たちは今日も一緒にお食事です。
早い時間帯だったので利用者もまばらでかなり空席が目立つなか、チェルシーちゃんが参加したミレディお姉さまのお茶会の話になりました。
ミレディお姉さまがどういう反応だったのか、何を言ったのかが気になってましたからその話になったのは当然の流れですね。
私としては先日私たちも参加した以後初めてのお茶会ですから雰囲気とかがどうなっているかも気になっていたのです。
何せ緑茶オーレをダンさんが気に入ってしまいましたからお茶は緑茶になっているでしょうし、そのお茶請けもどう変わったか知りたかったのです。
でも、そう思っていたのは私だけのようでルビーちゃんは私たちに関する事だけ聞き始めました。
「えっと、やっぱりダンさまの事で聞かれました。ただ、ダンさまからも今日事情をお聞きになったようなので、それほど追及は無かったですね。どちらかと言えば確認したかったのだと思いますよ」
「ダンさまも婚約者のフォローはちゃんとするのね。いや、しないと面倒事が起きるから面倒でもした、って感じなのかしら」
「リスティナちゃんの言うつんでれさんだからじゃないですか?」
「まだその話を持ち越してたの、チェルシー」
「冗談ですよ、ルビーちゃん。拗ねないでください」
「もう、チェルシーったら」
「むはー!」
「そうね、うん。リスティナが喜ぶからやめておくわ」
「酷いですね、ルビーちゃん!」
「どっちがよ!まあ、いいわ、今更だし。ところで私たちが置かれている状況については何か言ってた?」
「それに付いてですけど、ミレディさまが治めて下さると言っていただいたのですがお断りしました」
「断ったの?そんな事して大丈夫なの、チェルシー?あなたの実家の事を考えたら」
「そうなのですよ、チェルシーちゃん。チェルシーちゃんだけでもミレディさんの庇護下に入ったほうが良いと思いますよ」
何せ本来チェルシーちゃんはミレディお姉さまの取り巻き令嬢Cさんですからね、私たちと一緒にいるほうが不自然だったりするのです。
この世界は乙女ゲームの世界ですからそっちの方が自然なのですが、なぜかちょっとずつ乙女ゲームと違ったところが存在します。
その一つがチェルシーちゃんがミレディお姉さまの取り巻き令嬢ではないという事で、その他ではミレディお姉さまの所属するクラスが違うなど。
本来は私たちと同じクラスなのですが、なぜか違うクラスでしかもレオさんが私たちと同じクラスです。
もっと探せば他にも出てくると思うのですが、魔法やステータスの存在は一緒なのに微妙に差異があるのが不思議です。
実は乙女ゲームの世界とこの世界は似ているだけで別の世界というオチかもしれませんが、それにしても私がヒロインと同じだというのがよく解りません。
このあたりの事を考えていると不安になってきますし普段は深く考えないようにしているのですが、このやり取りで考えてしまいました。
それが表情に出たのでしょう、チェルシーちゃんは私の顔を見て安心感抜群の笑顔を見せてくれたのです。
「だって私たちお友達だから。私だけとかしたくないよ」
「チェ、チェルシー」
「ルビーちゃんは違ったの?」
「ち、違わないわ」
「リスティナちゃんは私に嘘をついたの?」
「そんな事してないのです!」
「だって、ずっと私を愛でるんでしょ、リスティナちゃん?なのに私だけとか言わないでね」
「うん」
な、なんという事でしょう。
本気で、いえ、今までもチェルシーちゃんは可愛い天使さんだと思っていましたが、本当に天使すぎるのです!
そう、チェルシーちゃんのヒロイン力が半端ないのですよ!
感動なのか恥ずかしいからなのか顔を赤くして涙を浮かべるルビーちゃんや、満面の慈愛の笑みを浮かべるチェルシーちゃんを見ても私のテンションがはち切れません。
いつもだったらここで私のテンションは最高潮になっているはずなのですが、それよりもうれしいって気持ちの方が勝っているようで、食事を口に運ぶのも忘れてしまいました。
「「ひゃぁあああああ!?」」
「むはー!」
「ちょ、ちょっと、放しなさいよ、リスティナ!」
「わ、わ、わ、リスティナちゃん、これじゃ食べれな」
でも、本能には勝てなかったようでして、私は気が付けばルビーちゃんとチェルシーちゃんに抱き着いてました。
「ひゃっ!?こら、どこ触って」
「は、放し下さい、リスティひゃっ!?」
「クンクン」
「匂いを嗅ぐなーーー!」
その後、しばらくの間ルビーちゃんとチャルシーちゃんを堪能させていただきました!
ごちそうさまなのです!むはー!
「ご、ごめんなさい」
そんな誰かの声が聞こえたちょっと後にがしゃーん、と陶器でも割れるような音が響きテーブルに残っていた料理が散らばってしまいました。
咄嗟の事でしたからルビーちゃんとチェルシーちゃんに怪我がないように極僅かな防御魔法しか使えず、テーブルの上を守れなかったのです。
テーブルに残っていた私たちの料理の上に見覚えないのない容器が被さっており、今晩のメニューであるシチューがテーブル中に広がっています。
砕けた器の破片も散らばっており、一部私たちの方に飛んできたものは魔法の障壁に当たって床に転がっている。
そして私たちのテーブルの脇には二人の少女が立っていました。
その少女たちの顔色はとても悪く真っ青になっており、目に涙を浮かべて体を震わせている。
男爵位とはいえ貴族の令嬢であるチェルシーちゃんへ粗相をしてしまった事への恐怖だけではなく、何か別のものへの恐怖。
そして私たちへの申し訳ないという罪悪感から二人は今にも倒れそうになっていると見て取れました。
うーん、どうやら貴族さんたちは直接私たちに関わるのではなく、人を使って攻めてくる事にしたようなのです。
こういう方が貴族らしいといえば貴族らしいのですが、だって貴族さんたちは人を使うのがあたり前ですからね。
とはいえ、使われる方も堪ったものじゃないと思います。
だって、この魔法学校に入って同じような悩みと同じような苦労をしている同じ平民を苛めることを強要されるのですから。
「うーん、この手を使ってきちゃいましたか」
そうなのです、平民さんたちが私たちのテーブルに料理を落としてくるという行為に出たのですよ。
表情からさっするに無理やり言う事を聞かされて。
これは、本当に面倒な事になりましたし、本格的に対処しないとまずいのです。
そうしないと、関係ない人まで巻き込んでそれこそ大事になっちゃいますからね。
いよいよ手段は選んでられない状況です。
でも、貴族さんたちも他人を巻き込むとか手段を選んでいないようですからやっちゃっていいはずなのです。
そっちがその気ならこっちもやっちゃうのですよ!
「えっと、リスティナ。気持ちは同じだけど、犯罪はダメよ」
「そ、そうですよ。ここはやっぱり穏便に」
「バレなければ大丈夫なのです!」
「そういう問題じゃないわよ!」
「や、やっぱりミレディさまにお願いしておけば良かったです」
「二人は安心していて欲しいのです。魔法でちょいちょいっとすぐ片付きますから!」
「「安心できないわ(ません)!」」
まあ、魔法だけで終わらせませんけどね!
可愛い妹たちを守るため、私は悪魔にでもなっちゃうのです!
あ、元々私は可愛い美少女小悪魔ですから今更なのです。
さてさて、それでは反撃開始なのです、やっふー!
お読みくださってありがとうございました。
色々とうっぷんの堪る展開が続きましたがいよいよ次回から反撃を開始なのです!
と、いう予定でおりますが、思いついたら全然違う展開になりかねないのが私です(




