6話(移り気)ギルバート視点
本当に上手くいった。
父上に勘当を言い渡された時は、さすがに目の前が真っ暗になった。
だけど、ディアナ様に相談した途端、状況はあっという間にひっくり返った。
ローゼンベルク侯爵家が動けば、父上だって逆らえない。
兄上だって、僕の方が格上になるからって、
『そんな身勝手な真似をしていると、いつか必ずしっぺ返しが来るぞ』
なんて言ってたが、あれは僻みにしか聞こえなかった。
やっぱり、選ぶ相手は間違っていなかったんだ。
どこまでも僕はついてる男だな。
リリアンには悪いとは思う。
だけど、僕だって将来を考えなければならない。
伯爵家より侯爵家。それも我がヴァロア侯爵家より格上の名門ローゼンベルク侯爵家だ。
そんな縁談を手放す理由なんて、あるはずがない。
思い返せば、リリアンへの執着なんて最初から大したものではなかったのかもしれない。
幼い頃、ライバルだったアーサーに取られるのが嫌で、焦って先回りして告白しただけだ。
あの時は本気で好きだと思い込んでいたが、一度手に入ってしまえばそれまで。
僕のせいでアーサーが傷心のまま隣国へ留学したらしいが、そんなことまで僕の責任じゃないし、今の僕にはどうでもいいことだ。
それに、リリアンだってボーフォール子爵家のアーサーよりヴァロア侯爵家の僕を選んだんだから、お互い様じゃないか。
あ、でも彼女は、アーサーが自分を好きだったことは知らなかったみたいだな。
いつだったか、言ってたな。
『アーサー様、どうして急に隣国に留学だなんて……寂しくなるわ。でもお家の方針なら仕方ありませんね』
そうか、彼女は結局、アーサーの気持ちには気づいてなかったんだ。相変わらず鈍いな。
僕が告白したことだって素直に受けとめ、喜んでいたからな。
ま、そんな彼女だったから、この僕も大した波風も立たずに別れられたのかもしれないな。
さあ、もう終わったことだし、今さらリリアンを振り返っていても仕方がない。
僕には明るい未来が待っているんだ。
これから先も、僕の隣にはずっとディアナ様がいてくれる。
彼女は少し気位が高くて気も強いけれど、そのくらいの方が頼もしい。
優柔不断な僕をぐいぐい引っ張ってくれるし、何よりローゼンベルク侯爵家という後ろ盾がある。
それに、あの華やかさ。あればかりは持って生まれたものだからな。彼女には華があって、その上実に頼りになる人だ。
リリアンは優しくて可愛かった。
だけど、それだけだ。きっと僕には向いていなかったんだろう。
そうだ。僕には少し気の強いくらいの女性の方が合っているのかもしれないな。
そう自分に言い聞かせるように、僕は満足げに笑った。




