↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《完結》婚約解消? もともと嘘から始まった婚約ですものね  作者: ヴァンドール


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/38

35話(結婚式)

 王宮で披露宴を開くことが決まると、結婚式の準備は一気に慌ただしくなった。 


 教会での挙式用と王宮での披露宴用、二着のドレスを用意しなければならないのだから無理もない。


 仕立て屋や侍女たちが行き交い、アッシュフォード伯爵家は久しぶりに明るい賑わいに包まれていた。

 そんな中、一つだけ意見が割れたことがあった。

 リリアンの髪飾りである。

 鏡の前で純白の花嫁衣装の寸法合わせをしていたリリアンは、迷うことなく水色の髪飾りを手に取った。

 それを見たアーサーが、困った顔で笑う。


「リリアン」


「はい」


「その髪飾り……大切に思ってくれるのは嬉しいのですが、大人になった今では少し子供っぽくありませんか」


 テーブルの上には、先日アーサーが改めて贈った新しい髪飾りも置かれている。

 銀細工に小さな水色の宝石があしらわれた、花嫁にふさわしい上品な品だった。


「こちらの方が結婚式の衣装には合うと思うのですが」


 しかし、リリアンは首を横へ振る。


「嫌です」


「そこまではっきり言うのですか」


「その日だけは絶対に、この髪飾りがいいんです」 


(彼女にも、こんなに頑固な一面があるのだな)


 その返事に、アーサーは苦笑するしかなかった。

 何を言っても引く様子がない。

 その様子を見ていた父が腕を組みながら笑う。


「まあ、まあ、アーサー殿。リリアンの好きにさせたらどうかな」


「義父上。殿はやめてください」 


 思わず苦笑しながら言うと、伯爵は目を丸くした。


「おっと」


「つい昔の癖で『アーサー君』と言いそうになるんだが、今の君は立派な立場の人間だからな」


「でしたら、こうして家族だけでいる時くらいはやめてください」


「はっはっは!」  


 伯爵の大きな笑い声が部屋へ響いた。


「そうだな! 家族の前でまで堅苦しくする必要はないか!」   


 夫人も優しく微笑む。


「その髪飾りはアーサーさんが初めて自分で選んでくれた贈り物なのでしょう?」


 リリアンは大切そうに髪飾りへ触れた。

 あの日。本当の贈り主を知らないまま、引き出しの奥へとしまい込んだ水色の輝き。

 今度こそ本当の贈り主であるアーサーとの結婚式で身につけたかった。

 

「わかりました。花嫁には勝てませんね」


 アーサーは肩をすくめる。


 その一言に部屋中が笑いへ包まれた。


────


 そして迎えた結婚式当日。

 青空の下、教会の鐘が高らかに鳴り響く。

 伯爵領の教会には領民たちも集まり、二人を祝福していた。


 純白の花嫁衣装を纏ったリリアンの髪には、淡い水色の髪飾りが優しく輝いている。

 それは、隣に立つアーサーの瞳と同じ色で、まるで彼の愛を身に纏っているかのようだった。


 二人の姿を目にした人々から、思わず感嘆の声が漏れた。


 その声を聞いたアーサーは、少し照れながら思った。


(やはり……君にはこれが一番似合う)


 祭壇の前で見つめ合う二人は、互いに永遠の愛を誓う。そして、指輪を交換する。

 司祭が静かに告げた。


「誓いの口づけを」


 アーサーはゆっくりとリリアンへ近づいた。

 二人の額が触れそうな距離まで来ると、リリアンは恥ずかしそうに目を閉じた。

 そんな彼女を愛おしむように、アーサーはそっと口づけた。


 長い間、すれ違っていた二人が今、ようやく結ばれた瞬間だった。


 教会中が温かな拍手に包まれた。


「おめでとう!」


「末永くお幸せに!」


 祝福の声が次々と響く。

 教会を出ると、色とりどりの花びらが降り注いだ。

 水色の髪飾りが光を受けてきらりと輝く。

 その煌めきは、幸せな未来を祝福するようだった。


 しかし、今日の祝いはまだ終わらない。

 教会の前には、王宮から迎えの馬車が待っていた。

 豪華な馬車の周囲には近衛騎士たちが並び、厳重な護衛が敷かれている。 


「さあ、こちらへ」


 迎えの騎士が恭しく頭を下げた。


「国王陛下がお待ちです」


 アーサーとリリアンは顔を見合わせる。

 教会で愛を誓い合った二人は、今度は王宮で開かれる盛大な披露宴へ向け、ゆっくりと馬車へ乗り込んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。