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第9話 最悪からの帰還

-人物紹介-


船橋 碧生ふなばしあおい

※2026年7月25日に死去。


夏希たちばな なつき

※2026年7月22日に死去。


「...」


「暖かいな...」


 まるで風呂に入っているかのように身体が暖かい。

 ポカポカとしていて気持ちがいい。


「ここがあの世か...」


 今思うと呆気ない最後だったな。

 まさかナイフで一突きで終わるとは...


 それにしても俺と夏希なつきを殺した犯人は一体誰だったのか。


 頻発していた通り魔事件の犯人であった可能性は高いが、俺を刺したアイツは夏希が書いたであろう『白い手紙』に執着していたようにも見えた。


 理由は、まだ完全に死んではいなかった俺にトドメをささず『白い手紙』の抹消を選んでいたからだ。


 ただ疑問点はいくつもある。


 ひとつ。

 『白い手紙』が狙いであれば俺が帰って来る前に抹消していれば良かったはず。

 なぜ俺がわざわざ殺されなければならない?

 理不尽だ。


 ふたつ。

 『白い手紙』の内容だ。

 あそこには一体何が書かれていたのか。


 犯人が抹消にこだわっていたから犯人の手がかりになるようなことが書いてあったのか?


 となれば夏希は自分が殺される前に犯人の目星がついていたことになるが...


 まぁ、どちらにせよ俺にはもう関係ないことだ。

 なぜなら俺はもう、死んでいるから。


 せいぜい犯人には人生を賭けた逃亡生活を楽しんでもらって。


 俺は天国でダラダラと生きていくとしますか。


...


 暑いな。


 さっきからやたら暑いな。


 これは天国というより地獄では?


『パチパチパチパチ』


 火が燃える音が聞こえる。


 ん、火が燃える音?


 やっぱここ地獄じゃね?


 意味がわからん。

 なぜ俺が地獄に行かなければならない?

 何かバチが当たることでもしたか?


 あ、ひとつ思い当たることと言えば、夏希のことをジロジロ見まくってたことぐらいか?

 これも地獄に落ちるなら十分な理由か。


 でも閻魔様聞いてください。

 俺と夏希は両思いなんです。

 本人が俺のこと、好きって。


 だからすみません、俺は天国に行って夏希に会ってきますので失礼します。


 そして俺は立ち上がり、その場から離れようとする。


......


 立ち上がり?あれ俺、立ってる?


 そして無意識で瞑っていた目も開けてみた。


 そこに広がっていた光景は...


「...は?」


 そこは火の海だった。


「あっつーー!!」


 俺は何も考えずに外へ出て火事であることを周囲に火事のことを伝える。


「火事だぁーー!!」


 すると下からドアを開ける音が聞こえた。


「なんだ、なんの騒ぎだ?」


「あ、真田さなださん?火事です!消防呼んで!!」



─数分後。



 消防車のサイレンが聞こえてくる。


 消防車が現場に到着し、消防の方たちが消火活動を開始する。



─数時間後。


 火は無事、消し止められた。

 幸い、火で焼失したのは自分の部屋だけだった。


 俺も煙を多く吸っていたものの大事には至らなかった。


 出火原因は恐らくストーブの近くに置いてあった洋服に引火したことが原因だと説明された。


 とんだ災難だった...


 皆様、本当にご迷惑をおかけしてすみませんでした...


 そして俺は無くなった我が家を遠目から見る。


 見る、が...


「ここは...」


 そう、ここは昔住んでいたアパートだった。


 俺がこのアパートから引っ越した理由。

 それは火事が原因だった。

 火事...


「まさか、今さっきの火事って...」


 今までの光景にすべて見覚えがあった。


 これは俺が昔体験したことだ。


「... どういうことだ...?」


 なんだ、何が起こってる?一体これは...


 ゲームで言うリザルトだろうか?


 あ、そういえば俺の腹は?


 服をめくりナイフで刺された箇所を確認するも俺の綺麗なシックスパックが見える。


 シックスパック...?

 俺は帰宅部だぞ?なんでこんなの...


 俺にこれがあった時期は中学の頃だぞ...?


 一瞬、鳥肌がたった。


 まさか...


「おーい、何腹チラしてるんだ。お前のなんて見たくねぇ」


 真田さんが扉から顔を出して俺を呼ぶ。


「今日は家に泊まってけ」


「い、良いんですか?」


「帰る家無いだろ?外で野宿したら通報されるぞ」


「あ、ありがとうございます」


 実は真田さんは大家さんで、この人には感謝してもしきれない恩が沢山ある。

 親が居なくなった俺を引き取ってアパートに住まわせてもらったり、月一でお金をくれたりと...

 生活面のサポートを沢山してくれていた。



「お邪魔します」


 こうやって真田さんの家にお邪魔するのは初めて...じゃない。


 火事が起こったあの日に俺はここに泊めてもらった。


 そうだ、カレンダー。カレンダーを見よう。


 カレンダーを見れば答え合わせはできるだろう。


 俺はカレンダーがある方へ向かった。


 そこに記されていたのは...



─2024年─11月─



「嘘...だろ...?」



 俺が死んだのが2026年の7月。



 そう、ここは2年前の世界だった。


______________________

-あとがき-


新章に突入!

これからもよろしくお願いします!

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