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第18話 一度見た夢

______________________



─「ということで、今日から新しい部員が入るよ。それじゃあ自己紹介をお願い」


「初めまして、西中から転校してきました。二年の船橋ふなばし 碧生あおいです。今日からよろしくお願いします」



「え、西中?」


「西中ってあの、西中?」



 周りがザワザワとし始める。どうやら『西中』というワードに反応しているようだ。


「ねぇ、船橋くん。西中から転校してきて、ここのバド部に入ったってことは、あっちでもバド部だったの?」


「いや、バスケ部だったよ。だからバドミントンは初心者」


「え、バスケ部?なんでバド部に...」


「えっと〜、それは...」


 すると先生はコホンっと言って話を戻す。


「まあ、色々とあるのさ。ねぇ、船橋くん」


「は、はい...」


 猪原いのはら先生に気を遣わせてしまっている。

 俺がこの部に入った理由を知らないはずだが、さっきので色々と察してくれているのだろう。


「ということで、『これからよろしく』という気持ちを込めて、全員拍手!」


『パチパチパチパチパチ』


 体育館に拍手が鳴り響く。そして、その中で誰よりも笑顔で俺に目を合わせてくれる人物が。

 それは「たちばな 夏希なつき」、彼女だった。


 普通なら縁を切られるレベルのことをしてしまったのにも関わらず、夏希は許してくれた。

 だから俺は夏希が与えてくれた挽回のチャンスを無駄にはしない。

 まあ、これは俺が勝手にそう思っているだけなのだが。


「じゃあ練習を始めようか。あ、それと橘さん、船橋くんのことをお願い」


「え」


 疑問に思った俺に、先生が小声で耳打ちしてくる。


「君としては、それが嬉しいだろう?」


 あれ?もしかして夏希を好きな事、先生にバレた?

 まあ、腕掴んでまで連れて行ったところを見られているから、そう思われてもしょうがないか。


「わかりました!碧生くんは私におまかせください」


「すまないね」


 こうして、夏希との猛練習が始まる。



─「ボーー」


 先生の協力もあり、夏希と距離を近づけることができている気がする。


「後は、上手くなるだけか」


 夏希にああ言ってしまった以上、必ず越えなければ。


「そういえば、俺が夏希が好きってこと、本人にバレしてしまったようなものだけど、それに関して夏希は何も言ってないな」


 もしかして脈アリなのか?いや、流石に転校して一週間も経ってないのにそんなことは無いとは思うが...


「コラ!何ぼーっとしてるの!しっかりシャトル返して!!」


「えっ」


「えっ、じゃないの!」


 ...?

 なんだ、この既視感は...?


「ほら、いくよ!」


 夏希からシャトルが打たれる。

 俺は困惑しながらも打ち返す。


「...グッ!」


「おっ、今の良い感じ!それくらい強いの毎回打てるように!まあ緩急つけるのも大事だけど今はとりあえずそんなの気にしないで全力で打ち返して!!」


「は、はい!」


 このシチュエーションって...



 そう、これは俺が『夢』で見た出来事と瓜二つだった。



─数十分後。


「3、2、1!はい、一旦休憩!」


「ふぅー」


「碧生くん、良い動きだったよ!まるでこの練習をやったことがあるみたいに」


 それで言うと、やったことはある。

 『夢』の中で...


 まさか、これは『予知夢』というやつか?

 そんな馬鹿な。どっかのSF作品じゃあるまいし...


 いや、それで言うと、既にありえないことは起きている。


 『タイムリープ』


 もう、何が起こっても不思議じゃない。

 これも現実として捉えるしか...


「ごめん、流石に疲れたよね。スポドリ持ってきてあげるからそこで待ってて」


 ...?!

 まずい、確かこの後、出入口付近で夏希は走ってきた男子生徒と激突して...


「...チッ、夏希!左!!」


「え...?」


 走ってきた男子生徒と夏希が激突する。


 そして俺は夏希の方へ飛び込み、倒れた時の衝撃が夏希にいかないように、俺が下敷きとなるような形で共に倒れ込む。


 守るようにして倒れ込んだため、自然的に、後ろから抱きしめるようにな形になった。


 香ってくる夏希のいい匂い、身体の上に乗っかる軽い重みが俺を色んな意味で襲う。


 そして、周りもザワつき始める。


「ご、ごめん!今すぐ離れる」


 俺たちはすぐに離れる。


「い、いや。ありがとう助けてくれて」


 互いの頬は真っ赤かだった。


 この何とも言えない空間で、激突してきた男子生徒が口を開く。


「す、すみませんでした。前を向いてなくて...」


「...次からは気をつけてください。自分の身勝手で相手を傷つけてしまうこともあるということを覚えて、今日は帰ってください」


「ほ、本当にすみませんでした!!」


 そう言って、男子生徒は立ち去って行く。


「夏希さん、大丈夫?怪我は無い?」


「う、うん。碧生くんが下..敷きになってくれたおかげでなんとか。碧生くんこそ大丈夫?」


「うん、平気。かすり傷程度で済んだから」


 すると、奥から猪原先生が駆け寄ってくる。


「おーい、さっきの騒ぎはなんだい?船橋くん、そのかすり傷は?大丈夫かい?」


「はい!大丈夫です。猪原先生、ご心配をお掛けしてすみません」


「ならOK。気をつけてな」


 大丈夫だと知って、猪原先生は自分の持ち場に戻る。


 それにしてもお互い、大事に至らなくて本当に良かった。



─こうして、予知夢のおかげで夏希を救うことができた。

 もし、あの衝撃でぶつかり、床に叩きつけられていたら夏希もタダでは済まなかっただろう。

 今はただ、予知夢に感謝しなくては。


 ただ今思うと、これは俺がバド部に入ったから起きたことだ。

 本来なら起きることは無かった。


 俺は夏希を救う為に未来を変えようとして、前世とは違う道を歩んでいるが、それがあだとなりこれから先、夏希に更なる危機が訪れるかもしれない。


 今、俺のやっていることは本当に正しいのか?

 これで良いのか?


 この『変わりゆく未来』の先には一体何が待ち受けているのだろうか。


 それはもう、俺の知る、未来ではないのかもしれない。


______________________

-あとがき-


 「脳が、脳が脳が脳が脳が、脳が震える〜〜!!」

 ↑ ↑ ↑

 ラブコメを見ている時の自分

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